49 大和ダンジョン委員会
side栗原心
私は大和ダンジョン委員会の公認ダイバー勧誘担当の栗原心だ。
公認ダイバーという立場はもちろん、公認ダイバー達には伏せさせているが、最近ではダイバー達の噂話程度になっているらしい。
「栗原クン!」
胡散臭いチビデブのおっさん、古村米介が話しかけてきた。
彼は変異体討伐の役員だ。
係は違えど、同じく公認ダイバーに関わる身としては、日に何度も接触することもある。
「どうしました?
古村さん?」
「ふむ、実は公認ダイバー達が結束して何かをやっているようなんダネ。
秘密基地があるらしいのだが、防御してあってレーダーじゃ割り出せないんダネ!」
古村さんは言う。
「へぇ、無い頭だと思っていましたが…
やはり動き始めましたか…」
「うーん、面倒なのだねぇ。
覚醒体についても、バレてる可能性があるのだねぇ。
どうするぅ?」
「ふむ、それは嗅ぎつけてきましたねぇ。
一度…
奴らには死んでもらいますか…?」
「そうだねぇ!
公認ダイバーになりたいという者は多いんダネ!
わざわざ頭の良い面倒なやつを使う必要は無いんダネ!」
「全く、良い公認ダイバーというのは、定期的に死んでくれる奴らですよ。
秘密を知る前にね。」
私はほくそ笑んでそう言った。
「しかぁし?
どうやって、奴らを始末するのだね?」
古村さんは短い首を傾げる。
「覚醒体0075ディア…
奴の討伐依頼をさせましょう。
もちろん、詳細は塞いでね。」
「覚醒体0075ディアダネェ!
チミもエグイ事考えるのだねぇ!」
「奴らは真鈍無を持っているのですか?」
私は古村さんに尋ねた。
古村さんは珍しく何も言わずにただ頷いた。
「そうですか…
それは、早急に殺す必要がありそうですね…
我々の未来の為に…」
「しかし、覚醒体ディアだと、半分はシヌだろうねぇ。
まぁ、全滅してくれればあっぱれだが。」
「そうですね。
まぁ、1/3もシネば上等でしょう。
それだけ、奴らの勢いを削げますからね。
じゃ、覚醒体ディアの事は古村さんに任せますよ?
くれぐれも覚醒体と言わないように…
変異体で通してくださいよ?」
「もちろん、わかっているのダネ!
その辺はぬかりないのダネ!」
「それなら良いんです。
よろしくお願いしますよ。
では、私は書類の整理があるので、これで失礼致します。」
そう言って私は大和ダンジョン委員会5階の廊下を後にした。
さぁ、今回の討伐で何人が生き残る事になるのか?
それは、誰にも分からない。
私は、執務室に戻ると、白ワインを開け、窓の外の景色に目をやった。
残酷な野望を心に秘めながら。




