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第八章『夜行モンスター』

第八章『夜行モンスター』

said:かの逆説弄する少年

或いは、生命欲に呪われし者


 原宿と云う街に住むのは不便だ。射光はつくづくそう感じた。例えば課題のプリントを学校に忘れた時、その課題が明日の朝提出だった時、それに気づいたのが家に帰ってからという時。学校から住まいが近い射光と憂の場合わざわざ学校に取りに行く事に関してはさほど面倒では無い。しかし問題は、原宿は日が落ちたら街に出歩けないという点についてだ。六月である今は日が落ちるのが遅い、その点に関しては幸いだった。射光が課題のプリントを忘れた事に気づいたのは夕方五時半。五時には完全下校になっている為もう学校には誰も居ないだろう。しかし五時というのは日が落ちるか落ちないかぎりぎりの時間帯だ。取りに行くには今しかない。射光は部屋から飛び出し研究所の出口へと向かう。

「射光、どうしたの。」

 憂が呼び止めた。

「学校に課題のプリント忘れちゃってさ、今から取りに行こうと思って。」

「あっそう。俺も学校だ。」

「えっ、じゃあ一緒に取りに行こうぜ。」

「いや。俺やる気無いからいいや。」

 射光は咄嗟に憂の腕を掴む。そして引きずりつつ研究所の出口へ向かう。

「なにすんだよっ」

「憂、せめて課題はやろう、課題はやらないと本当に単位やばいから。」

 珍しく射光が憂に強く出ているなぁ。と悠夢は二階の階段から二人の様子を眺めていた。会話の内容聞いていれば今から二人がこんな夕方時に何の為に研究所を出るのか容易に理解出来る。あのゾンビの奇襲から無事に帰ってこれた二人が勝手に研究所を出る事に関してはそんなに心配に思っていない。だから特に気にも止めない。

「宿題を忘れたから放課後の学校に行く二人の男子生徒・・・なーんか、まるでホラー漫画の展開みたい。」

 悠夢は自分の発言に深い意味は込めなかった。ただ自分の独り言に酔いしれ一人で人目も気にせず笑っていた。



 西の空は鮮やかな赤に染まっていた。真正面の東の空は一足早く夜を迎えており、普段は美しいと思えるこの夕暮れ時も原宿から見るとどうしてこうも恐ろしいと思ってしまうのか。考え事をしている暇も無い。兎に角今は何よりも先に用事も済ませ研究所へ戻りたい。射光は早く歩くように憂を促そうとした。振り向くと憂は居なかった。ふと前を向くと、午後の授業に遅刻しそうな時よりも速いスピードで歩く憂が居た。

「は、は、はやくしろよ・・・っ」

 がくがくと声を震わせる憂を見て射光は全てを察した。憂は昼休みに愛音から聞いた話に人一倍恐怖を抱いていた。だから無理矢理にでもその話題を終わらせようと時間の事を話題に出した。そして課題のプリントを忘れた事にもきっと射光よりも先に気づいていた。(もしかしたら故意に学校に置いていたのかも知れないけれど。)だけど学校に取りに行かないのはやる気が無いからよりも上の理由に、放課後の学校に行くのが嫌だから。あの倉庫の前を通らなければ一般入り口には辿り着けない。何があったってあんな幽霊の宝庫なんかに行くもんかと心に決めていた憂を無理矢理連れ出すような事をして悪いことをしてしまったかも知れないと射光は心の中で懺悔をした。そして、顔に似合わず恐がりな彼の為に早く家に帰らなければ。射光は歩みを速めた。

 いよいよ例の倉庫の前まで来た。思わず呼吸を止める。そして絶対に見るもんかと目をつぶりながら二人は倉庫の前を歩く。やっぱりどう見ても此処だけ雰囲気が異様だ。誰も居ない学校なのに、真新しい校舎の此処では殆ど恐怖は感じさせない。しかしこの倉庫の前だけは、ホラー絵画の舞台に成り得る。あと一歩で通り過ぎる事が出来ると思ったその瞬間、射光は耳元に冷たい吐息を感じた。

『置いてかないで』

 射光は思わず足を止めた。あんなにも倉庫の前から立ち去りたいと思っていたのに足を止めざる得なかった。そんな力のある冷たい吐息、冷たい声、悲しい囁きだった。そしてそれは、何処でも聞いた事の無い声だった。

『置いてかないでよ、わたしも連れてって。』

 次に腰に強い圧迫感を感じた。腕を見ると不自然に白く長い腕が射光の腰に絡みついていた。射光の目の前の憂は顔面蒼白。一番の被害にあっている射光は余りにも現実味の無いこの状況に不思議と大して恐怖は感じなかった。ただ、どうしても体を動かす事が出来なかった。抵抗も出来なかった。このままでは絡みついてくる幽霊にされるがままにされてしまいそう。

