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001 ヴィヴィオラは配信者です

※□※※□※※□※1行×32文字で執筆中※□※※□※※□※

改行などで見辛くなる時はビューワー設定の調節してください

「今日もご視聴ありがとう 次回の配信は……そうだな、雑談でもしようね! じゃあ、またねぇ! バイバイにーにー!」


 遮光カーテンが陽の光を遮る暗い部屋。

 モニターと虹色に輝くパソコン、キーボードの光が、顔を照らしている。

 一呼吸置いたのち、配信画面の[終了]ボタンをクリックし、マイクをミュートに、そして誰にでもなく呟いた。


「今日もおつかれ」


 誰もいない部屋に、静かに響いた。

 ふぅ……腰が凝ったなぁ。

 4時間も椅子に座りっぱなしだったから、背中がじんわり重い。

 手を天井に向かって伸ばし、片方の手首を掴んでグググッと背伸びをする。

 そして、すぐさまゲーミングチェアから立ちあがった。

 

 私の名前は桜。

 4月生まれということもあり、ちょっと安直に思われるかもしれないけれど、桜という名前には季節の移ろいや命の儚さが込められていて、私はその響きが好きだ。

 そんな私は、昼間は会社員として働きながら、夜になると、黒白(クロシロ)ヴィヴィオラという名で、主に〖youLIVE-site〗でゲーム配信活動している。

 リアルな姿ではなく猫耳女性のバーチャルな姿、わかりやすく表すとアニメキャラクターのような動くイラスト、アバターで配信活動中だ。

 活動場所の〖youLIVE-site〗とは動画投稿、配信、視聴、ショッピング、SNSなど一括で楽しめる配信総時間世界一という記録をだしている人気サイト。

 残念ながら私は人気配信者でないんだよね。

 今のご時世、配信はやる気があれば誰でもできる人気職業なので、日本だけでも配信者は10万人ほどいるから仕方がない。

 逆に10万人もいるのに、その中から私を見つけてくれるなんて凄いことよね。

 だからこそ、そんなリスナーさんたちがいるから配信を続けてられる。

 誇れることは3年の配信歴を持っている中堅ということだけなんだけど、……配信者の職業平均寿命は1年と考えると凄いことなんだ。

 とはいえ、リスナー人数は鳴かず飛ばずなので配信は趣味の延長となっている。

  配信だけで食べていくなんて夢のまた夢――そんな現実も、ちゃんと理解しているつもり。

 配信が終わった後は、のんびりと次遊ぶゲームやら、次回のサムネイル――動画や配信のトップ画像、本で言ういわゆる表紙みたいなものを作成して過ごしている。

 だけど、今日の配信後は急がなくてはいけない事があるんだよね。


 「さぁ、行こうか! 久しぶりの甘いものゲットしに」


 目的は、コンビニエンスストアのラーソン99周年記念を記念して発売された限定スイーツ――その名も[99パーセントUP(アップ)生クリーム爆増シフォンケーキ]。

 甘いお菓子をたくさん作ってくれたお母さんが亡くなってから、お菓子を食べる気がおきなかったのに。

 なぜかSNSで偶然流れてきたPR動画で「食べないと」と思ってしまった。

 パソコンデスクの上に置かれた時計に目をやる。


 「大丈夫! 入荷時間はあと10分後」


 私はパーカーを羽織り、スマートフォンと財布だけを握りしめて颯爽と部屋を飛び出した。



ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー



「はぁ、はぁ、はぁ……たまには運動しないと……ね……」


 息が上がって苦しい。

 酸素が足りないのか、頭がぼんやりして、視界の端が揺れている。

 最近まったく運動していなかったのに、ここにきての全力ダッシュは辛かった。

 ラーソンに無事に着いたはいいけど、産まれたての小鹿のように膝がガクガクするのが止まらない。

 ラーソン99周年記念販売に間に合ったよね?

 スマートフォンの画面をチラッと確認すると、入荷予定時刻の数分前。

 時間に間に合ったことにホッとした。


「ラーソン本部に確認したところ14時前に入荷準備らしい……」


 ラーソン本部にさらに確認したところ[爆増シフォンケーキ]は1店舗4つ入荷なはずなので、多分大丈夫はず、私も一つは買えるはず。

 この記念販売の中で一番人気は、ラーソン自慢のからあげ箱のあげ底を99パーセントDOWN(ダウン)でからあげ4個増量というもの。

 みんなそっちを狙ってるに違いない。

 ちなみに味はセレブレーション味という謎の味付けである。

 セレブレーション味=祝賀味…どんな味なんだろう?

