第四話・世界の鍵を握る者、集う③
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ペオーニエを案内し終えたクロノスが次に出迎えたのは、四方を聖騎士に守られた真っ白な馬車であった。
白馬が引くそれは先程の馬車ほどの煌びやかさはなかったものの、飾りに使われた細やかな金細工が上品な美しさを醸し出していた。
そしてその側面には、八つの剣が交わった八神教のシンボルが彫り込まれていた。
白銀に輝く重鎧を纏った聖騎士達が馬から降り、馬車の入口を囲う様に立つ。隙間なく囲んだ後に、そのうちの一人が扉を開けた。
降りてきたのは教皇・八神 御白その人であった。
「お久しぶりですぅ。教皇聖下ぁ」
「お久しぶりです、クロノス殿」
向い合った二人は互いに笑顔で礼をする。御白の笑顔はクロノスのそれよりかは、むしろライナスに近いものであった。
「お元気そうでなによりですぅ」
「あなたも……と言いたいところですが」
御白の秀麗な顔に憂愁の影が差した。
「お父上のこと、お悔やみ申し上げます」
「……ありがとうございますぅ。聖下にそうおっしゃっていただけて、前王殿下も彼岸で喜んでいると思いますぅ」
塗り固められた笑顔のままで礼を述べる。対して御白は見透かしたように悲しげな微笑みを浮かべた。
「会議まではまだ日がありましたね?」
「明後日になりますねぇ」
「ならば明日、殿下のお参りに行ってもよろしいでしょうか?」
「それは……」
意外と言えば意外な申し出にクロノスは笑顔を驚きに崩して見せた。
八神教では通常葬式などの儀礼は大司教以下の位の者たちで行われる。各国の偉人であれば枢機卿が務める場合もあるが、教皇が直々に個人のための式典を執り行ったという公式の記録は残っていない。つまり、それだけ希有なことなのだ。
彼のその発言だけでも前王のカリスマ性がわかる。クロノスは改めて父の凄さを思い知った。
「あの方には教皇となる以前に幾度か世話になりましたからね。教皇となってからもその手腕と平和を愛する心に幾度も助けられたものです。ですので、墓前で一度挨拶をさせていただきたいのです」
「願ってもないことですぅ。では明日、案内いたしますねぇ」
「お願いします」
御白は今一度深々と礼をした。
「では、長旅でお疲れでしょう。こちらでお休みください」
クロノスは表情をいつも通りの笑顔に戻すと、城中に招いた。