 途端、射光のすぐ背後で激しく固体と固体がぶつかりあう音がした。憂が悠夢の鼻を殴った時より数倍も激しい打音。固体が固体を壊す音。気づいた頃には、射光の腰に絡まっていた腕は消えていた。振り返ると、金髪の少年が腕の長い白い肌の少女を蹴倒していた。その異様過ぎる光景に射光と憂は思わず一歩たじろぐ。

「命ある人間を魔道に引きずりこもうとする何て、まさに俗悪ですね。」

 腕の長い少女は苦しそうにその場で蹲る。少年はそんな少女に嘲りの視線を乗せて見下していた。少年の背後から、また一際存在感の強い男が現れた。その男は現代社会にまるで馴染んでいない格好故、存在感が強かった。歴史の教科書や時代劇でしか見たこと無いような和装、扇子、そして長い群青色の髪。

「仕方あるまい、奴らが俗悪だから儂が俗悪と名付けたのだから。」

 妖艶そのものな男の声が響くと、少女は地面に這い蹲りながらも男の顔を見上げた。憎悪に満ちた視線。その形相は既に人間の物とは思えない歪みっぷりで、現状は恐怖に満ちた。しかし男は憎悪に歪んだ醜悪な顔ですら意にも介さず、それどころか憎悪を抱く事に対して呆れのような、嘲りのような表情を浮かべる。

「ほう、儂が妖魔皇と知った上での無礼と見える。」

 これは明らかなる挑発。少女はまんまとその挑発に乗り蛇のように長い腕を男の首へと伸ばす。分厚い着物の襟に覆われた首が雪のように白い少女の手に覆われる。首に手を伸ばすなら目的は一つ、その首を圧迫して息の根を止める為。しかし何故だか男は尚も余裕しか無いという表情。その顔は妖艶な笑みを讃えたまま微動だにしない。

「醜い姿のままこの世に留まった事、恥を知れ。」

 男は金色の扇子を開く。扇子は夕日の粒子を照り返し眩しく輝く。光の集合体のような扇子で真横に空を切る。途端、嵐の直前のように辺りの空気が重くなった。嵐の直前というより、その異常な重い空気の空間は最早この世の場所では無いように感じた。射光と憂は辺りを見渡す、其処は確かに今日訪れたばかりの学校の風景だった。しかし背景だけがモノクロ写真のように時の流れが止まっている。此処は学校であり、この世では無い、だとしたら此処は何処なのか。恐怖でも不安でも驚愕でも無い無色な感情が二人を包む。

「罪状、留魂現世。罪業・意業。息もあらくせず、三業を静めて地獄にて此の経を読誦候べし。」

 男が朗朗と虚空に向けて語る。真空間で話しているみたいにその声は不思議な程鼓膜の奥まで轟いた。耳に鼓膜にというより、頭の奥に脊髄にじんじんと響くようだった。途端、地面が割れて地中から黒色の鎖が飛び出して来た。尋常でないその光景に驚愕し思わず射光はその場で尻餅をついた。鎖は少女の体を縛りつける。鎖は絶えず地上の地下の隙間から放出される。鎖だけで少女の体を覆い隠すまでに。やがて鎖は少女を縛りつけたまま地下の世界へ帰る。少女は言葉にならない断末魔をあげ地中へと潜っていった。それはまるで地獄へ強制収容される罪人のよう。男は聞き飽きた断末魔を無機質な笑顔で聞き届けるのであった。

 いつの間にか次元は元の次元に戻っていた。学校も周りの街も空も何事も無かったかのように時を刻む。射光と憂は不思議な事に、あれ程恐怖を感じていた倉庫にもう恐怖を覚えなくなった。其処にはただの、古びて今にも壊れそうな倉庫があった。恐らく同じ光景を見たのであろう友人同士は顔を見合わせ、首を傾げて、今起きた事が夢が現か確認し合う。射光の目の前に一つの手が現れる。自分より一回り小さい子供の手。顔をあげると其処には先程少女を蹴倒した金髪の少年が居た。

「大丈夫ですか?」

 少年は幼い声で囁く。その声には微量の優しさが含まれており、射光は頷いた。小さな手を壊さぬようにとそっと握り立ち上がる。

「貴方達、今日此処に来たばかりの生徒なんですよね。」

「ああ、まぁ・・・」

「僕は五十崎依月いかざきいづき。貴方達と同じクラスの此処の生徒です。」

「えっ・・・」

 射光と憂は同時に同じ箇所に驚いた。同じクラスという事では無く、このどう見ても諸学校でしか見かけないようなこの幼子がこの高校に通っている生徒だと云う事。射光はふと「日本にも飛び級ってあるのか」と直ぐに理解出来たが、きっと後に大きな間違いだと気づくだろう。夜を訪れが近いと告げる風が依月の金色の細い髪を、体のサイズにぴったりあった幼児用のチャイナ服の裾を揺らす。

