第41話 地下水路の管理ギルド
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「これを見える位置に持つのですよ」
別れ際に、カホーさんから貰ったものは、B5用紙ぐらいの薄い紙で黒いマークがサインされている
なんだろう、この黒い紙……。
何かの符号か、それとも暗号か。
しかも、持っていると破れそう、あっ、破れた。
薄い紙は脆く、歩く速度で起こる風があたっただけで裂けた。
こんな薄い紙で大丈夫なのかな。
「ヴィヴィ、よそ見すると危ないですよ」
「通路が細いですね」
「昔に作られた地下水路ですから」
前方からも私たちと同じように松明を持った人がこちらに向かって歩いてくる。
彼もまた通行人のようだが、その存在感は異様だ。
彼の顔は松明の光に照らされて不気味に浮かび上がる。
その表情は冷たかったが、ふいに下を向いて視線を逸らした。
その人は何も言わずに、ただ静かに私たちの横を通り過ぎていった。
まるで、私たちの存在を認識しているかのように。
「暗殺者ギルドの人間です」
「暗殺……」
王都へ外出した際、ジェイクさんが言っていた関わってはいけないギルドなんだろうね。
彼の忠告が頭をよぎった。
「ウィル、こんなに王都の下の地下水路を自由に歩けるなんて、結構警備ザルなんじゃないかな?」
「この地下水路は、旧地下水路なんです。新地下水路の下水や飲料水用の水路は冒険者ギルドと商人ギルド共同で管理しています。定期的に掃除が必要ですから。それでですね……ここの管理が暗殺者ギルドなんです。表向きはどこかの商家ですが。そして、これが通行証ですね」
黒い薄い紙を見せた。
「これが、通行証? もう破れちゃってるけど」
「出口まで破らないようにしてくださいね。これをしっかり見える位置に持ってないと」
「持ってないと?」
「襲ってきます。人を呼ばれ集団で」
ウィルは「普通はそうなんですけどね」と呟いている。
先ほどの人も、私たちが許可を得てこの地下水路を歩いていると確認していたんだ。
こっわぁぁ。
暗殺者の目を思い出し、冷たい風が背中を駆け抜けたような気がした。
そして、先ほどから気になっていた壁の黒ずみ。
いたるところにある不気味な黒い染みが気になって仕方がない。
「この黒い染みってーー」
私は勇気を出して恐る恐る尋ねた。
「ご想像の通りです。ここで戦闘があったのでしょう。死体はこのまま、地下水路を流れて川に入り込みそのまま下流へ流れていきます」
「恐ろしや……」
「まぁ、この地下水路に通行証なく間違えて紛れ込むことがないので、通行証を買うお金がないか、腕に自信があるか、はたまた、腕試しかですね」
「ウィルは、毎回、通行証を買っているのですよね?」
「夜は上から、明るい内はこの地下水路を使います。私は普段は買わないですね」
その言いきり、怖い。
強いんだろうなと思っていたんだけど、彼の実力を改めて感じた。
「もう、彼らは襲ってこなくなったんですよね」
「うん、なんかわかる気がする」
「3回目ぐらいから、相手にされなくなって」
そんな、悲しそうな顔しないで。
どう考えても彼らも命が惜しいんだろうよ……。
今回は、私がいるので通行証を買ったみたいだ。
私たちは地下水路をどんどんと進んでいった。
暗くて冷たい道をひたすら進む。
この後、誰ともすれ違うことなく、何事もなく地下水路を抜けて城壁の外の川岸にたどり着いた。
夜風が肌を撫で、やっと外の空気を吸うことができた。
「あぁ、もうこの通行証は使えない……」
ボロボロになった薄い紙を見つめながら言った。
もう役目を終えたようだ。
どんな薄い紙なの……。
まるで炊飯器の内釜についた、糊のような……。
紙じゃなくて、ほぼ糊だったのか。
これでは簡単に破れるのも無理はない。
「1回限りの通行証ですからね。1回金貨1枚です」
「そんなに高いの? 無駄に使っちゃった……、空から飛べばよかったのに」
「空はダメです」
王都の外は、静かだった。
風が草原の草を撫でていく音だけが聞こえた。
ここから南の野営場を目指すみたい。
「南の野営場ってどんな所なの?」
「門が閉まった後、帰れなかった冒険者や旅人が集まる場所です。それ以外に商人がいます。粗悪なものを売る商人には気を付けてくださいね」
門からほど遠く、街道近くの森の入り口で、毎晩数十のパーティが一夜を過ごすところらしい。
「城門が20時で閉まりますので、どうしても間に合わない人がでてきます。城壁の周りで一夜を過ごすことは防衛の点から見て許されておりません」
「そうなんだ」
防衛のためなら仕方がない気もする。
「ウィル、ここからどれくらいかかるの?」
「おそらく、1時間ほどでしょうか。道はほぼ平らですし、問題なく到着できると思います」
夜道を歩くのは、好きじゃなかった。
夜は影がさらに黒くなり、怖くて仕方がなかった。
しかし、このケルンジリアという星には、無数の星の光が降り注いでいるため、夜道を歩くこともそれほど苦ではない。
夜空には、月のように大きな星と、それよりも小さな星が二つ輝いている。
その2つの星は非常に近く、まるで引力で引き寄せられ、いずれ衝突してしまうのではないかと思うぐらいに。
頭では分かっていても、この場所が地球ではないんだなぁ。
「ウィル、あの夜空の2つの星の名前はありますか?」
私は、夜空に輝く2つの星を指さした。
「あれは……兄弟星ですね……。兄弟星としか呼びません……ね」
「じゃあ、この世界、この星の名前って知ってます?」
「この星……自体の名前ですか? ないですね……」
ウィルは静かに言った。
ないんだ……名前。
ケルンジリアという名前があるとは聞いていたけれど、それは広く浸透していないのかな。
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