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第52話 今日の晩御飯はウサギだよ~

※□※※□※※□※1行×32文字で執筆中※□※※□※※□※

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《レンギア王国19日目ーケルンジリア19日目ー》


「アレを見てください」


 ウィルの指さす方向を見ると、ウサギが赤透明なゼリー状の物質に包み込まれているのが見えた。

 ウサギは窒息寸前で激しくもがいていたが、次第に動きが鈍くなり、大人しくなっていった。

 するとゼリー状の物質がゴボゴボと不気味な音を立て、ウサギの柔らかな毛皮をゆっくりと溶かし始めた。


「うわぁぁぁぁぁぁ……グロ……スライム、まじで怖っ」

「あれは通常のスライムではなく、上位種で酸が強いタイプ見たいですね。溶かすスピードが段違いです」

「ヴィヴィオラ、あれは俺が倒すよ」


 神斗が素早い動きで近づくと剣を振り、ゼリーの中に閉じ込められたウサギと共に薙ぎ払った。

 赤透明なゼリーは形を保てなくなり、地面にべちょっと広がる。


「おぉぉ……ウサギちゃん……」


 ウサギの首は半ばまで切れており、その姿はさらにおぞましさがパワーアップした。

 毛皮がほぼ溶けたウサギにウィルが慎重に水をかけてから持ち上げた。


「夜はこれを食べましょう」

「おいしそうですね」

「えぇぇぇ!? 美味しそう? 今の今、表面をドロドロにされてたやつだよ?」


 ウィルが持ち上げたウサギの首は、まるで壊れた人形のように不自然な角度で曲がっており、恨めしそうにがん開きした目がこちらをじっと見ている。

 はわぁぁぁ、怖い。


「逆に、スライムが穴という穴から入り込み、汚れている部分を優先的に溶かして掃除してくれるので、実際には綺麗ですよ」

「ん~、あー、そういうことか。食べ残しや排泄物が全くないと」

「な、なるほどー? 綺麗なら食べれるかな?」


 うん、それなら心置きなく美味しく頂ける、ね……?


「スライムって便利だなぁ。魔物って使役できるといいのに」

「できますよ。ヴィヴィの魔属性魔法【友魂の詩(テイム)】がそれです」

「私の魔法!?」

「でも、1体しか【友魂の詩(テイム)】できませんので慎重に選ばなくてはいけません」

「そっかー! 残念! 1体ならヴィヴィオラの守りになるような魔物を選びたいよな」


 ウィルも「そうですね。それがいいでしょう」と同意している。

 これって、自分専用の戦うペットを持つことになるのかな?

 それって、ものすごくラッキーなことじゃない?

 だけど、毎日の食事の下処理をしてくれると思ってるスライムもとても捨てがたいんだよね。


「私、スライムでもいいかもしれない!」

「どうしてです?」

「えぇと……、魔物の下処理がちょっと怖くて……」


 日本でも、魚を捌けなくてスーパーマーケットでは切り身しか買ったことがない。

 間違えた、刺身しか買ったことがない。


「俺がやるよ! 下処理だろうが解体だろうが」

「私も解体処理をしますよ」


 そんなに魔物を解体するのが楽しいの?

