第62話 初めての依頼受注
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《キャラバン・ジゼニア3日目ーケルンジリア22日目ー》
「よーし、準備は出来てるか?」
ナザル・ギルド長が厳つい顔にわずかな笑みを浮かべながら問いかけてきた。
「「はいっ!」」
私と神斗は息をそろえて返事をし、思わず背筋を伸ばした。
初めての依頼受注だから、期待と不安が交じり合い、胸の奥で心臓の鼓動がドキドキと速まるのを感じた。
普通に魔物を狩るのと、仕事として狩るのは違うよね!
ナザル・ギルド長が「Gランクだから、あまり気負うなよ」と軽く笑いを交えながら言い、そして続けざまに、「ウィルヘルム、手だしはなしだぞ」としっかりと釘を刺した。
「それで、最初に何を受けるつもりなんだ?」
ナザル・ギルド長が私たちからギルド証を受取ながら問いかける。
昨日、3人で決めていた。
初日は薬草採取とチキンチキン討伐をこなし、翌日は体をしっかりと休め、3日目には解体実習に挑むという計画にした。
「俺とヴィヴィオラは、薬草採取とチキンチキン討伐をそれぞれ受けるよ」
パーティは組むのはダメ、物理的な手助けもダメ、しかし、指示はOK。
そして、同じ方面で活動するのは問題ないらしく、採取や討伐の場所が重なっても規則には触れないようだ。
このルールの曖昧さが、少しだけ心を軽くしてくれる。
やっぱり、初めての依頼。
これは、私にとって初めての〖仕事〗だから。
出だしは肝心、失敗だけは避けたい。
「あぁ、良いんじゃないか。ただ、あんまり力を合わせすぎるなよ。まぁ、相手は弱い魔物だからな、大丈夫だろう」
ナザル・ギルド長のこの言葉は、私を神斗が手伝うなよということだと思う。
でも、その語り口からして、少しは目をつぶるってことなんだろうな。
「初めての依頼、楽しみだぁ」
隣で熟練の冒険者がニコニコとこちらを見てくる。
荒くれ者が多いけど、出会った人達はみんな良い人たち。
あっ、ガビルとその仲間たちは荒くれ者だった!
「この辺で採れる薬草は――っと、ヒール草だな。それを10本1束を2束、報酬は1,000ギリア。チキンチキン討伐は東の草原に多くいる。2羽提出。報酬は2,000ギリアだな。依頼期限は今日、6回目の鐘が鳴る18時までだ」
「おおぉ」
今日の依頼の報酬が、それぞれ3,000ギリアになる。
お試しGランク依頼だけで!
確か平民4人家族の一月の生活費は金貨1枚、10,000ギリアだから、結構な稼ぎかも!
でも、そこは家無し冒険者だから、宿とか外食費とかでお金はかかるのでもっと必要だ。
ウィルから「一泊500ギリア以下の宿には泊まらないでください」って言ってたから。
「薬草採取って、意外と報酬高いね。これだけで生活できちゃう」
「それだけ大変ってことさ。それと冒険者のプライドが邪魔してな。気が向いた時しか採ってこない」
「確かに俺もそう思うわ。薬草採取なんて、いかにも初心者の仕事って感じだ」
カウンターの上に置かれた光沢のある珠に手を置くよう促されると、その冷たい感触が指先に広がった。
珠は冷たく、しんと静まり返っており、特に変化は見られない。
それを確認したナザル・ギルド長は、私にギルド証のタグを受付カウンターのくぼみに挿し込むように指示する。
ギルド証がくぼみに差し込まれた瞬間、魔力が流れるように光が走り、カウンター内の重厚な本のページがまるで見えない手にめくられるかのように、ゆっくりと動き始めた。
「どうなってるのアレ?」
「凄いな。異世界って……」
依頼票の番号を、その開いたページに書き込み、受注が正式に完了した。
「無理せず、気をつけてな」
「「行ってきます!」」
「……良い子たちだな」
―・―・―・―・―・―・―
ジゼニアの門番にギルド証と滞在証を提示して、不思議な光を放つ珠に手を触れる。
門の通過を許可されると目の前にはレンギア王国キリフ領の草原が広がった。
初めての依頼を祝福するかのように、空は雲一つない青空だった。
心地よい風が頬を撫で、周囲には草原の緑が眩しく広がっている。
「澄んだ空気が気持ちいい!」
魔力を練るために集中した数時間、そしてその後のゴロゴロタイム。
ついでに神斗の服を見に店へ足を運び、帰ってきてからまたゴロゴロするーーそんな贅沢な1日を思い返す。
目的地の東の草原までは、街道をのんびりと1時間ほど歩く道のりだ。
「平和だよな~。魔王ってなんだったんだろ、あっ、違う。大陸統一だったっけ」
「女神様がそそのかしたんだよ。あの王様にお告げという名の!」
「もし、ただの夢だったら、笑っちゃうよな」
「前回のお告げが国土四分の一なくなった戦争でしたので、今回のお告げも単なる夢でしょう」
「俺たちも国民も、国王だって夢に振り回されたけどさ……俺はその夢に感謝してるよ」
う~ん。
前回のお告げで始めた戦争についてはわからないけど、実際、女神様はいる。
王様のお告げが本当なら、争い系のお告げしかしていない。
女神様は何がしたいのだろう?
そんな話をしながら歩いているうちに、目の前には広がる目的地、東の草原が現れた。
街道の石畳が途切れる先には、青々としたひざ下ほどの草が一面に広がる。
「この広い草原の中から薬草を探すのか……」
「俺はめちゃくちゃ大変だ……」
私は【探索】が使えるから、多分サクッと終わるはず。
まだ、【探索】の使い方はわからないけど……。
魔法といえば、【光源】の自分に付いてくる発光体で遊んだ後、部屋のあらゆるものを【浄化】しまくった。
めっちゃ便利!
「まずはヒール草から探しつつ、チキンチキンがいたら討伐という流れにしましょう。ヴィヴィ、ヒール草の特徴について調べましたか?」
「はい! ギルドの薬草辞典で調べました。えっと、葉はギザギザで先端が赤色。茎を傷つけると赤い液体が出る。花が咲いてしまったヒール草は効能がないので採っちゃダメだとか。そんなところです!」
「それと、薬草は全部取っちゃダメって言ってたよな」
「薬草は、栽培ができないので、自然に増えてもらうしかないのです」
「では、神斗さんは地道に。ヴィヴィは【探索】を使ってみましょうか」
神斗は短く「了解」と返事をし、少し離れた場所へ向かい、ヒール草を探し始めた。
【★お願い★】
こんにちは、作者のヴィオレッタです。
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