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第59話 魔力はギュッとしてポン

※□※※□※※□※1行×32文字で執筆中※□※※□※※□※

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「ね、ウィル。私ね、魔法学びたい!」

 

 私の一言で、依頼を受けるのを止めて宿に向かうことにした。

 ジゼニアの宿は、円形の天幕を貸切るか、他の宿泊客と雑魚寝するかのどちらからしい。

 ジゼニアの外の土壁近くに、天幕を張って宿代を浮かす人も見られる。

 雑魚寝でも構わなかったんだけど、せっかくだから貸切ることにした。


「わぁ、広い! それにちゃんとベッドがある!」


 シングルベッドが3つあり、丸テーブルには椅子が4脚備わっている。

 元々は4人部屋だったらしいが、広々としている。

 その広さの分だけ、お値段も少し高めだ。

 ベッド……これは、端のベッドがいい! 絶対に真ん中になる!

 私は引き寄せられるような振りをして、右端のベッドへ歩いて行ったが「ヴィヴィは真ん中のベッドを使用してください」と言われ、結局真ん中に決まった。


「もう! 一人部屋とかに今からでも変更しない?」


 端のベッドを取られてしまったので、不満が口からこぼれる。


「さっき、宿の人が『おすすめしません』って言ってただろう?」

「言ってた」

「一人部屋は危ないですよ。先日、刃傷沙汰になったと」

「言ってた」

「じゃあ、真ん中しかないな」

「いや、せめて端にして」


「ダメです」

「ダメだって」


 ふぇ~ん!

 君たちはいいよね?

 着替えるときに恥ずかしげもなく裸になれるし。

 少し、眼福だけど……。

 私はコソコソと着替えないといけないし、2人が見ていないとわかっていてもやっぱり気になるんだもん。


「ヴィヴィオラ、ほら、あそこに小部屋みたいなのがあるから、使ってみたら?」


 神斗は私の一番の悩みに気づいたのか、部屋の中にある上部があいている試着室のような場所をさす。


「あれは、浴室ですね。シャワーが設置されています。魔石が内部に設置してあるので魔力を流せば使えます」

「蛇腹の衝立みたいになってる。普段は開けておけるんだ」

「わかった、真ん中のベッドでいい」


 ふわりとベッドにダイブし、その柔らかさに包まれる。

 2人が私のために言っているのだから……。

 仕方がないか、と心の中でため息をついた。


「ウィル、魔法……教えてくれる?」

「もちろん、いいですよ」


 ようやく魔法が使える! やっぱり魔法がなくっちゃ!


「そうですね、魔法は魔力の練り方を学びさえすれば、あとはスキルを神殿で設定するだけなので簡単です。ですから、魔力を練習しましょう」

「魔力の練り方? お願いします!」


 ウィルが「まず、ベッドの上、仰向けになってください」と指示するので、素直に従い、ふわりとベッドの上で向きをかえた。

 6日も歩き続けていたので目を閉じるとすぐに眠くなっちゃう。

 

「かわいいですね、ヴィヴィは」


 かわいいなんて恥ずかしいセリフにどうしたらいいのかわからすに目を閉じたままにする。

 髪をさわるウィルヘルムが続けて、優しく問いかける。

 

「魔法はどうします?」

「そうだ、魔法!」


 ウィルがクックックッと笑う。

 そんなに面白かった? もう!

 

「俺も見てていいですか?」


 興味津々な神斗に「どうぞ」とウィルは快く承諾した。

 

「では、はじめましょうか。ヴィヴィ、まずはリラックスしてください。そして、呼吸を整えましょう」


 彼の言葉に従い、深呼吸を始める。

 胸が上下にゆっくりと動くのがわかる。


「次に、私がおなかに直接手を当てますので、そこを集中してみてください」


 直接!? 緊張した指でシャツをめくる。

 ウィルはゆっくりと大きな手を私のへその上あたりにおいた。

 

「あ、暖かい……これが魔力?」

「フフフ、まだですよ」


 ブファ!と神斗が笑う。

 手が温かいだけだった……そんなに笑うことある!?

 笑うだけの心の余裕があると考えればいいことだ、うん。

 

「私の魔力を少し流しますので、感じてみてください」


 うんんん?

 魔力を流す?

 どういう感じだろう?


