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第81話 な~るほど! 逆引き辞書ね!

※□※※□※※□※1行×32文字で執筆中※□※※□※※□※

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「商人ギルドってどこにあるのかわかる? ねぇ、ウィル」

「ジゼニアの一番奥にありますよ」


 大小露店が連ね、活気あふれる商業通り。

 その突き当りに、ひときわ大きい天幕の商人ギルドがあった。

 行き交う人々の声が響く中、商人ギルドの象徴である深い青の垂れ幕が風に揺れ、堂々とした存在感を放っていた。


「ヴィヴィオラはさ、何売るの?」


 神斗は興味深そうに商人ギルドの入口を見つめながら尋ねてきた。


「胡椒かな」

「胡椒?」


 神斗は目を丸くし、ヴィヴィオラの意外な選択に困惑の表情を浮かべた。

 彼の頭にはまだスパイスが高価な取引材料になるという概念がなかったのかもしれない。

 そうだよね。

 これが普通の反応だよ!

 リスナーは「スパイス売りが鉄板だ」って言っていたけどさ。


「そう、胡椒って高値で取引されているんだって。100グラムで2万ギリア。だから卸値はその半額の1万ギリアくらいかなと思ってる。ね、これってかなりいい金策じゃない?」

「それは凄いけどさ。その胡椒はどこにあるの?」


 神斗は半ば呆れながら聞き返した。


「ネット」

「ネット?」

「ネットショッピング!」

「ネットショッピング!?」


 神斗は反射的に繰り返した。


「あれ? 言ってなかったっけ? この世界にあるものであれば、購入できるんだよ」

「マジか……」


 神斗は思わず肩をすくめながら呟いた。

 羨ましさと驚きが入り混じる複雑な感情が、その一言に詰まっていた。


「でも、結構制限があってさ。購入資金はリスナーの投げ銭だけだし、それに……配信と同じで、一年間しか使えないだもん」


 いつかは消えてしまうスキル。

 今だけの恩恵。

 でも、リスナーの「【収納(アイテムボックス)】に入れておけば、いつでもお金に替えられる」という私の魔法を理解した上のアイデアに救われた。


「ネットで胡椒買って稼ぎたいんだ?」

「そうそう、そうなの!」

「でもさ、ヴィヴィオラはさ、薬草採取でも十分な金額稼げるからそんなことしなくてもいいんじゃない? それよりさ、米とかラーメンとか買って自分で食べる方が良くない?」


 神斗の言葉を反芻しながら、静かに視線を落とした。

 確かに神斗の言う通りだ。

 この世界で生き抜くためには、とにかくお金を稼がないといけないと思っていた。

 でも、今の状況は思っていたよりもずっと良い方向に進んでいる。

 魔法が使えるようになり、さらに旅を共にする頼れる仲間がいる。

 それだけで、ひとりで生き抜く世界とはまるで違うものだった。

 少なくとも今すぐに生活費に困ることはないよね。

 そう考えると確かに、手に入りにくい食べ物を優先するのも悪くない選択肢だ。


「なるほど、確かにお金に執着しすぎていたかも……。米ねーーこの世界にあるかな?」

「この世界にあるものが買えるってことはさ、つまり、米がネットショッピングで買えるなら、この世界にもあるってことじゃん」

「逆引き辞書みたいな使い方ってことね」


 ネットショッピングを情報源として活用するなんて、思いつかなかった発想だ。

 賢い……。

 私なんか、アレもコレも買えない! と嘆いていただけだ。

 恥ずかしい……。

 その方法はこの世界にあるかどうか、欲しいものがあるたびに誰かに尋ねなくても済むので便利だ。


「ひとまず10555円分は胡椒を買う! 胡椒用に投げ銭を貰ったからね。あとは手に入りづらそうなものを買おう!」



ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー



 商人ギルド登録は簡単だった。

 冒険者ギルドと違い、命に関わることが少ないからかも知れない。

 お馴染みの珠にさわり、ジゼニア初日に払った領収書を見せるだけ。

 

 この商人ギルドで行えるのは、売買、取り寄せ、斡旋と多岐にわたる。

 ジゼニア内の商人たちは、必ず、商人ギルドに加入しているらしい。

 移動しながら売買するという特殊な形だから。

 他の商人は、もちろん加入は自由らしい。

 ちなみに全ての取引は、商人ギルドは加入しなくても大丈夫らしい。

 でも、やはり品物を高く売られ、安く買われ、斡旋代も請求、取り寄せ代も高額だ。


「でも、我々は信頼を売りにしている商人ですから買いたたくほどではないですよ!」


 担当のギルド職員が説明に追加してくる。


「これもタグなのか……」


 冒険者ランクタグと同じ見た目のタグを丈夫な紐に通す。

 私には、みんなには見えないけど、配信部屋を開ける鍵も首にかけてある。


「首からかけるのが、一番失くさずに持ち運べる方法だからですね」


 ウィルが器用な指先で首紐をしっかりと括ってくれる。

 あまり重さは感じないのはありがたい。


「胡椒を売るのは今度だなぁ。まだ、購入していないし」

「ヴィヴィ、欲しいものがあれば斡旋してもらえますよ?」

「そっか……、風呂?」

「風呂?」

「風呂? バスタブ? 風呂桶? なんていうんだろう」

「風呂樽ですね。それならば、この店に行ってみてください」


 紙にサラサラと店の名前と商人ギルドからの道を略図を書いてくれる。

 うん、地図が略され過ぎだ。

 わからないぞ……。 


「これで、野宿中もお風呂に入れる! 冷たい水浴びとかしなくてもいい!」

「持ち運ぶのですか!? あぁ、【収納(アイテムボックス)】をお持ちなのですね。受注生産なので受取時期は気を付けてくださいね」

「そうなのか! じゃあ、今から行こう!」

 

 予定では、あと20日しかジゼニアに滞在しないはず。

 急いで注文しないと!


「ヴィヴィオラ、俺は少し用事あるから」

「そうなの? ……わかった! 夕食までには戻ってきてね」

「うん、わかった」


 欲しいものがあるって言ってたから、それ関係なんだろう。

 椅子から立ち上がり、ウィルを椅子から引っ張り上げる。


「ウィル! 急いで!」


 地図をしっかりと握りしめ、勢いよく商人ギルドを飛び出した。

【★お願い★】

こんにちは、作者のヴィオレッタです。

最後まで目を通していただきありがとうございます。

少しでも 「また読んでやるか」 と思っていただけましたら、

広告の下にある【いいね】や【☆☆☆☆☆】ポイントを入れてくださるとめっちゃ喜びます。

最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。

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