第76話 やっぱり気になるよね
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「ねぇ、神斗。この辺りでしない?」
薬草の群生もしているのが見える。
太陽に照らされた葉が生き生きとしていて、私にはまるで自然の宝庫のよう。
ずんずんと歩を進める神斗の足が止まった。
神斗は森の方へちらり、ちらりと視線を送り続けている。
クスッ
きっと、あの罠のことが気になって仕方がないんだね。
私が高校生だったら、「男子~、やめなよ~」って止めるのが定番なんだろうな。
「森に近づくだけだよ。森へは入らないからね。それに調査班の人達も来てないし」
「うん、わかった!」
そんなに嬉しくなることなんだ。
神斗の表情には、好奇心と冒険心が滲んでいるようだった。
でも、トラブルに巻き込まれるのは厄介だ。
今回の相手は〖罠を設置した人〗ーーつまり、魔物や動物とは違う。
知能を持ち、狙いを持って罠を仕掛けている以上、より慎重に動かなければならない。
万が一戦闘なんかになったら、大変。
「ここでいい? ヴィヴィオラ」
目の前には森の入り口が広がり、街道が一直線に伸びている。
この位置なら、森へ向かう調査班の姿もしっかりと把握できる。
彼の中で妥協できる場所を見つけたようだ。
「そうだね。ちょっと待ってね。【探索】……」
うん、あるある、ヒール草が。
「チキンチキンは……【探索】……。え!? ……これは。……そうだね。もう少し森の近くへ行った所に座り込んでいるのか、2群れいるね。ざっと数えて50羽ぐらいいるよ……」
森の方を指差しながらため息がでた。
「ダメだからね! 森まで入ったら!」
なんで、森近くで休んでいるの。
「オッケー! 倒し終わったら呼ぶから。疑卵届かない範囲にいて」
私は私で受けた依頼を進めないと。
薬草……宝の山!
慎重に手を伸ばしながら薬草を摘み始める。
夢中になって薬草を採取していると、「ヴィヴィオラ!」と神斗の声が響いた。
彼の声はどこか満足げで、戦闘が終わったことを知らせるものだった。
「うわぁぁぁ……」
「チキンチキン45羽ぐらいかな? それと卵持って帰ろう。【収納】に入れておけば、良いしね」
目の前には、討伐された大量のチキンチキンが横たわり、その横には卵がずらりと並んでいる。
「凄いねぇ……。【収納】」
近くのチキンチキンにそっと手を触れ、魔法を発動する。
まるで初めから存在していなかったかのように、チキンチキンの姿は掻き消えた。。
「ん?……あれ?」
「どうしたんだろう? 卵、半分しか入らなかった」
【収納】を確認し、原因を探るように目を細めた。
卵27個としか頭に浮かばない。
「ヴィヴィオラ。もしかして、無精卵と有精卵の違いなんじゃない? 【収納】って生き物は入れられないんだよね?」
「無精と有精? ……卵にそんな違いがあるなんて知らなかった」
「卵が孵化する可能性があるものが有精卵。『生きている』ものとして認定されてるんだと思うな。今、【収納】に入っているのが無精卵で、俺らがいつも食べている卵」
「なるほど……。じゃあ、この勇者が狩り尽くした群れも、有精卵と逃げたチキンチキンのおかげで、時間が経てば元通りになるね」
残った卵の山をじっと見つめる。
「元気で育つんだよ~」
「魔物なんだけどな」
「益虫ならぬ益魔物ってことで!」と話をしているときに、調査班の一団が台車を引きながら森へ入って行った。
「調査班が来たね。思ったより人数が多いな……」
「そうだね。よかった! ちゃんと調査してくれて。それじゃあ、私たちはお昼ご飯にしよう?」
「そういえば今日の昼飯、俺が捌いたオークのとんかつサンドらしいよ」
神斗はどこか得意げに言う。
「オーク……。みんな当たり前のように食べてるけど、豚とか猪の獣人じゃないんだよね?」
「いや、違うらしいよ。ちゃんと魔物なんだってさ」
「じゃあ、いつもの魔物肉だ」
不安が、ふっと溶けるようにホッとした。
獣人種の共食いなんて嫌だもん。
【収納】ら敷布を取り出し、丁寧に広げる。
地面の感触を確かめながら腰を下ろし、ゆっくりと周囲を見渡した。
「……気になる?」
神斗の視線は、私を透り越した向こうの森の入り口に注がれている。
実際に罠の被害に遭った以上、それを仕掛けた者が何者なのか、どんな目的で仕掛けたのか、気になるのも仕方がない。
「まぁね……。あっ……」
曖昧な口調のまま視線を動かしていた神斗だったが、ある一点で目を止めると、肩をわずかに強張らせて息を飲んだ。
「どうしたの?」
「ヴィヴィオラ、動かないで……ガビルたちだ。7人が、二手に別れて森に入っていく」
「え!? 本当にガビル? やっぱり、あの罠はガビルたちの仕業だったんだ……」
ジゼニアに到着する前の日の夜。
砂糖の実のおじさま冒険者が「『獲物を横取りするつもりだったんだろう?』って金品を要求してくるんだ。しかも倒した獲物をギルドまで運ぶ手伝いもさせられる」と話していたっけ……。
「多分だけど、罠を回収に来たって感じじゃないよ。剣を抜いて森へ入って行った……しかも、話し合う様子もなく、まっすぐ罠の方へ向かってるかも」
「えぇ? ちょっと待って、剣って言った?」
もしかしたら、戦闘になるのかもしれない。
心臓が一瞬だけ強く跳ねた。
「でも、Bランク2パーティいるんだから大丈夫だよね?」
「隠れて様子を見てみよう」
「うぅ……やっぱりそうなるんだ……」
やっぱり、こうなるよねーー。
胸の奥で小さなため息が渦巻く。
危険な予感がじわりと広がっていくのを感じながら、そっと食べかけのサンドイッチを【収納】の中へしまった。
【★お願い★】
こんにちは、作者のヴィオレッタです。
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