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第75話 罠≠当たり屋……?

※□※※□※※□※1行×32文字で執筆中※□※※□※※□※

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 依頼を終えた冒険者が戻るにはまだ早い時間だったため、ギルド内はひっそりとしていた。

 カウンターの向こうでは職員が静かに書類を整理している。

 声をかけると、職員は軽く頷いて「そういうことでしたらーー、ギルド長~!」と奥の部屋に向かって声を張り上げた。

 

「なんだ? こんな早い時間に……」


 奥の部屋からナザル・ギルド長がのそのそと姿を現す。

 仮眠をしていたのか寝起きのような顔をしながら、乱れた髪を無造作にかき上げる。


「ん? 神斗とヴィヴィオラか。ウィルヘルムはどうした? 一緒じゃないのか?」


 私たちを認識すると、少し目を細めた。

 

「ウィルは、何か用事があるとかなんとかで、『行きたくないです』って愚痴りながら出かけていきました」

「あぁ。そうだった。商統に呼ばれていたんだったな……で、俺を呼んだのはお前たちか?」


 職員は「彼らの報告は重要だと思いまして、直接話を聞いていただいたほうがいいかと」と。

 私と神斗は、罠の異常な数とその種類、設置されていた場所について地図を広げ、罠の位置を指し示しながら報告した。


「森の奥深くではなく、森の入口から少し入った場所に大量の罠が仕掛けられていたからさ。冒険者だけじゃなく、領民や商人まで巻き込まれると危ないと思って」

「罠の仕掛け方を見る限り、罠を設置したのは素人っぽいけど……だって、あんな効率の悪そうなことしないじゃん」

「どちらにしても単なる偶然じゃなく、悪意がある気がする」


 そう、悪意。

 罠にかかった〖何か〗を、仕掛けた者は絶対に逃がさない意思を強く感じる。


「なるほど。早く戻ったと思ったら、そういう報告だったか……その罠の件はこちらが預かり、調査を進める」


 ナザル・ギルド長は「お前たち、報告ありがとな」と感謝を述べると、即座に調査班を編成するよう職員に鋭く指示を出した。

 彼の声には緊迫感があり、場の空気がピリッと引き締まる。

 職員が調査班の選定に取り掛かると、それまで静かだったギルド内が急にざわめき始めた。

 調査員の名前を確認し、装備の準備を始める者もいて、緊張感が徐々に高まっていく。

 一人の職員が大急ぎで準備を整えると、キリフ領の冒険者ギルドへと駆けて行った。

 罠の数とその危険性を考慮し、護衛としてBランクの2つのパーティと数名の職員が合同で現場へ向かうことが決定された。

 報告してよかった。

 それにしても、トラバサミやロープーー最近、大量に運んでる人を見たよね……。

 Gランクの薬草採取の依頼を受けたとき、当たり屋のガビルたちがトラバサミやロープを運んでいるのを目撃した。


「まさかね……」

「いや、その可能性が高いんじゃない?」

「え?」

「今、あの当たり屋のこと考えてたでしょ?」


 神斗も同じこと考えてたんだ。

 それもそのはず、たった4日前の出来事だった。

 当たり屋のガビルは、ボアで負った怪我を治しきれないまま、台車を揺らしながら草原を横切っていた。

 あの光景を忘れろという方が無理がある。


「あいつらは、戦いはからっきしだって話だしな。それに、大怪我して金に困ってるって噂だから、罠に頼ってる可能性はあるかもな」

「今までさんざん巻き上げた金があるんじゃないの?」

「ああいうタイプの冒険者はな、金が入ってもすぐ使っちまうんだよ。手元に残すって考えがそもそもないんだ」


 宵越しの金は持たない……そういう生き方かぁ。

 冒険者稼業ーーいつ死ぬかわからないから、入った金は使ってしまえってなるのか……。

 そう考えてしまうのも、無理はないのかもしれない。


「まぁ、まだあいつらと確定したわけじゃないから、口外は厳禁だぞ。あとで報告してやるから、大人しくしておけよ」


 ナザルは私たちに向け、念押しするように言った。

 もちろん気にはなる。

 でもウィルがいない今、下手に動くのは得策じゃない。

 ここは冷静に、ナザル・ギルド長からの結果報告を待つべきだという結論に至った。


「そういえば、今回の受けてた依頼ってなんだ?」

「常設依頼だよ」


 やばっ、忘れてた!

 依頼未達成になるところだった。


「そうか、ならすまんが、依頼は一旦白紙にするか、明日に変更してくれ」

「神斗、私、薬草採取したいかも」

「あ、ヴィヴィオラ。俺、ソロで常設の狩りしていい? チキンチキンなら、ちょうど同じ場所だし」


 神斗は少し考えながら言う。


「うん、いいよ」

「実は……ちょっとお金が必要なんだよな……」


 神斗は気まずそうに告げる。

 私は「なるほど」とそれ以上詮索することはしなかった。

 私もジゼニアに来るまでにかかった費用を少しでも返したいと思っているから、お金がいる。

 ウィルは「気にしないでください」とまったく受け取ってくれない。

 そのかわりに、今後は私がパーティの会計係として、受けた報酬の4分の1を運営資金として管理することになった。

 ウィルは「女性にお金を出させるのは……」なんて言い出してたけど、「パーティのお金だから」と説明し、渋々納得してもらった。

 ウィルが会計係を担当するのは神斗が嫌がるし、逆に神斗が会計係をするのもウィルが難色を示す。

 どちらも譲れない何かがあるらしい。

 男のプライドなのかもしれない。


「ギルド証だしてくれ。神斗はチキンチキン狩りか。ヴィヴィオラは、どんな薬草を採取するんだ?」

「うーん……草原に自生してるもの」

「そうか、ではヒール草多めに頼むな。品質が良いから薬師にせがまれているんだ」

「オッケー!」


 首から下げていたギルド証をそっと取り出し、タグをカウンターのくぼみに挿し込む。

 ほのかな光が広がり、分厚い本が淡く輝きながら勝手にページをめくり始めた。

 そして、ヴィヴィオラと名前が書かれたページでピタリと止まる。

 何度見ても不思議で面白い。

【★お願い★】

こんにちは、作者のヴィオレッタです。

最後まで目を通していただきありがとうございます。

少しでも 「また読んでやるか」 と思っていただけましたら、

広告の下にある【いいね】や【☆☆☆☆☆】ポイントを入れてくださるとめっちゃ喜びます。

最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。

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