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アリステア王国存亡記  作者: ぞなむす
第一章・新王選定
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第五話・汚れた手の新たな王⑤

(お兄様、あんなに痛々しい表情で……)


 オルテンシアは自室で一人アルベルトの顔を思い返していた。


 兄は今にも泣き出しそうな顔をしていた。


 普段表情を動かすことが少ない兄だが、自分は暇があればその顔を見ていた。だからこそ気付くことが出来、それは恐らく自分にしかわかっていないことだろう。もしかしたら、兄自身気付いていないのかもしれない。


 それ以外にも、キースの処刑を語った後、テーブルの上に置いた手を白くなるほど強く握りしめていた。そのことに気付いた人は、どれくらいいたのだろう。


 アルベルトも本心ではキースの処刑などしたくないはずだ。幼少時より仲良く育ってきた兄弟を手にかける等、考えたくもないだろう。


 兄は感情を理解するのが苦手なだけであって、付け加えるなら感情表現も不得意なのだが、とにかく感情を失っているわけでも初めから持っていない訳でもない。


 天才と呼ばれているあの人も、一人の人間なのだ。


 そんな彼がキースを処刑する決断を下したのは、どれだけの苦痛と悲しみを伴ったのだろうか。キースにあまり良い感情を抱いているとは言えない自分でさえ動揺しているのだ、それらはきっと自分では計り知れないものだろう。


 それでもあの場で冷徹な仮面をつけ続けることができたのは、ライナスという優しい王の影となり続ける覚悟があるからなのかもしれない。優しい兄のために手を汚し、憎まれ役になる覚悟が……


(お兄様……)


 泣きだしそうな表情で、手を白くなるまで握り締めたオルテンシアは兄の力になろうと寄り強く決意するのであった。


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