第69話 当たり屋ガビルは有名人
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「お金を預けるならギルドか銀行だな。ただ、俺のおすすめはギルドだ」
ナザル・ギルドはゆっくりと髭をさすりながら言った。
受付カウンターには行列ができはじめており、職員が素早く対応している。
職員が「もう! ギルド長、おしゃべりは後にしてください」と焦りが滲んでいる。
「銀行は、戦争や政変で潰れることもあるが、ギルドはどの国にも属していない独立機関だ。それに、どの国にもあるから安心できる」
ナザル・ギルド長は手を軽く振りながら、まぁまぁと職員をなだめる。
「じゃあ、ギルド一択じゃん」
「それでも銀行を選ぶ人がいるのはなぜ?」
「お貴族さまは、冒険者と関わるのを嫌がるからな。だから、ギルドとは別に自分たち用の資産管理場所を作ったのさ」
どの国にもギルドがあるのであれば、これから旅を続けるならギルドに預けるのがよさそうだね。
お金を安全に保管できる場所が必要だ。
「私は冒険者なのでギルドで預ける、でも、半分だけ」
ナザル・ギルド長は「良い判断だ。もし、アレから取り出せない状況の場合、いいと思うぞ」と満足げに頷いた。
アレとは【収納】のことだ。
取り出せない状況って……つまり、意識を失っている時だよね? 考えたくないそんな危険な場面。
【収納】は限りなく便利だが、持ち主が意識を失えば無力になる。
ただの取り出せない箱と化すのだ。
神斗は一先ず全部預けるらしい。
「そういえば、明日は解体実習入れてないよな? 明日はどうするんだ?」
「〖基本行動〗しますよ」
ウィルが淡々と返答する。
基本行動? なんだろう? それってギルドで教わったっけ?
そんな私の表情を読み取ったのか、ウィルが説明してくれる。
「冒険者の知恵みたいなものです。依頼を終えた翌日は基本的に休むのが常識なんです。よっぽどの金の入用の人は別ですが、普通はこうやって英気を養うんです。無理して出歩いて命を落としたら、元も子もありませんからね。薬草採取くらいなら問題ありませんが、上位ランクの冒険者はそもそも報酬の低い依頼は受けませんからね」
「あーなるほど。確かに」
「あとは、武器の手入れも大事だぞ。まぁ遠征依頼であれば、先に依頼受注しておくのもいいと思うぞ」
武器の手入れかぁ……。そういえば、採取用の道具を揃えたいと思っていたんだった。
明日、買い物デーにしようか。
「神斗は、明日どうするの?」
「俺は……訓練かな。できるだけ実践形式で鍛えたいと思ってる」
「え? そうなの? 訓練するんだ?」
神斗は本当に真面目だ。
ウィルと手合わせを頻繁にしているし、筋肉トレーニングも欠かさない。
彼は運命を受け入れ、この世界で生き残るために努力している。
「ヴィヴィオラも一緒に付いてきてよ。薬草とか採取してくれてていいからさ」
そんなこと言われたら、休むなんて言えない……。
討伐した魔物を【収納】に入れて持ち帰りたいらしい。
数少ない私が輝くチャンスだもん。
仲間の役に立てるならそれが一番だ。
「朝一じゃなくていい? 薬草採取用の道具を買いたくて。あ、でも今から道具が買えるなら朝一でも」
「じゃあ、決まりだな」
「あまりランクの高い魔物には手を出すなよ。危険すぎるからな……。そういえば、お前、ボアを狩ったんだったな。うん、神斗の心配はいらんな。が、それでも油断は禁物だぞ」
そうだった。
他のパーティは、数人がかりでようやくボア1匹を倒していたのに対し、ウィルも神斗もそれを単独で仕留めていた。
「そうだ、ボア! ボアで思い出した! あのこと報告しなくちゃ!」
「どうした? 何があったんだ?」
ボアで当たり屋ガビルのことを思い出した。
報告だけはしておかないと。
「いや、大したことじゃないんだけどさ。隣のキリフ領所属の冒険者でさ。ガビルって知ってる?」
「あー、ガビルか。報告は上がってきてる。横取りの常習犯だろ? ギルド内でも問題視されてるんだ」
キリフのギルドだけでなくジゼニアのギルドでも有名なんだね。
まるで疫病のように、彼の悪評は広がっているらしい。
冒険者たちの間で警戒の対象となっているのが感じられる。
「やっぱり、有名なんだ。東の草原で薬草採取をしてる時、怪しい行動していたの」
「何をするつもりなのかは分からないですが、台車に大量の罠を積み込んで運んでいました。もしギルドの正式な依頼であれば問題ないのですが、異様な雰囲気でしたので」
「そうそう、やたらとコソコソして周囲を警戒してたよね」
周囲の気配に敏感すぎるその様子は、まるで何かを隠しているように見えた。
「う~む……。キリフのギルドに聞いておく。ありがとな、お前たちの報告は助かる。実は、こっちの所属冒険者たちもたまに被害に遭っているんだ。ついでに文句も言ってやる」
たまにと言っているが、息巻いている様子から見ると何度も被害を被っているようだ。
「それにしても、初っ端から巻き込まれなくてよかったな」
「いや……、それが、ジゼニアに来る前からすでに巻き込まれてるよ」
「ここに着いたときに渡したボア8匹は、あれはガビルが意図的に誘導してきた動物の一部ですね」
ナザル・ギルド長が静かに腕を組む。
カウンターでは職員たちが忙しなく書類を整理し、報酬の受け渡しを行っている。
「そういえば、あの日、ボアの牙とか革とか持ってきたパーティ多かったのはそういうことか。ボア13匹ほどをぶつけてきたのか?」
「違う、20匹以上の群れをぶつけてきたの」
「あいつ、頭ダイジョブか? 下手しなくても〖死人〗が出るじゃないか」
ナザル・ギルド長は、肩を落としながらも、指先で机をトントンと叩いた。
20匹ものボアを意図的に誘導するなど、単なる悪意では済まされない行為なんだろうね。
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