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悪役令嬢にざまぁされないように、勝ってくれたのですか?③

 

 決勝戦。相手は、やはりレオンハルト王子だった。

 

 決勝戦に進出した生徒を除き、すべての生徒は各々の席に戻り、これから始まる試合を見守っている。

 アザレアも戻ってきており、いつの間にか作っていたレフィトへの応援メッセージを手にしていた。

 

「これ、ネイエ様の分ですわ」

 

 そう言って渡したのは『カミレちゃんにカッコいいとこ見せて!!』というメッセージ。バランスをとるために、カミレちゃんの文字が小さくなっている。

 因みにアザレアのものは『カミレちゃんの旦那様は最強!!』というもの。こちらは、なぜかカミレちゃんの旦那様がメインとして大きい文字だ。

 

 文字のバランスは最高で、クオリティも高い。

 だが、しかし!! これはツッコんでいい案件だよね?

 

「あら、素敵ね。言葉選びも抜群だわ」

「ゼンダ様と考えましたのよ」

 

 えっ……、ネイエ様? 

 もう、どこからツッコめばいいの? ツッコミどころが増えたんだけど……。

 とりあえず、ゼンダ様がどんな顔(表情)で厚紙に書かれた文字を一緒に考えていたかは、気になる。すごーく気になる。

 だけど、まずは──。

 

「頑張れとかじゃ、駄目だったんですか?」

「レフィト様なら、私の頑張れよりも、こっちの方が絶対に喜びますもの」

 

 確かに。正論だ。レフィト、こっちの方が喜びそう。

 アザレア、よくレフィトのこと把握してるなぁ。いや、レフィトが分かりやすいのかな。

 

「それと、レフィト様に頑張れと書くと、角が立つわね。婚約者や家族なら問題ないでしょうけど。この言葉なら、いくらでも言い逃れができるし最高よ」

「だからゼンダ様も、この言葉がいいとおっしゃたのかしら。……あら? ネイエ様もカミレちゃんも、ゼンダ様を応援してくださいましたけど、大丈夫ですの?」

「えぇ。だって、私とカミレちゃんは、ゼンダ様もレオンハルト王子も応援していたもの。そうでしょう?」

 

 なるほど。ふたりと応援していたことにしてしまえば良いってことね。

 私が頷いたあと、しばらくしてアザレアはハッとした表情を見せた。

 

「そういうことですのね!」

 

 瞳をキラキラとさせているアザレアに、ネイエ様は慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。

 ネイエ様って、かなりアザレアのこと好きだよね。何だろう、アザレアって庇護欲をそそるんだよなぁ。

 

「私、レフィト様もレオンハルト様も応援しますわ!!」

 

 お手製のメッセージボードを振りながら、アザレアは声高く宣言をした。『カミレちゃんの旦那様は最強!!』という文字が揺れている。

 

 うあぁぁぁぁぁ!!!! めちゃくちゃ恥ずかしい!!

 でも、嫌なわけじゃない。レフィトの婚約者として認めてもらってるって思えて、嬉しい。

 家格が釣り合わないだとか、令嬢として必要なものが足りないだとか、直接じゃないけれど耳にすることが多いから、こうやって言葉にしてもらえると、勇気が出る。

 でも、多くの人が目にすると思うと、やっぱり恥ずかしい。

 

「カミレちゃん、下を向いては駄目よ。堂々と胸を張るのよ」

「そうですわ。カミレちゃんは、レフィト様の未来のお嫁さんですもの!!」

 

 照れくさくてうつむきたくなる気持ちを抑え、顔を上げれば、試合に臨(のぞ)むために歩き出したレフィトと視線が交わった。レフィトの視線は、一瞬だけアザレアお手製のメッセージボードへと移動し、また私へと向く。

 

「奥さんにカッコいいところ、見せるねぇ」

 

 聞こえない距離のはずなのに、動いたレフィトの唇が、そう言っていることがハッキリと分かった。

 顔が熱い。けれど、下は向かない。

 しっかりとレフィトを見つめたまま、頑張って!! と伝えれば、レフィトの瞳が細まった。

 

 

 レフィトとレオンハルト(王子)は、互いに向き合い、審判の掛け声を待っている。

 王子は木刀をかまえているけれど、レフィトはただ手にしているだけ。木刀の切っ先が地面に向いている。

 一見、レフィトはやる気が無さそうに見える。けれど、そうではない。

 レフィトがいつもより大きく見える。これが強者の纏(まと)う空気というものなのだろうか。

 

「始め!!」

 

 審判の合図があり、王子は木刀を振り上げ、切っ先を天へと向けた。

 その瞬間、試合が終了した。

 地面に向いていたはずの木刀は、今にも王子の首を切り落としてしまいそうな位置で止まっていたのだ。

 

 これが剣であったなら、王子は死んでいる。

 あまりにも呆気なく、実力差だけがハッキリとした試合。

 

 カランと王子の木刀は地面へと落ち、王子は信じられないという目でレフィトを見ている。

 けれど、そんな王子をレフィトは一度も琥珀色の瞳に映さなかった。

 

「勝者、レフィト・ルドネス!!」

 

 静寂に包まれたなか、審判がレフィトの勝利を告げる声が響いた。

 次の瞬間、ざわりと空気が揺れた気がした。

 王子が負けたこと自体に驚く者、当然だという顔をしている者、一瞬で勝敗が決まったことに動揺する者。様々な声がひそひそと飛び交っている。

 そこに共通していることは、誰一人としてマリアンの方を見ないようにしているということだ。

 

「決勝まで一撃必殺だったわね」

「カミレちゃんの応援(ラブパワー)は最強ですわね」

 

 この展開を予想していたのだろう。ネイエ様とアザレアに驚いた様子はない。

 私自身も、容赦しないだろうな……と思っていたから、概ね予想通りだった。

 それでも、瞬きを忘れて見入ってしまったレフィトの剣に、ドキドキが止まらない。

 

「かっこよかった……」

 

 無意識につぶやいた言葉に、アザレアは瞳を輝かせ、ネイエ様は小さく微笑んだ。

 

 

たくさんの評価といいね、ありがとうございます✧◝(⁰▿⁰)◜✧

第二章は、残すところ、あと1話になりました。


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