「そして此方が妖魔皇である、雪柳魔ゆきやなぎこごめ様です。」

 魔と呼ばれた人物の方へ視線を向ける。改めてその圧倒的な存在感は目を見張る物がある。射光は少し時代遅れで古風な山村に長い間住んでいた。しかしそれにしたってこれ程までに絢爛で見事な着物も、そんな着物が似合う人物も見た事が無い。本当にこの人はこの時代の人間なのだろうかと疑ってしまう。

「いかにも、儂が妖魔皇だ。よく覚えておくが良いぞ、下民。」

 きっと平安時代や江戸時代の貴族も似たような事を自分達のような人間に云ったのだろうな。魔は自分が妖魔皇である事をこれ以上無い程誇りに思い、その事について強調するように云う。憂はふと、竹下通りに雪柳神社という神社があった事を思い出した。こんな先進都市の中心部に何故神社があるのか幾度も疑問に思った。しかし神社に溜まり込む神聖な雰囲気に追い返されわざわざ足を踏み入れた事は無かった。自分みたいな異形が足を踏み入れて良い場所とも思えなかった。こうして見ると、成る程確かにあの鬱陶しい程の神聖さに洗われた神社の神主にふさわしい人物に見える。雪柳魔。

「あの・・・妖魔ってさっきの化け物みたいな奴らの事ですか?妖怪みたいなものですかね・・・」

 不可解な事に、射光は妖魔という生き物の存在を認めた上での質問を投げかけた。憂からしてみれば先程の出来事は全て夢として片付けても良いと思っていた。妖魔やら幽霊やら妖怪なんていう存在も認めたくは無い。それなのに射光は先程の出来事も、妖魔という存在も全て認めていた。二人は生まれた時から持っている待遇が違うみたいだ。

「ふむ、外れでは無いな。しかし正解でも無い。妖魔というのはこの世に存在する化け物の総称じゃ。妖魔という一つの言葉には『妖怪』と『幽霊』どちらの存在も含む。」

「じゃあ・・・妖魔皇の貴方も、妖魔って事なんですか?」

「儂をあの様な下餞な生き物と一緒にするで無い。儂は『妖魔皇』という魂を持って生まれたこの世界で唯一無二の存在。貴様らとは持っている物がまるで違う。」

「なーにが、『持っている物が違う』ですかっ」

 刹那、魔の影が視界から消えた。ふわりと依月が雲のように軽く宙に浮いたかと思うと凄まじい速さと強さで魔の頭上でかかと落としを決めた。ずどんっと大きな岩が地面に落とされたような重い打音が辺りに響くと魔は既に顔面から地面に倒れ伏した。今の技は本当に依月がやったのか。射光よりも憂よりも、そして魔よりも一回りも二回りも小さな体の依月が。依月は魔の頭にかかと落としを決め、その上魔の後頭部に足を置くと云う鬼畜行為。先程はいかにも妖魔皇の使いみたいな素振りを見せていたのに、この愚行は何なのだろう。

「あんた、自分が妖魔皇だからって何でも許されるって思ってるでしょ。それでいて一仕事片付けただけで僕が満足したと思ったら大間違いですよ。此処まで来るのに僕がどんだけ苦労したと思ったんですか。今妖魔界が落ち着いてるからって仕事サボッてばっかで、云っておきますけどあんたが片付けるべき仕事は他にも吐いて捨てる程あるんですからね。聞いてますか?」

 聞こえているけれど返事が出来ないだけだと思う。魔の顔面は地面に圧迫されていて恐らく呼吸も出来ない状態だ。ていうか、あんた激しい衝撃を頭に喰らって生きているのだろうか。かなり心配になってきた射光が魔の顔ののぞき込む。

「大丈夫ですよ。死にはしません。妖魔皇は不死ですから。あと、妖魔皇は怪我も病気もしません。妖魔皇が持っているのは妖魔皇と云う魂だけ。今見えている彼の顔も体も僕達に見せる為の幻想でしかありません。触れる事も出来るし、彼自身に感覚もあるけれど、全ては僕達人間の為の演出です。だからこうやって頭を踏みつけていたって何とも無いんですよ。」

「だから、感覚があると云っておるだろう・・・っ依月、そろそろ足をどけろ。儂をなんだと思っている・・・」

「仕事をサボッてばっかの人なんて妖魔皇と認めません。」

 魂だけの人。本当は体なんて無いのに人間を欺く為だけに体を持っているように見せる。それなのにこんな風に普通の人間と変わらない生活をしている。何の為に?わざわざ妖魔界の皇が人間のふりをして何のために人間界で時を過ごしているのだろう。本当は感情も無いだろう、心も、元々は感覚も無かっただろう。それすらも全て演技なのだろうか。不思議な人だ。魔の鬼灯の赤の瞳は本当に今目の前に広がっている世界が映っているのだろうか。

