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第37話 買い出しは豪快に

※□※※□※※□※1行×32文字で執筆中※□※※□※※□※

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 ゴーン、ゴーン、ゴーン。

 午後の空気を震わすように、3回の鐘の音が響いてきた。

 私たちは、静かな小道を抜けて大通りに向かって歩いている。

 どうやら、泊まっている宿は随分と奥まった場所にあったようだ。


「15時ですね。ティータイムの時間ですよ」

「もう、お城のおいしいスイーツが食べれないのかぁ、残念」


 涙を拭うふりをして、わざとしくしくと泣きまねをした。

 リーナさんが毎日用意してくれたティータイムが、恋しくなる。


「鐘の音は便利だけど、やっぱりランドルーさんみたいに懐中時計が欲しいな」


 鐘の音が鳴らすのは、神殿の仕事で、時間のお知らせをしていることが分かった。

 時間、そして鐘の音は、大陸共通らしい。

 便利だね!

 

 06時 6回 開門

 09時 3回

 12時 1回

 15時 3回

 18時 6回

 20時 1回 閉門


「そうですね。懐中時計は10万ギリアからです。買いましょうか?」

「10万ギリア……、金貨何枚ですか? 10枚?」

「金貨10枚ですね」

「ですよね。わぁお。めっちゃお高い!」


 平民にとって懐中時計は高価すぎて手が届かないため、鐘の音を頼りに時間を把握しているらしい。

 鐘の音の回数と時間の関係は、城の応接室に置かれた柱時計があったのでわかっていた。

 ランドルーさんが懐中時計を持っていたのは、彼は元貴族だから。

 懐中時計は置時計よりも高価で、金貨10枚、つまり10万ギリア以上もするらしい。

 

「シンプルな懐中時計の値段ですね。多くの懐中時計には宝石が埋め込まれており、その宝石を際立たせるデザインで値段が跳ね上がっていきます。ヴィヴィの瞳の色に合わせた宝石の懐中時計となると、それは特注品になりますね……」


 ウィルは私の瞳を見ながら「今からは特注は出来ないですし……」と呟いてる。


「値段が恐ろしい!!」


 私は今、30枚の金貨を持っている。

 これは、城から支給されたお金だ。

 念のために謁見の間に行くときに、腰のバッグに入れていたあの時の私よくやった。

 このお金は、召喚迷惑代と考えていて返す必要はないよね?

 

「シンプルなやつなら、買えるっちゃ買える」


 けれど、今からの買い出しで武器を手に入れたい。

 あの勇者認定式の時、神斗君は剣を帯剣していた。

 しかし、私はダガーさえも持たせてもらえなかったので、今は何一つ武器となるものは持っていない。


「欲しいのであれば買いましょうか?」

「一先ず、鐘の音で十分かなぁ!?」


 私は少し冗談交じりに返事をした。

 ウィルは何かを見るたびに、「買いましょうか?」と聞いてくるんだもん。

 うっかり「欲しい」って言わないように気をつけなきゃ!

 

 先ほど聞こえた鐘の音が3回だったので、今は15時。

 ちなみに、王都の門は毎朝06時に開き、夕方20時には閉まるとのことだ。

 もしも王都外に外出して、20時までに帰ってこれない場合は、野営しなければならないらしい。

 その野営場の一つが南の野営場で神斗君が待っている場所。

 平民が指定された野営場以外の場所で野営をするのは、非常に危険だそうだ。

 それは夜盗や山賊などがいるからだ。

 そのため、戦えない平民が王都外に外出することはめったにない。

 

 さて、15時はティータイムを楽しむ裕福な子女や、夕飯のために買い出しに来る人々で一番賑やかになる時間だという。

 

「今日はティータイムは我慢してくださいね」

「うん」


 元気よく頷いちゃった。

 急いで買い出しをしなくてはならないのだから。



ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー



 以前、ジェイクさんおすすめの美味しい串焼きを食べた市場に再びやってきた。

 市場は夕飯の買い出しをするための人々でいっぱいになっており、たくさんの人々が行き交っている。

 この区画には肉屋がずらりと並んでいる。

 店先には肉はもちろんのこと、ソーセージやベーコンのブロックが山積みになっている店がいくつもあり、その光景に心が踊る。

 店の主人たちは試食を差し出しながら声高らかに呼び込みをしており、活気あふれる雰囲気だ。


「試食をしている店は、凄い人だかりだね。美味しそう~」

「あそこは、試食の肉と売り物の肉が違うので、良くないお店ですね」

「そんな事もわかるの? 凄い!」

「肉質はわかります。あとは、氷の使用量とかですね。氷の上に葉を置いてるように見せてますが、見えている所だけに氷を置いているだけですね。あれでは傷みが早いです」


 かなり通い込んでいるのか、ウィルは慣れた足取りで市場の馴染みの店に向かって行った。

 その間、しっかり、迷子対策? の手を繋いで。

 抱きかかえると言われたときは、思いっきり拒否した。


「お、デカイ兄ちゃん。今日は良い肉あるのかい?」


 ある店の前で足を止めたかと思うと、その店主はウィルの顔を見て親しげに声をかけた。

 店先の商品台には、さまざまな種類の肉が並んでいた。

 肉は新鮮さを保つために、たっぷりの氷が敷き詰められており、その上には紙が敷かれ、肉が直に氷に触れないようにしてある。


「いや、今日は売りに来たのではなく、買いに来ました」

「そーなのかい、残念だ! また、遠征かい? 大変なこったで」


 ふいと私と目が合い、「うん? お嬢ちゃんは……」と続けた。

 店主の男は、興味深げにウィルと私に視線を交互に向け、状況を把握しようとしているようだった。

 

