第五話・行方不明の道標①
パソコン故障+新年度=更新停滞
アリステア王国会議室。今、世界の中心はここだった。
新王を決めるための会議も行われたこの部屋の円卓には、世界中の権力が集約していた。まず、入口から見て左手前にはローゼン帝国皇帝、ペオーニエ・V・ローゼンブルート。次に右手前には八神教の教皇にして八神皇国の指導者でもある八神御白。右奥には共和国の大使であるテオドール・マッシがこの中で唯一スーツというシンプルな服装に身を包んで座し、左奥には、アリステア王国国王ライナス・L・アリステアがゆったりとした様子で椅子に腰をかけていた。
そして彼らの背後には、この会議でそれぞれをサポートする者がついていた。ライナスの背後には王国の外務大臣であるクロノスが、そして他の代表にも外交を主に得意とする者がついていた。
ライナスはその歴々の顔を見渡した後、立ちあがって宣言する。
「皆さま、本日はお忙しい中ここアリステア王国にお集まりいただき誠にありがとうございます。この会議の主催としてライナス・L・アリステアが皆さまにお礼申し上げます」
彼は会議の開始を宣言する一方で、内心で冷や汗をかいていた。
今、ライナスの目の前にいるのは世界中の権力を握っており、そしてそれに足る者たちである。人の本質を見抜く目を持つ彼には、他の人間が見る以上に彼らが恐ろしく見えた。
ペオーニエは他者を押しつぶしてしまいそうな覇気を隠しもしない。逆に御白からは全てを包み込んでしまいそうな、ともすれば身をゆだねてしまいそうな穏やかさが漂ってくる。テオドールに至っては笑顔の仮面で隠してはいるが、底知れぬ不気味さを感じる。
そんな怪物たちとこれからやり合わなければならないというプレッシャーが、ライナスの根深い劣等感を刺激していた。
「さて、皆さまにおかれましてはわずかな時間でさえ貴重なものかと存じます。お互いに自己紹介をする必要もないと思いますので、早速会議の方に入らせていただきたいと思います。クロノス」
「はいぃ」
ライナスの呼びかけに応じ、クロノスが腰を上げる。代わりにライナスは席に着いた。
「では今日行われる会議の概要を説明しますぅ。この会議ではぁ、アリステア王国前国王であるリチャード・O・アリステアによって締結された不戦協定、すなわちエンサント不戦協定について話し合いたいと思いますぅ。お手元の資料をご覧くださいぃ」
それぞれの国の代表が、元々目の前に置かれていた紙を手に取る。そこには数十年前に締結されたエンサント不戦協定の内容が一字一句たがわず表記されていた。
「それはエンサント不戦協定の内容を書き記したものですぅ。不要とは存じますが一応用意させていただきましたぁ。これを見ながらぁ、この協定を存続させるかぁ、あるいはとりやめるかぁ。あるいは形を変えて締結するかぁ、その場合どのように形を変えるかを決めていただきたいと思いますぅ」