 一足早く食べたPRを受け持った配信者たちの感想はハジケルだそうで?

 単純にジューシーな鶏肉ではなくハジケル鶏肉。

 うーん、食べてみたいようなそうでないような。

 それはそうと、私の狙いは[爆増シフォンケーキ]。

 だから、冷蔵ケースの前に陣取って、今か今かと胸を高鳴らせながら立って待つことにした。

 しばらく待っていると、奥からラーソンの店員が現れた。

 手には冷蔵ケースに並べるらしいパレット――その中には、あの[爆増シフォンケーキ]が!

 やっと来た!  待ってたんだよ。

 ランチタイムのピークを終えたばかりで、品出しやレジ打ちに追われていたんだろうな。

 店員さんの顔には、少し疲れの色がにじんでいた。

 のろのろと歩く30代ぐらいの店員が待ち遠しくてたまらない。


「ごめーん、ちょっとどいてくれます?」


 振り向いた瞬間、背後から現れた女子高校生が、自分の存在など見えていないかのように、勢いよく肩を突き飛ばした。

 もしかしたら、ただぶつかっただけかもしれない――でも、その衝撃はあまりにも唐突で、悪意すら感じるほどだった。

 えっ? 何? と思った次の瞬間、目の前には床が近づいて――ベチン。


 「いっったぁあ!」


 とっさに手をついて衝撃を受け止めたものの、床に打ちつけた手のひらからズーンと重たい痛みが手首の奥まで響いてきた。

 幸いにも汚れた床に顔を打ち付けなくてセーフ。

 イヤイヤ、ちゃうちゃう。

 誰なの!? と床から視線を上にあげた。


「ああぁ……すいません! 大丈夫ですか?」


 慌てた様子で駆け寄ってきた男子高校生が、私に手を差し伸べてくれた。

 後ろの女子高校生に向かって声を荒げた。


「――マナミ! なにやってるんだよ」


 この男子がぶつかったのかと思ったけど、どうやら『マナミ』って呼ばれた女子高校生が原因らしい。

 彼は私をそっと引き起こしてくれて、何度も頭を下げながら「本当にすみません」と謝ってくれる。

 彼が良い子なので心情的に大丈夫じゃなかったけど、ついつい自然と口から「大丈夫です」と、伝える途中に低音ボイスの女子高校生が口をひらいた。

 

「何ってさ。シフォンケーキ欲しいんだもん。ねぇ、ミカ」


 マナミと呼ばれた女子高校生は、ケラケラと小馬鹿にしたように笑いながら悪気もなく答える。


「ん? 何かあった?」

「甘いもの食べる歳じゃないでしょ? そんな所に立っているのが悪いんだよ。お・ば・さ・ん。」


 マナミはさらに性格の悪い言葉を吐いた。

 ミカと呼ばれた女子高校生は、スマートフォンをいじるのに一生懸命なのかこちらをチラリとも見ない。

 やだ、何なのこの子たち! 感じ悪い!

 それに! まだ! 25歳なんですけどぉ!?

 横に立っている助けてくれた男子高校生もドン引きしてるじゃない。

 君たち、友達? 友達なんだよね?

 さっき名前呼んでたし……って、えっ!? ふぁっ!? 

 2人の女子高生が店員の持っていたパレットに手を伸ばし、シフォンケーキをまるで略奪するように持ち上げようとしていた。


「えっ……嘘でしょ! 4個しか入荷しないのに!」

「早い者勝ちに決まってるじゃん」


 まだ冷蔵ケースに並べてもいないのに早い者勝ちとは?

酷すぎる……私だって欲しいのに!

 1個でいいからと手を伸ばした、その瞬間だった。

 女子高校生の背後のガラス張りの壁が、突然カッと白んだ。

 そして、とてつもない衝撃波と共に。


「うわぁ! 眩しぃぃぃ! あつぅぅぅ……!」

【★応援のお願い★】


こんにちは、配信者のヴィオレッタです。

最後まで目を通していただきありがとうございます。


2024年のはじめ頃の配信だと思いますが、「何か趣味になるものを作りたい」という目標から

小説を書くことになりました。最後まで書ききりたいと思います。

ただ、奇をてらった内容ではないので公開するのは悩みました。


少しでも、

「また読んでやるか」

と思っていただけましたら、


広告の下にある【いいね】や【☆☆☆☆☆】ポイントを入れてくださると喜びます。


最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。

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