「兄ちゃんの妹かい?」

「いえ、違いー」

「そうです! 兄がいつもお世話になってます!」

「ヴィヴィ、私は兄になったつもりはないですよ」


 ウィルは少し眉をひそめた。

 私は、ウィルの腹に軽く頭突きをして、ニッコリと笑う。

 

「兄妹にしましょう!」


 小声で押し切る。

 兄妹なら手を繋いでも恥ずかしくない、主に私が!

 

「いつも、大変な仕事しているもんな。さみしいよなぁ。冒険者なんていつ命を落とすかわからないのだから」


 店主は遠くを見つめながら、うん、うんと相槌を打ちつつ、勝手に話を膨らませてくれている。

 

「ま、まぁ、そうですね……。買い物しても?」


 ウィルは、兄妹設定に観念したようだ。

 手をたたき「もちろんだ。たくさん買っていっておくれ」と笑顔の店主は言いながら、今日のおすすめを説明してくれる。


「でた、チキンチキン」

「お嬢ちゃん、チキンチキンが好きなのかい? じゃあ、ブラックドードーはどうだい? 味がギュッとしていて美味いぞ」

「ホワイトじゃなく、ブラック?」


 ブラックドードーは肉質がしっかりとしていて、噛むごとに弾力が凄いらしい。

 

「ホワイトより美味いってこった」

「そうですね、食べ慣れた味がいいですね。よく食堂で食べていたでしょう?」

「まぁ……。肉の種類がわかり易かったので……」

「色々、食べてみるといいさ。何キロにするかい?」


 店主がにこやかな笑顔で、「おいしいよ、食べてみな」と言いながら香ばしいベーコンの試食を差し出してきた。

 ウィルはしばらく考え込んでから、ようやく口を開いた。


「成人男性2人と妹1人の3人分、30日。肉は60キロ分あれば不足はないでしょう」


 60キロ!? 持って歩くの!

 驚いて、思わずウィルの手をギュッと握り締めてしまった。


「まいどあり! 相変わらず豪勢に買ってくれるな、兄ちゃん!」

「足りなくなれば、現地調達するので大丈夫ですよ」

「いや、そっちの心配じゃなくて!」

「朝食のソーセージとベーコンも買いますよ?」

「違う! あ、卵も欲しい」

「凄い遠いところへ行くんだな。兄ちゃんが売ってくれた魔物は新鮮でお得意様がたくさんいたんだ」

「申し訳ないですね。ここには戻らないと思います」


 店主は少し寂しそうに「残念だ。おまけするよ」と言いながら、干し肉を2キロおまけしてくれた。


市場での買い物


 ソーセージ6連

 ベーコン5キロ

 色々な魔物の肉60キロ(ブラックドードー10キロ含む)

 干し肉2キロ

 魔物の脂肪1キロ

 卵13ダース

 チーズ、バター各1キロ

 芋と人参、玉ねぎ各大袋

 キャベツ、レタス各10玉

 葉野菜各10束

 色とりどりのリンゴ、フルーツ20個

 硬そうなパン15本

 塩・砂糖各1キロ

 焼きたてのしっとりとしたクッキー20枚

 アルコール濃度が低いワイン6リットル瓶2本、1リットル瓶1本

 木工食器2セット


 ウィルは手慣れた感じで次々と別の店に足を運び、効率よく買い物を進めていく。

 魔人族のウィルは、人族よりも体が大きいこともあり、城で用意された補給品では十分ではなかったらしい。

 城の人達、ちょっと酷すぎない?

 そして、本来であれば到底持ちきれないはずの大量の買い物は、ウィルの背負っているリュックに次々と吸い込まれていく。

 吸い込まれるというよりは、瞬時にパッと消えてしまう感じなんだけど。

 なんだろう、あのリュック……。

 一体どういう仕組みなんだろう……。

 不思議なことに、店主たちもまったく気にしていないし、何も言わない……。

 私も欲しいかも、あのリュック。

 あのリュックがあれば、旅ももっと快適で便利になるに違いない。

 あ、そうだ、忘れないうちに!

 

「ウィル、武器が欲しいかも」


 私の言葉にウィルは驚いて目を丸くし、「え?」というような表情を浮かべた。

 

「武器を持つ気があるのですか?」

「そりゃあ、必要だもん」


 昨日の出来事で武器を持たせるのはしばらく後にしようと考えていたらしく、考えてもいなかったそうだ。

 この世界で生き抜くためには、やはり腹をくくるしかないと思う。

 自分の身を守るためには、武器が必要だという現実を受け入れるしかない。

【★大切なお願い★】

こんにちは、配信者のヴィオレッタです。

最後まで目を通していただきありがとうございます。


少しでも

「また読んでやるか」

と思っていただけましたら、


広告の下にある【いいね】や【☆☆☆☆☆】ポイントを入れてくださるとめっちゃ喜びます。


最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。

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