「憂、」

「何?」

「そろそろ教室行かないと、夜になっちゃうよ。」

「ああ・・・そっか・・・」

 憂は一瞬誰に呼ばれたのか解らなかった。射光のいつもの優しく柔らかい声は何処に行ったのか、それはそれは無機質で聞き慣れない音色の声。無理矢理憂の腕を引っぱる手にも彼持ちようの優しさがまるで無い。憂は本当にこの射光について行って良いのか解らない。それでも何故だか拒絶する事が出来ない。だからせめて質問を投げかけてみた。

「射光・・・どうしたの・・・?

「何でも無い。」

「でも、何か様子が」

「何でも無いから。」

 それは一方的で強い拒絶。誰に対してなのだろうか、憂に対して、先程の出来事に対して、それとも、



「依月、」

「何ですか。」

 漸く依月が魔の頭から足をどけて、魔は起き上がる事が出来た。華美な着物がすっかり土で汚れみすぼらしい事に。明らかに不機嫌な顔をしながらも魔は問いかけた。

「先程のあの二人の名前は?」

「あの二人ですか?・・・はっきりは覚えて無いです。今日知ったばかりなので。えーと確か・・・」

 依月は記憶を巡らせる。今朝の一時限目のホームルームまで。あの二人の顔を思い浮かべ、そして二人の自己紹介のシーンに辿り着いた。

「・・・あの紫色の髪をした方は、村崎憂。黒髪の方はてんしょう・・・」

「・・・てんしょう?」

「はい、天気の『天』に、『正しい』と書いての天正だそうです。そう、天正射光です。」

 途端、魔の赤の瞳が意味深に輝く。自身の肌の白を照り返して。群青の前髪は目元に小さな影を作る。

「やはり天正の人間か・・・しかし、何故今この街に・・・」

「皇・・・あの天正射光が、どうかしたんですか?」

 魔は依月の問いかけに答える事も無く、依月の顔を見る事も無い。ただ一人奈落の黄昏で何か考え込む。妖魔皇の全てを知る唯一の人間でさえ知り得ない妖魔界の闇に一人浸される。これから起こるであろう世紀末でどれ程の色彩が生き残れると云うのか。



 無事に二人は最上階の教室にある課題プリントを持ち帰る事が出来た帰り道の廊下。いつもは射光が絶えず憂に話しかけるのに、何故だか今の射光はずっと黙り込んだまま。普段自分に気を遣い過ぎている射光に鬱陶しさも時折覚える憂だが、此処まで様子がおかしいと流石に心配だ。意を決して憂はもう一度自分から射光に話しかける事を試みる。

「射光、」

 返答は無い。不安で鼓動が高鳴る。声を震わせ無いようにもう一度声をかける。

「射光、どうしたんだよ?」

「・・・何でも無い。」

「何でも無くないだろ?何かあったのか?」

 もしかしてさっきの事が今になって大きなショックになっているのか。そっと射光の手を握る。しかし恐怖で震えているという事は無い。顔を見ても、恐怖という感情が無いみたいだ。ただその顔は体は鼓動は無機質だった。射光としての人格が射光の体を残したまま何処かに飛んでいったしまったみたいだ。

「憂・・・」

「な、なに?」

 漸く射光から話しかけてくれた。嬉しい反面やはり無機質なその声に驚きを隠せない。

「さっきの、雪柳魔って人・・・どう思う?」

「へ、どうって・・・別にどうも?ああ、見た目が兎に角派手だなと思った。原宿は確かに奇抜な服着てる奴多いけどあれはまた特殊だな。和ゴス・・・じゃ無いな、普通の和風か。でもだったら俺はルージュ様の前回のPVの和ゴスの方が好きだな。」

 憂は自分でも吃驚する程長い時間喋ったと思った。でも段々射光のテンションに慣れて来た気がするので射光相手ならこれだけ喋っても不思議では無い気がする。というか、自分はただ服の事やルージュの事になればやたら喋りたくなるだけかも知れない。

「そっか・・・憂にはそうとしか見えなかったんだ・・・」

「・・・どういう事?」

 今まで見た事も無い射光の笑顔に胸が高鳴る。無機質では無くなった。しかし何処か恐怖で震えながら、おびただしい憎悪に飲み込まれそうな、深い闇に染められる事も拒んでいるようで。

「俺にもよく解んねぇよ・・・ただ、魔って云う人を見た瞬間、急に恐くなってさ・・・」

「魔って奴が?」

「・・・いや、違うな・・・あの妖魔皇、俺の事を裁きに来たんじゃ無いかと一瞬思って・・・あんな小さな妖魔じゃ無くて、俺の事を殺す為に来たのかも知れないって思ったんだ、実際違かったけれど。でも・・・あの妖魔を縛った鎖が一瞬、俺に向かって俺の事も縛って、地獄の引きずりこまれる気がしてさ・・・おかしいよな、あり得ないよな・・・こんなの、ただの妄想だと思う・・・ごめん、頭おかしいって思うよな。」

