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第46話 生き残るための残酷な訓練

※□※※□※※□※1行×32文字で執筆中※□※※□※※□※

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 本来、街道を歩くのが安全なのだが、今は何があるかわからない状況のため、ウィルが判断し、街道と並行して林の中を歩くことに決めたようだ。

林の中は木々が生い茂っていて見通しが悪いが、逆に言えば街道からも林の中で歩いている人を見つけにくい。

 逃亡者の私たちには、丁度よいよね。

 ウィルが先頭を、次いで私がその後ろに、そして最後に神斗君が続く形で歩いていく。


「ヴィヴィオラさんは、その、大丈夫だった?」

「え? 何が?」

「あの……気を失ってたでしょ?」


 あぁ、勇者認定式の王様のことかーー。


「私はそのぉ、ショックで少し寝込んだんだよ……。神斗君は大丈夫だった? 人が目の前で殺されてしまったんだし……」


 でもなぜか、私が寝込んだのは、ほんの一昼夜ぐらいだったんだよね。

 自分でも、どうしてこんなに早く回復できたのか不思議だなと思う。

 殺人を目撃したショックが、その程度で済んだ自分に対して、逆にショックを受けそう。


「…………」


 神斗君は、少し口を閉ざした。

 やっぱり、大丈夫じゃなかったよね……。


「平気ではないですって、正直に言えたら良かったんですが……。王様が嫌な奴でも人だし。でもーー。実は、俺はもう、……100人ほどの人を殺してしまっているんです……」

「はい? えぇ!?」


 ちょっと待って?

 神斗君は今なんて言ったの?

 私の耳が間違っていなければ、100人?

 歩み進めていた足が止まった。

 急に止まった私に、後ろを歩いていた神斗君が軽くぶつかった。


「今、100人って言った??」

「そうです……100人ほど……殺しました」


 人を殺した?

 100人?

 一体、何を言っているの?

 神斗君は自分の手を見つめながら、「少し慣れてしまった」と悲しげに笑った。

 ウィルは私が止まったことに気づき、「ヴィヴィ、どうしましたか?」とこちらに歩いてくる。


「100人は主に犯罪者だったらしいです。あと、奴隷とかもいました……。その奴隷の中には、自分よりも小さい子供や女性も含まれていました……」


 犯罪者じゃない、小さ……い……子供も女性も……。

 胸が締め付けられるような痛みを感じた。

 まるで心臓が鉛の塊になったようだ。


「俺は訓練を拒否したんですが、その人たちを他の騎士たちが瀕死状態にまで痛めつけて、『〖勇者の慈悲〗を与えなければ苦しみが続くだけです』と言われ、仕方なく……。今でもどうしたらよかったのかわからない……」


 神斗君はその言葉を絞り出すように話し、その顔には深い苦悩の色が浮かんでいた。

 その話を聞いているだけで、私は吐き気を感じた。

 私はどうやって神斗君を慰めたらいいのか、全くわからなかった。

 言葉が見つからないまま、ただ彼の話を黙って聞くしかなかった。


「訓練の一環です。特に召喚された方の国は平和だと聞いていたので、慣らすためでしょう。私たちの世界では日常的に盗賊や暗殺者、人型の魔物が存在していますので、いざというときに彼らに対してひるんではいけませんから。このような危険な状況に対処できるようにでしょう」


 ウィルは悲しげに、目を伏せながら説明した。

 そうか、確かにそうだよね……。

 生き延びるために、命を守るために。

 自分に剣を向ける敵に対して、ひるんではいけない。

 それがこの世界で生きるための鉄則なんだ。

 城の騎士たちは、神斗君のことを思って強引な訓練を課したのだ……。

 本当はそんな残酷な現実を受け入れたくなかったが、この世界では人が襲い掛かってくるのが日常的なことであり、それを避けることはできないと頭では理解している。

 

「あれ、ウィル。もしかして私の訓練にも同じような指示があったーー」

「はい、指示はありました。しかし、私はヴィヴィには、させたくありませんでした」


 私は小さな声で「ありがとう……」と呟いた。

 城に居た時、神斗君が疲れているように見えたが、その原因が残酷な訓練であるとは思いもしなかった。

 その真実を知った今、胸が痛む。

 その間、私はのんきに、優雅にティータイムを楽しんでいたことを思い出し、強い自己嫌悪に陥った。

 神斗君はその厳しい訓練のおかげで、あの場で放心せずに逃げることができたのだろうか?

