第28話 呼出は謎のまま準備って何!?
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ん? まさかね~、さすがにね~。
今日出立するとかはないよね?
召喚された日の歓迎パーティーは少人数で行ったので、今回は大勢の人にお披露目とか?
私はスタンドにかけられたアーマーに近づく。
神斗君に用意されたのは銀色に輝くフルアーマー。
「う~ん……。どこかで見たようなアーマー……」
「これは、騎士たちに支給されているフルアーマーですね」
神斗君は、普段から見慣れているのか断言した。
「あー、それで見たことあると思ったんだね。新品なのか。こんなに輝いているんだもの」
見てしまった……新品ではないぞ、コレ。
よく見ると使用したあとがある……。
よ、よく整備されたアーマーって事にしとこう!
私は……軽装備よろしく胸当てとフード付きマント以外は訓練着を余所行きにした感じなのだけど、短パンではなくスカートだ。
そして、2つの小袋にはそれぞれ金貨が30枚入っていた。
そういえば、お金の価値とかあまりわからないままだったんだ。
銀貨1枚は1,000ギリア、金貨1枚は10,000ギリアっていうのはわかった。
価値がわからない。
ぼったくられないようにしないと。
「今日の呼び出し、何か聞いてる?」
神斗君は一瞬考え込んだ後、首をふる。
「ねぇ、神斗君。今日突然魔王討伐に旅立つって事ないよね?」と問いかけると、彼は眉をひそめて、軽く肩をすくめる。
「私はさ、戦力にならないから別にいいけど、勇者の神斗君にはちゃんと何をするか伝えるべきだよね」と続けると、彼は大きく深呼吸して、しばらく視線をテーブルに落としたまま考え込む。
神斗君の目はだんだんと怒りに満ちてきた。
そりゃあ、怒るよね。
何もかも突然なんだもん。
フルアーマーで訓練しているのを見たことないのにこれ着せるんだ。
動きづらそう……と思ったけど、中世ヨーロッパでもこんなフルアーマー着て戦ったんだから動けるか。
転んで立てなくなったら敵の思うつぼだもんね。
剣で刺し放題になっちゃう!
で、問題はコレ。
頭頂部に立派な何かの赤い毛束がついているヘルメット。
「ちょっとかぶってみようか」
「めっちゃ視界悪いですね」
私は神斗君のカパッと目の部分の可動式のプレートを上に押し上げた。
「すっごい守られてるし、頭は目立つしイイネ!!」
「乱戦するわけじゃないですよ」
「「……」」
ともあれ朝食を。
もしかしたら、こんなおいしい朝食は最後かもしれないし、しっかり味わいましたよ!
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
食後、それぞれの自室へ向かい用意された服に着替えている。
上質なコットンと思われるしっかり張りのある生地のシャツを着る。
そして、たっぷりとプリーツがついている赤いスカートを両手で持つ。
赤いスカート……。
リーナさんの方を見ると「王族の皆様の色ですわ」と返事が返ってきた。
そういえば、神斗君のヘルメットの毛束も赤だったし、耳についている監視用ピアスも赤色。
「うわぁ。赤が嫌いになりそう」
第五王子を真っ先に、王家の血筋の人達を浮かべた。
赤という色が持つ特別な意味を改めて感じた。
赤色は悪くない!
この短いスカートで魔王討伐するのが不思議でならない。
ファンタジーだからなのか?
スカートの下には下着が見えないようにレース満載のドロワーズでカバー。
カバーはありがたいけど、普段のパンツスタイルでもいいのでは? と思ってしまう。
流石に漫画みたいにどんなに動いても見えない、描写がないなんてことは現実はないのでドロワーズがあってよかった。
靴下を着用して、膝上までの皮ブーツを履く。
ブーツは足にぴったりとフィット。
最後によく鞣した柔らかな皮でできたコルセットのような胸当を丁寧に皮ベルトで締め上げて完成。
胸当はしっかりと体にフィットし、守られている感覚を感じた。
姿見を見たら、アニメで思い描いた冒険者の格好になっていた。
「おぉぉ、それっぽい!」
「えぇ、よくお似合いですわ」
リーナさんの言葉に少し照れながらも、装いに満足した。
「よかった! それで、リーナさん今から何するか聞いてます?」
リーナさんは一瞬で曇り顔になった。
眉が少し寄り、目元には明らかな寂しさが漂っている。
「先ほどメイド長が、今から式典の準備をするって言ってました……それって、訓練も終わってないのに早すぎますし、寂しいし、いやです」
リーナさんの声が少し震え、普段の明るい表情が影を潜めていて、その変化が一層切なさを引き立てていた。
魔王討伐って片道切符のような大変な事なんだろう。
あれ、大陸統一だっけ?
