72 変身
その日も仕事で、引き続きダンジョン・セシルを攻めに向かった。
その日はジョーカーとミア、シャニル、ゼンファーファがメインで敵を倒してくれたので、俺とゾードは何でもない話をしながら後ろからついて行った。
地下6階で。
ルナティさんが怒りのリザードマンにトドメを刺しているところに遭遇した。
「ルナティさん!」
「あら、ツッキー!
と、愉快な仲間たち!」
「最強の仲間達と言ってくれませんか!」
どうやら、ゾードとルナティさんは相性が悪いようだ。
「ルナティさん、お久しぶりです。
あ、配信へのコメントもありがとうございます。」
俺はお礼を言う。
「良いのよ!
いやぁ、弟子が成長する姿って良いものね。」
「いつ、衛輔さんがあなたの弟子になったんですか!」
スルーせずに突っ込むゾード。
「あら、違った?
そういえば、ツッキーってEランクに上がったのよね?」
ルナティさんが尋ねた。
「はい。
Eランクです。」
「じゃ、これは知っておいた方がいいかもね。」
「?
何をですか?」
「Eランクの最後のダンジョン・マリアが、普通型から侵食型に変化したわ。」
「はぁぁぁあ!?
変化!?
ダンジョンがっすか!?」
俺は驚きの声を上げる。
ダンジョンって、へんしーん!みたいな事すんの!?
当然の疑問である。
「それね、私たちも正直言ってよく分からないのよねぇ。
今までに変化したダンジョンなんて無かったし。
元々侵食型だったら、侵食型。
普通型は永遠に普通型だと思ってたのよね。
まぁ、当然だけれど。
まっ、でもさ!
ダンジョン自体が不思議な存在なんだし!
何でもアリなんじゃない?」
ルナティさんはあっけらかんとしてそう言った。
「いやぁ…
でも…」
「…………」
ゾードは沈黙している。
何かを知っているようだ。
「まぁ、ダンジョン・マリアを攻める時はきぃつけて!って話よ!
これはCOCOアプリの掲示板にも載ってる情報よ!
君、ちゃんとCOCOアプリの掲示板チェックしてないでしょ!?
だめよー!」
と、ルナティさんからお叱りを受け、そこで別れた。
「ダンジョン、変身かぁ…
まいったなぁ。
どんどん予測不能の事態が起こってるぞ。」
「いずれ…
全ては一本の道につながるでしょう…」
ゾードが超意味深なことを言った。
だからぁ!
お前は一体何を知ってるんだよ!
と思ったが、どうせ、今は言えません、と言われるので何も言わなかった。
その日は地下7階までを制覇して、ダンジョン・セシルを攻略し終えた俺たちは、いつも通り疲れて屋敷へ帰っていったのだった。




