第65話 チキンチキンはニワトリ風魔物
※□※※□※※□※1行×32文字で執筆中※□※※□※※□※
改行などで見辛くなる時はビューワー設定の調節してください
昼食を終え、腹ごしらえも済んだところで、いよいよチキンチキン討伐の依頼に取り掛かることにした。
冒険者ギルドで見た魔物辞典には、まるで風船のようにふくらんだニワトリが載っていた。
その丸々としたフォルムが奇妙ながらも愛嬌があり、思わず目を奪われる。
魔物じゃなかったら、可愛いのに!
「確か、あの図鑑に載っていた魔物の形は、太ったニワトリみたいだったよな。羽も短めで、重そうな体つきだった」
「ニワトリですか?」
「そうそう、私たちのいた日本ではニワトリって言ってたけど……そっくり。ただ違うところは、こんなに大きくないし、疑卵爆弾を口から吐き飛ばすってところかな」
魔物辞典に記載されていた情報によると、このチキンチキンのサイズは縦横それぞれ1メートルほどもあるらしい。
実際に両手を広げてサイズ感を示してみると、予想以上の大きさに圧倒される。
「そうそう、こんな大きさじゃないと思う。でも実物みたことないしなーー日本のニワトリ」
「この大きさでこの短い翼じゃ、飛べないね」
「ん? 日本のニワトリって飛ぶの?」
神斗は信じられないって顔をしている。
「ニワトリさんが飛ぼうと思えば、飛ぶよ。どっかの神社では夜になると飛んで木の上で寝てるだってさ。でも、ネット情報だからなぁ。本当かどうかわからない」
「でも、確かに木の上の方が安全だからね」
「この世界では魔物がいつ襲ってくるかわからないんだから、木の上で眠ればいいのにね。でも、このチキンチキンの丸々とした体型を見てると、さすがに飛び上がるのは厳しそう……飛ぼうとしても地面から浮くだけで精一杯かも」
「こいつらも魔物だけどね」
「妬けますね……」
「ん?」
「なんでもないです……それより、チキンチキンはあちらですよ」
ウィルが指をさした先には、真っ白なチキンチキンたちの群れがいた。
7羽ほどのチキンチキンが、嘴で地面をコツコツとつつきながら歩いている。
観察していると、1羽のチキンチキンのお尻から卵がポロッと落ちた。
「ヴィヴィ、【鑑定】してみますか?」
「そうだね。【鑑定】」
★チキンチキン Gランク
HP5
MP5
情報少ない……。
特級魔法でもこの情報量なんだーーMP10も使うのに!
「あっ。また卵が……今日の朝食で食べた卵って、もしかしてアレなの?」
「そうです。卵拾いの依頼もありますよ。冒険者ランクではFランク依頼です。簡単なんですが町の外にでる必要があるのでHランク依頼ではないのです」
「また、産んでるよ。1日に1回とかではなさそうだ」
「この卵は他の魔物にとって格好の餌になりますので……思ったほどチキンチキンが増えることはないのですが、たまに間引かないと森から餌を求めて魔物が大量に来ます。ですからたまに間引くの緊急依頼が発生します」
卵拾いの依頼は、低ランク冒険者にとって安定した収入源になっているらしい。
戦闘のリスクが少なく、確実に報酬が得られる点で人気があるようだ。
うん、わかるかも。
やっぱり、収入の安定は大事よね。
「ヴィヴィ、やってみましょうか。向こうにも群れがあるのでカミトさんはあちらをお願いします」
「ウィルヘルムさん、魔物辞典には疑卵は全て吐き出させて倒さないと爆発するって書いてありましたが、吐き出し終えたかを確認する方法はあるんですか?」
「チキンチキンは知能が高くないため、一度疑卵を吐き始めると、持っているものをすべて出し切るまで止まりません。だから、吐かなくなったらもう持っていないと考えていいですよ」
「じゃぁ、吐かなくなったら全部出しきったってことね」
本当に初心者冒険者にもってこいの魔物だ。