「まずは目を閉じて、意識を集中ですよ」


 ウィルの柔らかい声が部屋に響く。

 しばらくすると体の奥底からふわりと暖かい感覚が広がってくるのを感じた。

 

「このジワジワと広がってくる感じのやつ?」

「感じ方は人それぞれですが、相性の良さや色々な要素が関係しているみたいです」

「じゃあ、俺だとどう?」


 神斗が私の横に腰を下ろし、手をそっと私のお腹に置いて、魔力を流し始める。

 

「あだだだだぁーー!」


 まるで電気が身体を貫いたかのような鋭い痛みが走り、その瞬間に身体が凍りついたかのように固まる。


「魔力流しすぎですよ。もっと少しで」

「頼むよぉ。神斗……もう少し優しく」


 苦しげに呟く私に「ごめん、ごめん」謝りながら、神斗は再度慎重に魔力を流し始める。


「ピ」

「ピ?」

「うーん、ちょっとピッ、ピリッとするかな」

「私の方が相性がよさそうなので、私が続けますね」


 先生が再度交代。

 

「次に私の魔力を見てください」


 見るってどういうこと?

 難しいな……目で見るのか、心で感じるのか。


「目を閉じて、私が手を置いている中心に意識を集中してみてください」


 私は目を閉じ、ウィルの手の中心から放たれる波状の魔力をイメージする。

 

 目を閉じているのに黄金の微細な粒子が輝いているのが浮かび上がる。

 それは、まるで黄金の草原が広がっているかのようだ。

 これがウィルの魔力なのかな? とっても綺麗だ。

 私の魔力は何色なのだろう?

 ウィルの魔力の波が集まる先には、何かが存在しているのが感じ取れる。

 その何かは、金色で少し白っぽい金色の雫…ポタ、ポタと静かに落ちては、小さな波紋を生み出している。

 

「見つけましたか?」

「なんか、色の違う……雫みたいなのが見える」

「それです、溢れてくるイメージを」

「うーん難しいな…ちゃんとできてるのかな?」

「大丈夫ですよ、できています。今度はそのイメージを手に持っていきましょう」

「手に!?」


 驚いて目を見開き、上半身を起こした。

 手に持っていくって、どうしたらいいのかわからない!

 

「ちょっと神斗、やってみて?」

「俺?」


 神斗が手のひらに魔力を集中させると、その中心に吸い込まれるようにして球体が現れた。

 眩しい光が手の中で踊るかのように揺らめく。

 

「青い……、本当に手からこんな綺麗な光が出るんだ」


 それは群青色だ。

 夜空のような深い色合いが神秘的に輝き、見る者を引き込むようだった。

 

「人それぞれ魔力には色があります」

「へぇ…やっぱりあの金色が魔力なんだ。ウィルの魔力は金色なんだね。私の魔力も白っぽい金色」


 私もあの綺麗な色を手の中で出して見たい!


「結局、神斗はどんな感じでだしたの?」

「う~ん、そうだな……ギュッとしてポンかな?」

「ギュッとしてポン?」

「そう、ギュッとしてポン」


 自分の手のひらをじっくりと見つめる。

 ギュッとしてポンーー。


「穴が開きそうですね」

「あとちょっとで、なんとなくできそうな気がする……ギュッとしてる!」


 波紋が手のひらの中心に集まる感覚がする。

 要はギュッって握って固めれば良いってことでしょ?

 手のひらに、かすかな光が集まるのが見えた。

 そして、神斗のよりもかなり小さい球体になりかけのものができたけど、圧縮がいまいちだったのかパシャンと霧散した。

 

「ちょっとできた!」

「できてる!」

「お上手でした」


 いやー、先生たちが褒め上手過ぎない? 

 良い先生達でラッキーだな。


「昼食まで頑張りましょう」

「まだ、9時だよ! あと3時間も?」


 そのあと、ウィルの指導のもと、1時間みっちりと魔力の練習を続けていたことだけは覚えている。

 しかし、その後はすっかり記憶が曖昧で、どんな風に練習を終えたのかは覚えていない……。

 疲労が蓄積し、意識がぼんやりとしていったんだと思う。

 昼の鐘の音が鳴り響いたとき、目が覚めたけど目が開けるのが怖かった。

 教えてもらっておきながら眠るってなんなの!?

 自分のバカ!!

 外からは賑やかな人々の笑い声や話し声が聞こえてくる。

 チラッと片目を開けて様子をうかがうとーー。

 バチッと私のベッドに頬杖をついている神斗と目が合ってしまい、思わず息を飲んだ。

 その距離はわずか30センチ……、目を逸らすこともできず、起きたことを誤魔化せない……。


「寝ちゃってた……ごめんね」

「やはり連続で6日間の移動は体に負担が大きかったですね……」

「やっぱり、ヴィヴィオラには一人部屋は危なっかしいから、みんなと一緒にいる方が安心だよ。こんなにすぐに寝ちゃうんだから」


 本当に返す言葉もございません……。

【★お願い★】

こんにちは、作者のヴィオレッタです。

最後まで目を通していただきありがとうございます。

少しでも 「また読んでやるか」 と思っていただけましたら、

広告の下にある【いいね】や【☆☆☆☆☆】ポイントを入れてくださるとめっちゃ喜びます。

最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。

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