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第42話 南の野営場と不思議なリュック

※□※※□※※□※1行×32文字で執筆中※□※※□※※□※

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 道なき道を慎重に歩いていると、遠くにぼんやりとした光が揺れているのが見えてきた。

 一歩一歩進むごとに、その光は徐々に明るさを増し、やがてそれが冒険者たちが集う大きな焚火だったことがわかった。

 冒険者たちは火の周りに円を描くように座り、パーティ毎に談笑している。

 夜も更けているにもかかわらず、焚火の周りは笑い声や歌声が絶えず、活気に満ち溢れていた。

 ここで夜を明かす冒険者たちは、明日の朝には王都へ戻る予定であり、依頼完了しているのかリラックスしているようだ。


「神斗君はいるかな……」


 いて! お願い!

 冒険者たちのパーティの間を縫うように歩きながら、懸命に探す。

 ウィルは、落ち着ける場所を確保しに行った。


「お嬢さん一人かい? 一緒にどうだい?」

「また、女を誘う! もう! これ以上はダメだから! あっち行って! ーーあ、あんた相手にもされてないじゃん」


 ここにもいない。


「安いよ! 安いよ! HP回復ポーション。いいやつだよ。ホラ色濃いだろう?」

「嘘つけ! お前花の絞り汁混ぜただろ!」


 ここにも。


「アハハ! お前あそこでコケるなんてな! バカだな!」

「スライム踏んだんだよ! ンフフ! なんでいつもスライムが転がってるんだ。アハハ!」

「スライム転倒の呪いだよ。アハハ。もっと飲め飲め!」


 いないーー。


 焚火の周りを一周回ってしまった。


「ヴィヴィ、神斗さんはいましたか?」

「ううん……。いない」


 焚火用の枝がたくさん積み重ねられている場所から、ウィルが木束を抱えて戻ってきた。

 毎夜、ここには多くの冒険者が集まり一夜を過ごすため、使い切れなかった焚火用の木枝を置く専用の場所があるんだって。

 夜遅くに到着した冒険者たちが、焚火のために木を集める手間を省けるようにと、なんて素敵なルールがあるんだ。

 ルールは冒険者ギルドが定めているらしい。


「あの端の方に加わりましょう」

「野営もこれだけ人がいれば怖くなさそうだね」


 ウィルは周囲の冒険者たちの様子を見回し、トラブルが起きなさそうなパーティの近くを指し示した。

 スッとその野営場の端に加わり場所を確保する。

 少し中心から離れていたが、大きな木が生えているため周囲を見張る箇所が少なくてよさそう。

 ウィルは野営に慣れているらしく、手際よく地面に転がっている石を取り除き、背中に背負っていたリュックから厚さ2センチほどの敷物を取り出して地面に広げた。

 次にクッションが2個、モゾッとでてきた。

 あのリュックから……。

 やはり、リュックの容量バグってない?

 そーだよね! 隣のパーティの人達もビックリしているじゃない!


「疲れたでしょう? さぁ、座って靴を脱いでください」


 私は「あ、ありがとうございます」とお礼を言って端っこにちょこんと腰を下ろさせてもらった。

 身体の大きなウィルは、ドカッと重みをかけて空いている場所に座り込むと、再びリュックの中に手を入れた。

 リュックの中から2枚の毛布を取り出し、肩と膝にそっと掛けてくれた。

 モコモコと毛布に包まれている冒険者は私だけだなぁ。

 今度はケトルがでてきた……。

 コップ……。

 茶葉……。

 皿……。

 クッキー……。

 そういえば昨日買ったものもすべて入っているんだよね、私何も持っていないや。

 なんだろう、あの不思議リュック4次元ポケットなのかな。

 気になりすぎる……。


「ウィル、ちょっと聞いていい? 前から気になってたんですけど、そのリュック、何?」

「これです?」

「それ!」

「これはーー、アイテムバッグです」

「アイテムバッグ!?」

「たくさん入るでしょう? 便利ですよね」


 隣のパーティの5人は、私とウィルの会話を聞いていたのか、首を振っている。

 え? アイテムバッグじゃないの?


「これがアイテムバッグ?」

「えぇ。そうですよ。ドラゴン10体ぐらいは入ります」

「へぇ~、凄い。……ドラゴン。この世界にいるんだ、ドラゴン……」


 隣のパーティは更に首を振っている。

 アイテムバッグについてなのか、ドラゴンについてなのか、はたまた別の事なのか、これ以上聞くの怖いからやめておこう。


 ウィルは中央の焚火から火種をもらってきて、自分たちの場所に小さな焚火を丁寧に作り上げた。

 赤く燃える炎があたりを照らし始める。

 持っていたケトルを焚火の上に置き、湯を沸かし始めた。

 湯が沸騰すると、ウィルは手際よく茶葉をケトルに入れる。

 ウィルの手慣れた動きを見て、彼がこれまでずっと一人で野営の準備をしてきたのだろうと思い、少し胸が痛んだ。


「さぁ、明日の為に英気を養いましょう」


 英気を養うためにお肉とかではなくてスイーツだなんて!

 

「……野外でこんなおいしいお茶が飲めるなんて最高!」

「そう言ってもらえて嬉しいです」

 

 やぁー、笑顔が眩しすぎる。

 甘い……クッキーが甘いんだから!

 くっ、ウィルさえ居ればもうどこでも幸せになれそう。

 ウィルのおかげで少し元気がでた。

 この場所で神斗君に会えると強く信じていた。

 しかし、今のところ神斗君の姿は見当たらず、私の心は少し沈んでいた。

 神斗君はまだ王都にいるのかもしれないし、あるいは自分が昨日ここに来なかったために、どこか別の場所へ移動してしまったのかもしれない。


「大丈夫ですよ。会えます」

「そうかな……」

「神斗さんは、約束を守らない人ではないでしょう?」


 夜がさらに更けていくと、周囲の冒険者たちも徐々に静まり返り、彼らの寝息が聞こえてくるほど穏やかな時間が流れ始めた。

 交互におきて監視するのが冒険者のルールらしいので、まずは私が起きて寝ずの番をすることを提案した。

 木を背にして座り込みウィルは目をつぶった。

 これからどうすればいいのかな?

 ここで待つっていつまで待てばいいのか?

 あんなに早く認定式と出立式があるなんて思わないじゃん。

 初めの話では数か月後だったよね。

 国を出ようと、暖かい国をめざそうとしか決めていないのが悔やまれる。

 ここで出会わなければ、もう会えないだろうね。

 焚火の炎を明かりに、膝の上に地図を広げ、持っていた紅茶を一口飲んだ。

 夜が深まるにつれて、各冒険者パーティの寝ずの番の人たちだけが焚火を囲み、火の揺らめきをじっと見つめるというシュールな光景が広がっていた。

 初めはキョロキョロと周囲を見回していたが、近くの寝ずの番の人と目が合うと、その人がウィンクしてこちらに近づいて来そうだったため、慌ててウィルに抱き着いた。

 ウィルはまだ深い眠りについていなかったようで、ギュッと抱きしめてくれた。

 そのため、寝ずの番の冒険者は諦めて腰を下ろした。

 ウィルの腕の中から抜け出すのには苦労はしたけどね。

 それからは静かなものだ。

 時折、手元の枝を焚火の中に投げ入れる。

 このまま時間が過ぎていくのかなと焚火を見守り続けた。

【★大切なお願い★】

こんにちは、配信者のヴィオレッタです。

最後まで目を通していただきありがとうございます。


少しでも

「また読んでやるか」

と思っていただけましたら、


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最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。

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