だって、特殊な倒し方や戦闘の基礎を学べるし、倒した後の肉の売買まで経験できる。
Gランクの魔物でそこまで強くないから無理なく学べるだもん。
「疑卵は吐きだした方がいいのなら、チキンチキンに直接当てない方がいいよね。よ~し! 初、攻撃魔法……【追尾の矢】!」
この短い魔法名を唱え始め、弓を引く姿勢を整えると、淡い光が手元に集まり、徐々に実体化していく。
まるで神秘的な力が具現化されたかのように、弓と矢が輝きながら宙に浮かんだ。
目の前には、まるで本物のような弓と矢が存在していた。
あぁ、なるほどーーこうするのか。
まるで矢自身が思考を読み取っているように、標的の位置が確かに定まっている気がした。
その感覚が確信ではなく「気がした」としか言えないのは、あまりにも一瞬のことだったからだ。
魔法の発動と同時にすべてが流れるように決まり、考える暇さえないほどだった。
すべてが瞬間的に流れ込み、魔法名を言い終わると同時にに指が離れ矢を放たれる。
眩い光をまとった魔法の矢が、一直線にチキンチキンの足元へと疾走する。
狙い通りの地面に突き刺さると、矢の魔力が爆ぜるように弾け、無数の光の粒となって空気中に溶けて消えていく。
「グワーッ! グワーッ!」
「グワーッ!」
「グワーッ! グワーッ! グワーッ!」
「グワーッ!」
チキンチキンたちは突然の衝撃に驚き、一斉に大きな声で鳴き始める。
「グワーッ! グワーッ! グワーッ!」
「グワーッ! グワーッ!」
「グワーッ! グワーッ! グワーッ!」
羽をばたつかせ、地面を蹴って跳ねるように動きながら、警戒の色を強めていく。
跳ねると言っても地面から2センチぐらいしか、跳ねてないけどね。
大きく羽根を広げ、一気に振り下ろした。
その勢いと同時に、口から疑卵爆弾が次々と吐き出される。
そして間を置くことなく、次から次へと疑卵爆弾が飛んでくる。
ドォン! ドォン! ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!
ドォン! ドォン! ドォン!
ドォン! ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!
地面に炸裂する疑卵爆弾の衝撃音が次々と響く。
「わあああああぁぁっ! 7羽いっぺんだと避けるの厳しい!」
「フフフ、頑張りましょう」
「ひゃぁ!」
ギリギリのところでかわすものの、連続する攻撃に息をつく暇もない。
でも、この疑卵爆弾は土の表面が少し削れるぐらいで威力はそれほどなさそうかも。
ドォン! ドォン!
ドォン!
一つの疑卵を避けたと思った瞬間、斜めから放たれた疑卵が予想外の軌道で飛んできて、そのまま胸元へ直撃する。
「うわあっ! ……あれ? なんともない……?」
衝撃が走るが、痛みは――ない?
確かに一つの疑卵が胸元で爆発したはずだった。
疑卵が爆発した瞬間、目の前に薄く輝くハニカム模様が一瞬だけ現れた。
ドォン!
ドォン!
疑卵が吐き出されなくなった。
全てのチキンチキンがゆっくりと口を閉じ、疑卵の放出を終えたようだ。
「……えっと、終わったのかな?」
飛び交う爆弾の嵐は止まり、草原に静寂が訪れる。
魔物もこっちを見てる。
「「「「「「……」」」」」」
「……いや、こっちを見つめないで」
【★お願い★】
こんにちは、作者のヴィオレッタです。
最後まで目を通していただきありがとうございます。
少しでも 「また読んでやるか」 と思っていただけましたら、
広告の下にある【いいね】や【☆☆☆☆☆】ポイントを入れてくださるとめっちゃ喜びます。
最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。