「大丈夫! なんとかなるよ」
リーナさんには逃亡することは打ち明けられないけど、笑顔を見せて、前向きな言葉をかけるのが私の役目だ。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
神斗君は、アーマーの下に着るシャツとズボンだけ着て待っていた。
いきなり一人で着るのは難しかったみたいだけどメイドさんは呼ばなかったようだ。
私とリーナさんでアーマーを着るのを手伝ってあげようとした時、シャツから見える首筋に赤い切り傷があった。
片手剣を交える実戦形式で訓練しているようなので、訓練の時についた傷なのだろう。
このままにしておくのはいけないな。
「薬もらってる? ちょっと酷そうだから薬もらって塗ろう?」
神斗君に許可を得ず、リーナさんにお願いする。
「リーナさん、薬がほしいかも。見てコレ。凄い悪化してる」
「あら! これは酷い……ですわ」
私はリーナさんに傷薬をもらえるようにお願いする。
リーナさんは、かしこまりましたと言い終わらないうちに応接室から駆け足で出て行った。
「お待たせしました。レベルの高いポーションを分捕ってきました!」
リーナさんはトレーに乗せた赤の液体が入った小瓶を差し出してきた。
光に透かして見ても向こうの景色がみえないほどの濃い赤。
これはなんだろう? どうやって使うの? と首をかしげているとHP回復ポーションと教えてくれた。
飲むとHP回復とゆっくりとした傷の回復。
傷にかけると傷の回復。
2通り使えるみたい
その他、傷薬があるみたいだけど、効果はこちらの方が効きが良いみたい。
「さぁ、脱いで!」
神斗君のシャツを半ば強引に脱がせた。
「うっわぁーー。これは酷い。なんで、言わなかったの?」
「すみません……これぐらいで音を上げるなと言われて。言うのを躊躇ってしまいました」
神斗君は悪くないのに、しょんぼりと背中を丸めた。
背中だけでなく体中いたるところに打撲や切り傷、酷いジュクジュクとしたミミズ腫れがたくさんあった。
「ご、ごめん。責めたわけでなくて……それにしても痛そう……絶対染みるよ」
自分の手にHP回復ポーションを出した。
少しトロッとした赤い液体を、そっと神斗君の背中にある傷からなぞっていく。
身体がビクッと跳ねて「ーーツッ! うっ……くっ……!」声を絞りながら神斗君は痛みをこらえる。
「おっ、すご……」
痛々しい赤いミミズばれや切り傷がスーッと消えていくさまに驚いた。
怖いくらいの即効性だ。
何で出来てたらこんなに傷が治ったりするのだろうか?
痛みもすぐに消えたらしい。
肩から腕へHP回復ポーションを塗り広げていく。
「大丈夫……、だ、だいじょうぶ……だよ。痛いよね」
痛みに耐えている神斗君に優しく。
「はい、背中はOKだよ。もう触っても痛くない?」
神斗君は前向きのままうなづいた。
横から見た表情には、痛みから解放された安堵の色が見える。
私も神斗君の痛みが和らいだことにほっとした。
赤い液体が神斗君の傷を癒し、その後に残るのはきれいな肌だけだ。
ポンと背中をたたき、前は自分でお願いねと神斗君自身で塗ってもらう事にした。
不謹慎ながら男性の身体をなぞるという行動にちょっとドキマギしてしまったのは内緒にしておこう。
気を取り直してアーマーを着るのを手伝った。
一つなぎではなくベルトで繋げているのかとアーマーの構造に感心しながら足から履いてもらう。
これは慣れれば一人で着れるの?
着せ終えると彼は動きを入念に確認していた。
着て満足していた私が恥ずかしい。
それから…
騎士さまが呼びに来た。
実は、結構待ちまして。
この格好のまま、10時のティータイムを楽しみましたよ、えぇ。
神斗君と私は小袋を腰回りのバッグにいれ、ぞろぞろと迎えに来た騎士たちの間に挟まれて謁見の間と呼ばれるところの前に来た。
「ここからは、お二人でおすすみください」
まだ、説明をなんにも受けてないけど黙って彼らに従った。
どうせ「説明をーー」って聞いても、中でとか適当に言われて疲れるだけだもの。
王様の前に進み、その場で片膝つくように指示される。
私は神斗君の隣でなく、ちょっと斜め後ろにと。
「あっ」
バランスを崩して倒れた。
「フウ。俺、ヴィヴィオラさんと一緒でよかったです」
「えっ、何? 片膝をつくのって意外に大変なんだよ!」
神斗君の緊張が少し溶けたのかな。
笑顔が見える。
周りを見渡すと王族が立ち揃っている後ろにミカとマナミ。
神官長の横にツトムさんがいる。
ミカ達は食堂で見た訓練服ではなく、貴族のようなドレス姿にキラキラと輝く宝石を付けていた。
この短期間ですいぶんな馴染みようだ。
神斗君はーーーー神斗君も勿論ミカ達に気づいているようだ。
ミカを少しの間、凝視していたが無表情だった。
ミカは時折、大ぶりの指輪を眺めては薄い笑みを浮かべている。
もう神斗君の事は忘れているんじゃないかと思うくらい今はこちらに関心がないみたい。
でもその方が、無理やり連れてこられた世界でうまく生きていけるだろうな。
世渡り上手なミカ達に負けないぐらいこの世界を楽しく生き抜いてみようと思う。
【★大切なお願い★】
こんにちは、配信者のヴィオレッタです。
最後まで目を通していただきありがとうございます。
少しでも
「また読んでやるか」
と思っていただけましたら、
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最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。