62 レイド討伐②
「くそったれ!」
仙道さんが力任せにマドンナソードを横に一閃させて、レイドの腹部に斬り込んだ。
レイドの腹部からは血の代わりに大量の触手が現れ、拡散した。
そして、触手は意志を持つかのように刃の形に変形して、COCOメンバーに襲いかかったのだ。
「ぐぁぁぁ!」
「キャァァァ!」
「ウガァァ!!!」
巻き起こる叫び声。
毒の付随効果もあり、3名が瀕死の状態になった。
「まずいぞ、このままじゃ全滅する…!」
俺がそう言った時、ゾードは深いため息を吐き、剣の柄を持ち直した。
「魔技、発動…」
ゾードがぽつりとそう言うと、突如としてゾードの背後に巨大な氷山が現れた。
「マギ・氷山の一角…!」
ゾードが剣を突きの姿勢で構えると、ダンジョンの地面が割れ、氷の山が連なり地面から突き出した。
氷山はレイドまで一気に一直線に進み、レイドを下から突き上げ、串刺しにした。
そして、数秒後、レイドは斧を手から落として力尽きた。
「勝った…の…か…?」
仙道さんが剣を杖代わりにしてよろめきながらそう言う。
「ミアさん達回復役は負傷者の手当をしてください!」
ゾードが指示する。
こうして、約8名の死者そして5名の負傷者を出して、レイド討伐は終わった。
「こんなに犠牲者が出るとは…」
仙道さんが悲痛な面持ちで言う。
「せめて、地上に連れてかえってあげましょう。」
ゾードが祈りながら言って、来栖ここあさんの死体を抱えた。
俺たち生き残ったメンバーは、死体を背負って地上に上がった。
もう、誰も何も口を聞かなかった。
ただひたすら大和ダンジョン委員会に報復することを誓った。
心の中に。
みんなの気持ちはその時一つだったと思う。
「みんな…
言葉にならない…
死者の弔いが終わって落ち着いたら、COCOに集まろう…
今はただ仲間達の冥福を祈るだけだ…」
仙道さんは言った。
こうして、レイド討伐は…終わった…
大きな大きな犠牲を出して…
俺たちは必ず大和ダンジョン委員会に報復する。
それが、死んだ仲間達への弔いだからだ。
♦︎♦︎♦︎
それから、しばらく葬式が続いた。
俺たちは、死んだ仲間の為に泣いてやる事しか出来なかった。
そして、その日、残りの15名の公認ダイバーが大和ダンジョン委員会に離反届けを出した。
大和ダンジョン委員会の栗原さんは、引き止める訳でもなく、それを受理した。
そして、俺たちは大和ダンジョン委員会への報復を誓う為に、COCOのミーティングルームに集まっていた。
「死んだ8人の想いは俺たちが引き継ぐ…
必ず大和ダンジョン委員会に…そして、華魔鬼凛に…報復しよう…」
仙道さんはそう言った。