 無論、憂には射光が何を言っているのか理解出来なかった。一体何に怯えているのか、何を恐れているのかも。あの光景が結構衝撃的だったのは解る。しかしもう既に何人もゾンビを見てきて殺してきた憂にとってあんなのは食事中にだって見れる光景だ。だけど射光にとっては違うんだろう。こんな、薄汚い街に来る前は何の穢れも無い自然で出来た山村で過ごしていたんだから。だからあの衝撃的なシーンを目前で映して神経を毒される程の恐怖に怯えてしまっても仕方ない。憂は思い出す。昨日の事。昨日原宿の行き慣れたカフェで射光から投げかけられた言葉、数々の無償の優しさ。生きる事にこの上無い恐怖を抱いていた憂に対する上級の癒し。ならば、今度は自分の番だ。この為に自分はわざわざ此処まで足を運んで来たのだろう。そう思える程に。

「射光、考え過ぎだろ。あれは、あの二人がお前を助ける為にやった事に決まってんだろ。だったらあの二人の優しさを踏みにじるような事は云うな。お前は助けられた。お前を殺す理由なんてある訳無いだろ。」

 こんな綺麗な人間を、誰が殺めようとする?憂はそっと射光の頭に手を乗せる。太陽に当たっていたみたいに温かいままの髪の毛。撫でると温かさが増す。

 しかし、憂の脳裏に更に新しい記憶が見つかる。比較的曖昧で擦れた記憶だけれど。憂がゾンビの群団を倒しきったあとにやって来た射光。何故わざわざ部外者である射光が憂の元まで助けに来てくれたのか些か疑問だった。しかしその時の射光の表情もまた異様だった。何も畏れなど無い剣士のようで、醜悪な人間を見下す神のような、そんな全く違う人格のような射光を。ウイルスに苦しみ悶えるゾンビを何の迷いも躊躇も無く刀で斬った射光を。これは、どの射光?この些細な恐怖に震える彼はどの射光?

 なぁ射光、お前は一体何人居るの?



 翌朝。ナツメグ高校は昨日の妖魔事件の事など知りもしないで普段通り賑やかな生徒達を迎えていた。おはようと呼び掛け合う爽やかな若者達の声。色に例えるなら水色で、この晴れ晴れとした朝の空と同じ色。

「おっはよー」

 その中で一際明るく大きな女子生徒の声。誰かなんて、振り向かなくても射光と憂には分かり切っていた。

「おはよう、愛音。」

「おはよう、いるみん。憂君もおはよう。」

「おはよう。」

 射光もまた、昨日の事など何も覚えておらず、全て夢の出来事だと割り切ってしまったかのように普段通りの晴れやかな笑顔を見せるのであった。憂はその相変わらずの汚れ無き笑顔が段々愛しく思える反面、不自然な程よく出来た骨董品を見ているようで恐ろしく不気味に感じる。少しでも下手に動かしてしまえばあっという間に不均等に壊してしまいそうで、そしてその破片が自分の手を再び傷つけてしまいそうで。特に人の扱いも物の扱いも大雑把な憂は。

「憂、どうした?」

「いや、何でも無い。」

「本当に憂は低血圧なんだなー、さっきからずっとぼーっとしてるぜ?」

「・・・うん。眠過ぎて朝飯食べるの忘れた。」

「えっ、憂君ご飯食べて無いん?」

 それを聞きつけた愛音は透かさず鞄に手突っ込み、何を出すかと思いきや袋詰めのチョコレートクッキーを憂に差し出す。

「何も食べないまんま授業はかったるいで。今からでも良いから何か腹につめときー。」

「愛音、何か憂のお母さんみたいだな。」

「何云うてんの。うちはこんなイケメンを産めるDNA持っておらへんよ。」

 射光と愛音が楽しそうに会話する輪に、飛び込んで来たのはゆんだった。

「おはよう愛音、いるみん、憂君。」

「お、ゆんやん、おはー。」

「おはよう間宮さん。」

「ちょいタンマ。自分またそんな幼稚な呼び方しおってー。」

「え、何?何かまずい事云った俺。」

 別に良いから、恥ずかしいからと目で訴えるゆんを余所に愛音は更に射光に詰め寄る。

「うちの事『愛音』って呼んでんやから、其処は普通に考えて『ゆん』やろ?」

「う、えっー・・・でもそれは愛音が愛音って呼べって云うから・・・間宮さんは別に名前で呼んで欲しい何て云って無いし。」

「ええんやって、バランス的に考えておかしいやろ。何でうちの事は名前呼びなのにゆんの事は名字呼びなんやって周りが不思議がるやろ。ましてやうちらまだ出逢って二日目やん。うちとゆんの親密度の差はそんなに無いんに呼び方に差があるのは明らかに不自然や。ギャルゲや乙ゲー見てみ?本来転校したての頃はみんな名字呼びや。まぁうちみたいにちょっと積極的なタイプは最初っから名前呼びを強要させるかもしれへんけどな。」