 もしそうだとしたら、その訓練には意味があったのだろうが、その代償はあまりに大き過ぎる……。

 でも、神斗君は一人で乗り越えてきたんだ。


「しかし、通常の兵士訓練では行いません。国内の派遣時に先輩兵士と共に戦いながら実地で慣らしていくのが普通です」

「でも、俺の訓練を担当していた騎士たちは、普段から試し切りと称して殺していたみたいでしたよ」

「はぁ!? 酷すぎる!」


 さっきの、騎士の彼らは〖神斗君の事を思って〗はナシ! ナシ! ナーシ!!

 ただの残酷な行為でしかないじゃない!

 ろくでもない騎士ばっかりじゃん!


「……元・副団長……? 騎士とは思えないクズがいっぱいですね」

「形だけでしたからね、副団長は……」


 それでも、申し訳ないとウィルは首を垂れた。


「そんな事をしそうなのは、第1騎士団でしょうね」

「第1騎士団って、第1王子管轄の?」

「俺の訓練を主に担当していたのもその連中です」

「あの王子のかぁ。手段を選ばない所はそっくり」


 う……ん。

 第1騎士団のしている残酷なことは、良くないこと。

 でも、これから先、自分も人を相手にしなければならない状況が訪れることが容易に想像できる。

 

「もしも殺されそうになったら、私も、できるのかな……」


 当然のことながら、地球、日本にいた頃は人を殺すなんて考えたこともなかった。

 平々凡々な生活を送っていたのだから。

 この異世界に来てからは、魔物を倒すことは考えていたが、人を相手にするなんてまったく考えていなかった。

 

「そうですね、まずは魔物から…倒してみましょう。それが人助けにもなりますし、同時にお金も稼ぐことができますから。魔物を倒すことで得られる報酬は大きいです」

「ヴィヴィオラさんは無理しなくていいよ。魔物だけでもいいんじゃない?」

「そうはいかないよ。いつでも誰かに守ってもらえるわけじゃないしーー」

「俺とロング副団長がいれば大丈夫だよ」


 でも、いつでもどこでも一緒に生きていけるとは限らない。

 現実は予測不可能で、いつ何が起こるか分からないから。

 人生ってそんなものでしょう?

 今回は、神斗君とバラバラになったけど無事に再会することができた。

 それはラッキーで運が味方してくれたけれど、次回も同じようにうまくいくとは限らない。

 その場合は、自分自身の力で切り開くしかないはず。

 人を殺すような状況かもしれないんだ……。


「私と神斗さんがいれば大丈夫でしょう。とは言っても万が一もありますから。心構えからにしましょう。まずは、魔物をしっかり倒すことから頑張ればいいのです」

「そうだね! できることからしないと」

「そうだ! 魔物を売るには、ギルドに登録が必要なんだっけ?」


 ウィルは「えぇ」と頷く。

 ようやく冒険者ギルドに登録できる。

 神斗君の目がキラキラと輝いているのを見て、彼は強いなと思った。

 異世界といえば? の一つに挙げられる冒険者ギルドにワクワクしているみたいだ。

 もちろん、私も!

 でも……ギルドに登録することで私たちの居場所がバレないかな?

 おっとっと!

 木の根に足を引っ掛けてしまい、危うく転びそうになる。

 その瞬間、神斗君が素早く私の腕を掴んで支えてくれた。


「やっぱ、魔物討伐、無理じゃない? 運動神経悪そうだよ」

「大丈夫! 大丈夫! でも、本当の私の運動は苦手だったよ……」


 やっぱり、林の中は足元が不安定で歩きにくい。

【★大切なお願い★】

こんにちは、配信者のヴィオレッタです。

最後まで目を通していただきありがとうございます。


少しでも

「また読んでやるか」

と思っていただけましたら、


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最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。

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