第72話 Fランク! ギルド所属になった!
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《キャラバン・ジゼニア5日目ーケルンジリア24日目ー》
「解体実習が終わったぁぁぁぁぁ!」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
解体実習では、他の冒険者が持ち込んだチキンチキンとホーンラビットが用意されていた。
どちらも見た目は可愛らしいけれど、いざ解体となると話は別だよね……。
「解体はするもしないも冒険者の自由だ。ただ、解体を習得しておくと、運びやすい、その場で食べれるというメリットがある。【収納】持っているヴィヴィオラには、あまり関係ないかもしれんがなー」
ナザル・ギルド長は解体専門の職員に「あとは頼んだぞ」と軽く手を振りながらバトンを渡す。
職員は慣れた様子で準備を始める。
「ウィルヘルムさんも【収納】を持っているしなー」
神斗は続けて「いいなぁ……」と羨ましそうに呟いている。
わかる。
わかるよ、その気持ち。
もし私が逆の立場だったら、きっと「せこい! せこい! せこい!!」と大声で騒いでいたに違いない。
私はポンと神斗の背中を軽く叩いて、励ますように笑みを浮かべた。
「大丈夫! 私が全部持ってあげるからね」
「それって、いつでもどこでも一緒にいてくれるってこと?」
「え? まぁ……そういうことになるのかな?」
どれだけ、魔物や動物を狩るつもりなのと思わず苦笑いがこぼれる。
「私も【収納】を使えない時もあるかもだから、しっかり受けます」
「ヴィヴィをそんな状況には絶対にさせませんよ」
ウィルは迷いなく言い切る。
その真剣な口調に、ほんの少し安心してしまう自分がいた。
「ウィルヘルム……、お前、なんでここにいるんだ?」
一瞬もためらわず、大真面目に「付き添いですよ」と答える。
ナザル・ギルド長は呆れたようにため息をつく。
「俺は、ヴィヴィオラはお肉が好きだからしっかり覚えるよ」
「確かに、好きだね!」
神斗の明るさに、解体への緊張が少しほぐれる。
職員は、大きな鍋の湯気をじっと見つめ、湯温を確認するように手をかざす。
「よし! 始めようか。まずは羽根をむしるところからだな。ちなみにその場で食べる場合は、鍋で泡が軽く立ち始めるぐらいの湯温にして、60数えるぐらい漬けるんだ」
解体実習が始まった!!
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
「おい。ウィルヘルムーー。甘やかしすぎだぞ」
「あまりにも可哀そうでーー」
「ウィル……私は、大丈夫だから……」
革手袋が血まみれになり、うずいて解体台から離れるたびに、ウィルが【浄化】をかけてくれる。
神斗はそんな私を呆れているかと思いきや、どんどん解体にのめり込んでいる。
本来、小型の魔物だけを扱う実習のはずなのに、神斗は職員に頼み込んで中型のオークの捌き方まで教わっている。
オークって魔物なんだよね?
豚の獣人でなくて、魔物なんだよね?
神斗が肉を切り分けながら「ここがスペアリブになるところかぁ」と感心している。
逞しすぎる……。
「内臓は、このトレーに出してください」
「あっ、もの凄い長いなコレ」
神斗は、ズルズルと……。
「おぇっ!」
「ヴィヴィ、大丈夫ですか? 【浄化】。もういいですか? ギルド長?」
「ダメだろ……」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
「これで終わりだ」
「解体実習が終わったぁぁぁぁぁ! 所々、記憶がないけど……」
「確かに ヴィヴィオラは何回か吐いて、何回か天井を見上げてたもんな」
「み、見てたの? 自分もなんで天井見ていたのかわかんない」
いやぁぁぁ、恥ずかしいぃぃぃ。
全部見られてたんだ。
もう穴があったら入りたい……。
「どうだ、冒険者としてやっていけるか? やっていくならFランク、またはHランクどちらにする?」
「俺とヴィヴィオラは、当初の予定通りFランクで!」
「よしきた、おめでとう。今日からギルド所属の冒険者だ」
冒険者タグを発行するので待てと言われて受付にいる。
カウンター越しに、職員がタグの準備を始めていた。
「そうだ、パーティも組むんだったな。合わせてパーティ登録もするか? ーーお前たちはⅮランクパーティになる。でも、ソロで依頼受けるときはFランクだぞ」
渡された新しいタグはFランクとかかれた金属製だった。
革ひもにタグを通し、そっと首につける。
冷たい金属の感触が首元に伝わり、これまでの仮の木製タグとは違う本物の重みを感じた。
「今日は、もう帰りましょうか」
「そうだね」
私の疲労困憊の様子を見て、二人は自然と帰ることを提案してくれる。
「そうだ、お前たちが解体した肉は売れないから、持っていけよ。宿で調理してもらえ」
ナザル・ギルド長が言いながら、カウンターの奥から包みを取り出す。そこには、しっかり処理された肉が詰められていた。
「今日は……お肉は……」
思わずためらいがちに口にする。
解体を終えたばかりで、正直食べる気になれない。
「食べるために捌いたから、オーク!」
神斗の優しさぁーー。
「あっ、はーい……」
今は食べる気がしなくても、せっかくの食材を無駄にするわけにはいかない。
「お、そうだ。ウィルヘルム、少し話せるか?」
雰囲気が急に変わった気がする。
何の話なんだろう……。無意識のうちに、ウィルとナザル・ギルド長の顔を交互に見てしまう。
「ええ、構いませんが……長くかかる話でしょうか?」
「わからん」
ナザル・ギルド長が肩をすくめる。
その仕草には、ちょっとした含みがあるようで、どうも軽い話ではなさそうだ。
「では、神斗さん、ヴィヴィと宿へ戻っててもらえますか?」
「わかった」
「先、帰ってるね」
後ろ髪を引かれる思いもあるけれど、今は疲れた!
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こんにちは、作者のヴィオレッタです。
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