「だったら別に呼び方に差あっても良いじゃんか・・・」

 ってかギャルゲーとか乙ゲーって何の事?と射光の頭にはクエスチョンマークが浮かぶ。憂はいつの間にか一人で愛音から貰ったチョコクッキーをもさもさと食べていた。

「まぁ確かにそうやな。呼び方に個人差があるもの良い・・・ってちゃーうっ!兎に角ゆんの事も名前呼びせなあかん。何の為にこんな『ゆん』なんて云う呼びやすい名前になっていると思ってるん。」

「別にその為じゃ無いだろ。間宮さんは・・・良いの?俺なんかが気安く名前呼んじゃって。」

「え、良いよ・・・いるみんの好きにして。ていうか、私もいるみんって呼んでるし、やっぱり名前呼びの方が自然かもね。」

「あ・・・そうか、そうだよな。じゃあ、これからは『ゆん』って呼ぶよ。」

 射光とゆんは何だかくすぐったいような笑い出したくなるような感情に囚われ理由も分からず二人で顔を見合わせては笑った。はたから見れば恐らく普通の初々しい男女カップルに見えるのだろう。

「あーあ、なんや・・・別にうちが手ぇ出さなくても良かったやん。なぁ憂く・・・あれ、憂君いつの間に食べとったん?」

「ねぇ、」

「っ・・・な、何?」

 思えば、初めて愛音は憂の方から話しかけられる。何も喋らなかった時はさほど緊張もしなかったし、寧ろ自分から積極的にアピールをしていたのに、いざ向こうから話しかけられるとどうしてこんなにも緊張するのだろう。愛音は体を強張らせ、何を言われるのか何を言われるのか胸を高鳴らせながら待機をする。強い黒光の憂の瞳。初めて見た時から感じていたが、本当に彼は人間離れした美形だと。

「その、憂君って呼び方やめろよ。」

「えっ・・・あ、ごめん・・・やっぱ迷惑やった?」

 実はさりげなく昨日は『村崎君』と呼んでいたのを今朝から『憂君』に変えた。これもまた愛音なりのさりげないアピールだったのだが、やはり気に召さなかったのか。しょんぼりとする愛音の頭上から憂は囁く。

「憂。」

「え?」

「憂で良いよ。『憂君』って呼ばれると、むかつく奴思い出して嫌なんだ。」

 勿論それは最大の憎っき存在の悠夢の事であるが。そんな都合はつゆ知らずな愛音は、相手からのまさかの親密度あげイベント発生に声にならない歓喜の声をあげる。喜びで荒くなる息を整えながら、愛音は呼ぶ。最上級に明るい声で。

「憂っ」

 そんな声でこんな憂いに満ちた名前を呼ぶ何て、滑稽な話だ。そう思いながらも憂は、誰にも見せない笑顔を浮かべた。



 四人は同時に教室に入った。時刻は一時限目開始五分前。中々ぎりぎりな時間帯なので、大抵の生徒は授業の準備に急ぐ。射光と憂の席は一番窓際の一番後ろとその一つ前。前の扉から入って一番窓際の列へ向かう。ふと、一番黒板の目の前の席に見覚えのある人物を見た。一人だけ明らかに浮いている金色の髪に、幼い顔。誰かの弟が紛れ込んでいるって何回云われた事があるのだろう。射光は思わず立ち止まってその人物の方へ向く。

「おはよう、依月。」

 依月は少し驚いて大きな目を更に大きく見開く。そして控えめに小さな声で言う。

「・・・おはよう、ございます。」

 実際のところ彼はいくつなのだろう。飛び級なんて日本には無いとあれから悠夢に笑われながら云われたので、本当に見た目相応の年齢だとしたらおかしい。だとしたらこう見えて本当に射光と同い年なのだろうか。射光の疑問点はつきないが、詳しい話は後々昼休みにでも聞くとしょう。またいつもの中庭で。

