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早朝の月

作者: 蓮田 蓮
掲載日:2025/11/24

 早朝の乗車。晩秋の冷たい空気が車内にわずかに流れ込み、窓の外の東の空が徐々に明るさを増していく。

 車掌の汐海は、ふと目を上げてうっすらと輝く満月を見つめた。

休日の早朝、乗客はまばらで、ホームを行き交う人影も少ない。夜明けの静けさのなかで、月は徐々にその輝きを失い、白く淡い姿へと変わっていく。やがて空は水色に染まり、西の空に残る月は真っ白く浮かんでいた。


 汐海は、この月を見るたびに、大学時代のある夜を思い出す。あの時も、駅のホームで同じように西の空の月を眺めていた。ダンス部の仲間たちと夜の練習を終え、疲れた体で夜風に当たりながら見上げた満月。その冷たく澄んだ光は、仲間たちの笑顔と未来への希望をそっと照らしてくれていた。


 長い駅間を移動し、確認作業をこなす合間、ほっとひと息つく瞬間にこの月を見つけると、あの夜の感覚がふわりと蘇る。疲れた心が少しずつほどけ、今日も一日頑張ろうという小さな力が湧いてくる。

「今日も、頑張ろう」

静かな独り言が、朝の空気に溶けていった。


 乗客の少ない車内に、電車の走行音だけがリズムを刻む。満月はやがて西の空に消え、汐海の胸には、昔と同じ温かい希望の余韻が残っていた。誰かに見せるためではなく、自分自身のための、ささやかで確かな勇気。

そして今日も、汐海は小さく息をつき、淡々と車掌動作を続けるのだった。


おわり


早朝に見かける西の空に残った月を見るお話です。一日の始まりを感じてください。

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