17 ゼンファーファ
俺は迷わず炎獄のフェンリル・ゼンファーファをポチッとした。
すると…
アパートの部屋に炎が巻き起こった。
やべ!
火事になるぞ!
と思ったのも束の間、その炎の中から真っ赤なフェンリルが現れた。
体長5メートルほどで、アパートの部屋ギリギリまでを占めている。
「こ、こ、これが…
炎獄のフェンリル…」
「お主か…
我を深い眠りから呼び覚ました者は…?」
ゼンファーファは口を開いた。
中から、強固な牙がチラリと見えた。
「え、喋るの…?」
俺はポカーンとする。
「我は低能なモンスターとは違う。
喋るのは当たり前だろう。」
ゼンファーファは前足を毛繕いしながら、そう言った。
「もふもふ…!」
ミアが目を輝かせながら言う。
「え、ミア…?」
「いえ!
失礼しました!
その、ゼンファちゃんがもふもふだったので…つい…」
「ゼンファちゃん言うな!」
ゼンファーファが怒る。
「まぁ、後でもふもふさせて貰ってくれ。
とにかくゼンファーファが居るとこのアパートじゃ、もうダメだな。
不動産屋に行って新しい家を探そう!」
俺は言った。
そして、ゼンファーファと風助をアパートに残して、不動産屋に向かった。
今800万円あるし、頭金には十分だろう。
そう安易に思っていた。
「いらっしゃいませ!
どのようなご用件でしょうか?」
不動産屋の受付の女の人が言うので、俺は家を買いたいと言った。
「では、ご職業をお伺いします。」
「えーと、ダンジョンダイバーで…」
「え、あ、あぁ…!」
微妙な反応になる受付の女性。
「え、でも、お金はあるんですよ?
頭金800万円!」
俺は言うが…
「申し訳ございません…
ダンジョンダイバー様は不安定なご職業ですので、基本的には家をご購入される場合は一括にて、という決まりなんです。
つまり、ローンが組めません…」
「えぇぇぇぇぇ!?
そんなぁぁ!?」
「申し訳ございません。
規則ですので…」
俺とミアは何の収穫も無いまま、不動産屋を後にした。
「はぁぁぁあ…
困ったなぁ…
ゼンファーファがアパートの部屋を占領しちゃってるしなぁ。
俺とミアはしばらくはホテルに泊まるしか…」
俺は言う。
「そうですね…」
ミアが答える。
その時…!
「月野衛輔様ですね…?」
黒ずくめのスーツの男が俺にそう声をかけた。
「は?
あなたは…?」
「失礼しました。
私は大和ダンジョン委員会の使いの者で、小岩井と申します。
月野衛輔様に大和ダンジョン委員会より、お呼び出しがかかっております。
今からお時間よろしいですか?」
「え、あ、はぁ…」
俺はマヌケな返事をする。
そして、ミアと俺は大和ダンジョン委員会にその人の車で向かった。