「五十崎・・・依月?」

 憂は挨拶する事も無く首を傾げながら何やら彼の名前を呟く。依月も、何だろうこのヤンキーみたいな人と云うような訝しげな視線を送る。

「ああ、お前男だったんだ。あんまりにちっちぇから気づかなかった。」

 憂、お前はまずそっからだったのか。と射光は思わず呆れの視線を送った瞬間憂は教室の端まですっ飛んだ。何が起きたのかは既に何となく把握している。依月の強烈な蹴り技が放たれたのだ。特に憂の方は心配いらない。しかし心配なのは周りの目だ。恐る恐る教室を見渡すと、やはり生徒達は驚愕の目を此方に向けている。憂は教室の扉まで一瞬にして吹っ飛ばされ、その上頭は扉にのめり込んでいる。勿論彼は人間核兵器だ。こんな事で死ぬ訳は無い。

「てめぇ・・・挨拶もしてねぇ相手を蹴り飛ばすんじゃねぇよ・・・」

「挨拶も無しに人の事ちっさいだの女みたいだの云う人に言われたく無いですね。」

 女みたいとは云っていない。しかしそう聞こえたという事は自身も認めておりそれを気にしているという事だ。憂は体を起き上がらせいきなり依月の胸ぐらを掴む。憂と依月の身長差はおおよそ十五センチ以上はある。憂に胸ぐらを掴まれれば依月の足は床から浮く。どう見ても高校生が小学生をカツアゲしているという大人げ無い事この上無い絵面。ヤンキーモードに入った憂の怖さというか凄味というのは射光から見ても恐ろしいと思ってしまう。しかし依月は何も怖さなどは感じず、寧ろ蹴られたくらいでキレた憂を見下しているようにも見える。きっとそんな表情が出来るのは憂をホロノイドだと知らない所為だ。彼がホロノイドだと知れば流石に怖じけづくだろう。いや、無理か。妖魔皇ですら一蹴するような子供だ。

「せ、先生・・・憂と五十崎君が喧嘩してますっ・・・」

 丁度担任の石屋が教室にやって来た頃、透かさず愛音が現状報告をする。現状報告しなくたってこの情景を見れば一発で解るのだろうけど。

「そうか。で、どっちが勝ったんだ?」

「いやー、まだ始まったばかりなので何とも・・・ってこら先生!そこや無いやろツッコむとこ!」

「男にとって一番むかつく事は熱い決闘に水をさされる事だ。俺は止めねぇ。寧ろ誰か止めようとしたらそいつを止める。とりあえず決着つくまで精一杯やれよ。」

『先生ぇぇぇぇ!』

 生徒一同のツッコミを受けても微動だにしない石屋。きっと校長や教頭が乱入してもきっと教室にすら入れないんだろうな。と思ったら射光の予想は的中した。結局どうなったかと云うと、この後憂が何回か依月に攻撃をしかけるが、依月はその全てをスローモーションで見てるかのように軽やかにかわす。そして憂が攻撃を失敗する度に一回依月は蹴り技をメインに憂に攻撃をしかける。その全ての攻撃は容赦が無かった。しかし依月にとってはそれは精一杯手加減しているみたいだ。昨日、妖魔や魔にやった時ほど精一杯蹴り上げているようには見えないのだ。少し喧嘩の強い一般人程度の威力の蹴り方だった。きっと彼にとっては十分の一の力も発揮していないのだろう。それでも憂の動きを鎮める程の威力はあった。憂は右腕と腰に打撲を負い保健室へ行くように射光に促された。其処で二人の喧嘩は中断された。

 しかしあの五十崎依月、あんなに小さな体の何処にあれほど優れた戦法が入っているのだろう。高校生よりずっとずっと年下にも見えるが、もしかしたらずっとずっと年上なのかも知れない。人間核兵器の憂ですら一撃を食らわせる事も出来ず、それどころか短時間でこれほど傷を負わせる。きっと彼の力はこんなもんじゃない。もっと未知数的な物なのだろう。憂は深く痛む右腕の打撲を見詰める。攻撃を防ぐ為に一番効率の良い肘の中心部だ。上履きを履いた足によって作られた重い打撲。金属バットで殴られて出来るような打撲だ。筋肉もろくについていないような足でどうやって出来るのか。憂は恐ろしさの前に何だかとても屈辱に感じた。



「やあ魔くん。」

 静寂に包まれた神社に響く、陽気な男の声。魔は顔を見ずともその人物が誰かは把握出来た。

「久しぶりじゃのう、暇人。」

 魔は悠夢の顔も見ずに障子の向こうから声を響かせる。悠夢は断りもせずに障子を開け魔の顔を此方に向ける。そして強引に隣の縁側に腰をかけた。

「やだなぁ暇人だなんて。君ほど暇人じゃ無いんだよ俺は。」

「だったら何しに来たという。」

「何かねー、時々来たくなるんだよ此処は。原宿とは思えない程落ち着いてるし、何より涼しいし。仕事疲れのこの体と精神を癒してくれるんだよ。」

 悠夢は両腕を伸ばし大きく深呼吸をする。自然が豊富で綺麗な酸素も豊富なこの地は呼吸をする度に肺が浄化されるようだった。そして悠夢はそのまま畳に体を横たわせる。魔は溜息をつき、明らかに迷惑である事を示したが悠夢には全く効果が無い。

