90 リーゼット
それから、覚醒体も特に現れずに、穏やかな日々が続いた。
俺たちはその日初めて、吸収型のダンジョン・リーゼットに向かう事になった。
吸収型のダンジョンというのは、モンスターの死体やダイバーの死体などを吸収、そして、しまいにはダンジョン自体も吸収していき、巨大化&成長するダンジョンである。
この場合はもちろん、ダンジョンの地形も巨大化する為、地図はほぼほぼ意味がない。
とにかく、普通型、変化型、侵食型、とあるダンジョンの中でも最も危険なのが、この吸収型だ。
俺たちは気合いを入れてダンジョン・リーゼットに向かった。
「さて、このリーゼットで出るモンスターは獅子系ですね。
シャニル、サニーさん、ゼンファさんで行きましょうか。」
ゾードが指示を出す。
「了解にゃん。」
「ふん、フェンリルなどと一緒かよ!」
「ふん!
こっちのセリフぞ!」
という訳でサニー、ゼンファーファ、シャニルがメインで戦う事になった。
「それにしても、覚醒体スタートンが出た以上、他の覚醒体も出るよなぁ?」
俺は後ろから援護しながら、ゾードに話しかけた。
「えぇ、あり得るでしょうね…
そもそも、私たちの惑星では、魔法は発達していましたが科学はめっきりでした。
つまり、覚醒体を悪用しようなどという考えの者がいなかったのです。
しかし…
ここでは違う。
どんな実験覚醒体が飛び出すのかは、私にも未開の領域、という訳ですよ。」
「なるほど、ゾードにも分からない事があったのか!」
何となく俺は少し嬉しくなった。
「まぁ、実験体についてはね。
しかし、大和ダンジョン委員会の次の手は何となく予想出来る気がします。」
「え、何だよ?」
「覚醒体の次、と言えば、覚醒融合体でしょう?
私が大和ダンジョン委員会ならば、覚醒融合体の実験を始めますね。」
「…なるほど…!」
そうか、覚醒融合体も実験してる可能性があるのか!
もしも、大和ダンジョン委員会が完全に覚醒融合体を支配下に置いたら…
こりゃ、結構やばいぞー…
そんなこんなで、ダンジョンバイクを飛ばして居ると、あっという間にボスの間に到着した。
ボスは竜獅子ビーデンだ。
俺たちはアイコンタクトを取り、全員でボス戦に挑んだ。
竜獅子は竜の巨体に四つの足があり、顔には獅子の縦ヒゲが生えて居る。
まさに、竜獅子だ。
「おっしゃ、やるぜ!
マギ・高速剣!」
俺は剣を高速で回転させると、ビーデンの尻尾に切れ目を入れた。
ビーデンは火炎弾を放つ。
巨大な火炎弾が彗星のように俺たちに降り注ぐ。
俺はマギでギリギリで避け、ゾード達も回避した。