 道すがら倒した魔物は、ウィルの【収納(アイテムボックス)】に入れてある。

 どっちみち、食べるには解体しないといけないからね……。


「それに、魔物の解体はギルドに頼めばやってもらえます。だから無理に自分でやらなくても大丈夫ですよ」

「ちゃんと、【友魂の詩(テイム)】する魔物は慎重に選ばないと!」

「そう?」

「どのみち【友魂の詩(テイム)】も設定しないと使えません。ジゼニアには神殿があるのでしっかり設定しましょう」


 ウィルに「魔法の設定ってどういうこと?」と聞いたけど、「神殿でゆっくりお教えします」と言われてしまい、モヤモヤするー。


 先ほどのウサギは、血を抜きしながら歩くことになった。

 剣鞘の部分にロープでウサギを括りつけ、ポタポタと血を垂らしながら歩いている神斗。

 ウサギの首はブランブランと揺れている。

 残酷だけど、いっそ切り落としてしまえばいいのに……。

 振り向くたびに目が合うのよ、ウサギちゃんと。


「神斗、なかなか頼もしいね……。私も頑張らなくっちゃ……」

「日本に帰らないって決めたから、腹を括った」

「帰れないじゃなくて、『帰らない』なんだ」

「ヴィヴィオラを見てるとさ、どうも俺も他の3人も日本に帰れないんじゃないかって思うんだ」


 なんか鋭い。

 日本では死んでるんだよね……私たち。


「ほら、私、こんな姿だし……」

「それなんだよ。神様? がさぁ、わざわざ身体を作り変えるってことは、もう戻れないって暗に言ってるのかなぁと思うんだ。例えば5人仲良かったら、一人だけ日本に戻れないなんて酷くない?」

「まぁ、そうね」

「召喚は、一方通行ですね。もう、戻れないと思った方がいいでしょう。ヴィヴィは私がいるから、頑張らなくてもいいんですよ。いつでも私を頼ってください」


 ウィルが私の顔をじっと覗き込んできた。

 彼の目は真剣そのものだったが、私の中にはもどかしさが残る。

 

「うーん……でも、いつまでも頼ってばかりだと、何か困ることがあるかも」

「何が困るのです? 私はいつも傍にいます」

「私はこの世界でやりたいことがたくさんあるから、いつでもいると思うなウィルと神斗!」


 私の宣言にウィルは笑って、「なんですかそれは」と言った。



ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー



 ごめんね!!

 心の中で謝りながら、弓矢で倒れたウサギの首を狙ってダガーを振り下ろす。

 ザクッ!

 これでようやく1匹目のウサギを仕留めた。

 神斗は、8匹倒している。


「倒しすぎじゃない?」

「ただ飯ぐらいになるのはいけないから」

「……だよね、私もお金出してない」


 成人しているのに……恥ずかしい。


「今気づいたけど、このウサギ、角が生えてる」

「本当だね。角の長さがまちまちだ」


 スライムから奪い取ったウサギと、私が倒した1匹のウサギを並べてみる。

 スライムから奪ったウサギには1センチぐらいの突起が、私が倒したウサギは触らないとわからないぐらい小さな角。


「これはホーンラビットと呼ばれる魔物ですね」

「ホーン、なるほど……その名の通り、角が生えている?」

「そうです。普通の動物が魔物化すると、角が生えると同時に凶暴さが増します。最終的にはおよそ15センチの角になります」


 可愛いウサギさ~んって近寄ると、その角で貫かれてしまうことがあるらしい。

 流石に子供たちには角が生えている動物はダメと教えているらしいのでそんな子はいないらしいが、この触らないとわからないタイプは本当に侮れない。


「一度魔物化したら、もう元には戻らないんです」

「じゃあ、美味しく食べよう」

「食べることばっかりじゃない!」

「ヴィヴィオラ、またホーンラビットが出てきたよ!」


 弓を引いて、角の生えているホーンラビットの下、人間でいう眉間を狙って矢を放つ。

 

 ピギャッ! ピッ! ピ……。

 

 当たった!!

 まぁ、狙った通りには当たらないんだけどね……。

 でも、矢は角ウサギの身体を貫いている。

 ホーンラビットの身体が反応してピクピクと震えたが、すぐに動かなくなった。


 ピロロン♪


 ホーンラビットがバタッと倒れると同時に、ピロロンと何かの音が響いた。

 ん? 電子音?

 何の音だろう?

 ウィルも神斗も全く反応しない。

 もしかして、私だけに聞こえてるの!?

【★お願い★】

こんにちは、作者のヴィオレッタです。

最後まで目を通していただきありがとうございます。

少しでも 「また読んでやるか」 と思っていただけましたら、

広告の下にある【いいね】や【☆☆☆☆☆】ポイントを入れてくださるとめっちゃ喜びます。

最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。

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