「全く・・・そんな疲れるような仕事をする貴様もどうかと思うぞ。」

「何いってんのさ、誰のお陰で君は今生きているんだと思う?誰のお陰で日本は平静を保てていれるんだと思う?」

 悠夢は途端に妖しく笑った。妖魔皇ですら従えかねないその笑顔。しかし魔は意にも介さず更にその上から目線で語りかける。

「何を言っておる。結局平静も平和も保たれていないだろう。五年前の大惨事を忘れたか。それに、あの大惨事とて貴様がこの街で罪を犯したから、その罰がくだったのじゃ。」

「そうだね・・・そうかも知れないね。」

 そうかも知れないのでは無く、そうに決まっている。またしても都合良く逃げようとする悠夢に魔は呆れの溜息しか出なかった。彼によって生かされている。人間によって妖魔皇が生かされている何てそんな屈辱的な話は無い。しかし人間によって数々の妖魔が住み処を奪われた。人間の信仰心が薄れた故消えていった神も大勢居る。そう考えると、やはり不死身である妖魔も結局は人間に逆らえないのかも知れない。

「そういえばさ、昨日は大変だったんだって?」

「誰から聞いた。」

「憂くんといるみんから。」

「ああ・・・あの二人か。」

 魔の脳裏に昨晩の記憶が蘇る。人間の顔は中々覚えられないのだが、不思議とあの二人の顔は覚えていた。

「何があったの?あんな新しい学校に。」

「あの学校の位置には丁度魔道があった。」

「魔道?」

「妖魔界と人間界を繋ぐ道じゃ。あの学校のあの倉庫の位置が丁度其処だったのじゃ。」

 だから毎日何体もの妖魔が行き来していた。そんな場所がまさか人間の手で壊せる訳もない。そしてそれほど霊力の強い場所に行けばさほど霊感の無い人間でも必ずといって良い程妖魔を見てしまう。あの腕の長い少女があの魔道を使う妖魔の頭みたいな物だった。あの少女は人一倍人間を恨むような死に方をしたのだろう。少しでも自分の意志が伝わる人間なら地獄へ落とそうとする。妖魔皇が少女に罰を下し、そして他の妖魔も怖じ気づいたのか、大人しく妖魔界へ帰って行った。しかしそれだけで収まりがついたとは思えない。あの学校では更なる妖魔達による災難が降りかかる可能性がある。要観察といった状況だ。その為にわざわざ依月をあの学校に入学させあの学校で生活をさせている。

「しかし、妖魔達が途端に大人しくなったのは・・・儂の所為という訳では無いだろう。」

「じゃあ誰の所為?」

「・・・・」

 魔は黙り込む。実際のところ魔にもはっきりとは解らないのだ。しかし無駄に勘の良い悠夢は魔が今何を考えたのか直ぐに言い当てる。

「いるみんの事でしょ。」

「いるみん?」

「天正射光くんだよ。やっぱりあの子、ただ者じゃ無いんだ。妖魔皇様なら解るでしょ?」

「貴様に何が解る。」

「ねぇ教えてよ。あの子ってなんなの?あの子の持っている日本刀とか何か関係あんの?」

 日本刀と聞いた瞬間、魔は思わず取り乱す。勢いよく悠夢の方へ向いた。

「日本刀・・・?その日本刀とやら、何処にある?」

「え、いるみんの荷物の中だよ。なんか、護身用に持って行けってお母さんが云ったらしいよ。」

 あくまで淡々と話す悠夢。魔は何か深刻そうな顔をし、また黙り込んだ。やはり何か面白い事柄があるのだろうと悠夢は魔に顔を近づけ探りをかける。これは単なる悠夢の好奇心からの行動だ。悠夢の好奇心は底なしの沼のようだと、彼をよく知る人物なら必ずそう言う。

「ねぇ、あの日本刀って何なの?何かさ、何かを斬る度に赤く光輝くんだよ。すっごく綺麗なんだ、その赤い光。」

「悠夢・・・」

「なに?」

「余り人間が首を突っ込んで良い問題では無い。命が惜しくなければ早急に立ち去るが良い。」

 ふいっと魔は悠夢から顔をそらした。悠夢はつまらなさそうに頬を膨らませ、そしてすぐにまた不敵な笑顔を浮かべた。

「命なんか惜しく無いよ。俺のこの探求心で死ねるなら本望さ。」

 例えば、アリスがあの不思議の国を探り過ぎた故に命を絶ったとしても。あのまま永久の眠りについて永久に不思議の国で暮らす事になったとしても彼女は幸せだろう。それは自分の好奇心が起こした悲劇或いは喜劇なのだから。


第八章「夜行モンスター」終


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