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悪役令嬢にざまぁされたくない令嬢の婚約者は、幸せな庭を作りたい〜レフィトside④〜


 なんて考えている間も、ゼンダとアザレア嬢の言い争いは止まらない。いつまでやるのだろう。

 もう解散したい。カミレとお茶しに行きたい。やるなら他所でやって欲しい。

 オレだけならさっさと帰るけど、カミレはこの状況じゃ心配だからと帰らないだろうしなぁ。

 


「そんなにオレが嫌いか?」

「まさか、好かれるとでもお思いで? 顔も見たくありませんわ。大っ嫌い!!!!」

「そ……か…………」


 悲しそうな瞳なのに、無理に笑みを作るゼンダの表情に苛立ちを覚えた。ここまで悪化させたのは自分なのに、被害者面をするなんて、どんな神経をしているんだか。

 けれど、そう思ったのはオレだけみたいだ。

 カミレは心配そうにゼンダとアザレア嬢を見守り、アザレア嬢は自分の言葉で傷ついたゼンダを見て、自身もまた傷ついている。

 あまいなぁ……と思う。

 けれど、そのあまさが誰かの救いになることをオレはもう知っている。


「今まで悪かった。婚約は破棄できるようにする。でも、修道院には行くな。オレが悪いんだから、レア……いや、アザレアが不利益を被る必要はない」

「……ゼンダ様?」

「少し待ってくれ。必ず、アザレアにとって良い結果にする。それと、嫌だと思うが、学園での護衛は俺にやらせてくれ。話しかけないし、俺のことは無視していいから」

「わ、私、何もそこまで……」

 

 婚約破棄を望んでいながら、相手に不利益がいくのを予想もしていなかったんだろうなぁ。


 アザレア嬢は自己肯定感が低い。

 子どもの頃から、一番身近な他人の婚約者であるゼンダに散々馬鹿にされてきた経験と、マリアンにあなたは騙されやすい、ひとりではまた誰かに騙されてしまうと繰り返されてきたことによる影響が大きいと思う。

 自分が我慢すればいいと思っているし、汚れ役も自ら買って出る。自己犠牲があたり前になっている。

 今回は我慢の限界を越えたけど、今までゼンダと喧嘩しながらもここまで言わなかったのは、言われる自分に原因があると心のどこかで思っていたからだ。


 アザレア嬢にとって自分が不利益を被るのは、普通のこと。

 だから、他者が不利益を被ることは想像もしていない。

 はじめて目の当たりにする経験に、心が追いついていないように見える。

 そんなアザレア嬢だから、マリアンは重宝がってそばに置いたのだろうなぁ。だって、こんなに単純で使いやすい令嬢は、他にはいないからねぇ。



「あの……、一度ふたりで話し合った方がいいと思います。行き違いがあるように見えるので」


 深刻な雰囲気のゼンダとアザレア嬢にカミレは言った。

 その顔には、お節介だったかも……とかかれている。

 確かに、お節介といえばお節介だ。でも、今のこのふたりには必要なお節介でもある。

 仕方ないなぁ。カミレのためにも、後押しするかぁ……。


「オレも話し合った方がいいと思うよぉ。アザレア嬢はもっと落ち着いて、ゼンダは自分に素直になってさぁ。この部屋は、一日押さえてあるから好きに使いなよ。オレとカミレは帰るから」

「「えっ……」」


 ゼンダとアザレア嬢が不安げにオレたちを見る。

 でも、これ以上のお節介は不要だ。自分たちで解決して欲しい。


「貸し、だからねぇ」


 ゼンダの耳元で囁いて、カミレの腕を引いて部屋を出た。

 カミレは心配そうに出てきた部屋に視線を送っている。


「大丈夫かな?」

「さぁ。これ以上は悪くならないんじゃない?」

「そうかもだけど……」

「大丈夫だよ。なるようにしか、ならないからぁ」

「それって、大丈夫とは言わないんじゃ……」

 

 そうかな? そうかもしれない。

 でも、所詮は他人事だ。興味も関心もない。

 それでも、カミレの心配事は少ないに越したことはない。

 

「ゼンダはアザレア嬢が好きだし、あの様子ならゼンダがほんの少し素直になれればアザレア嬢は歩み寄ってくれる。きっと上手くいくよぉ」

 

 足を止め、カミレの空色の瞳を見つめる。

 不安はまだ残るようだけれど、それでもカミレは笑った。その不安を吹き飛ばすように。

 

「そう……だね。そうだよね。ありがとう、レフィト」

「オレは何もしてないけどねぇ」


 したのは、カミレだ。オレじゃない。


「ううん。ふたりのために部屋を貸してくれたし、一緒に話し合った方がいいって言ってくれたじゃん」


 ふたりのため……じゃなくて、カミレのためなんだけど、カミレが嬉しそうだし、ま、いっかぁ。


「仲直りするといいねぇ」

「うん!!」


 指を絡めて繋ぐと、帰りの馬車に向かって歩き出す。

 もし、あのふたりが駄目だったら、カミレのために何とかしなきゃかなぁ……。

 それは、とてつもなく面倒で、ゼンダをぶん殴りたくなる。これ以上、煩(わずら)わせないで欲しい。


 ふたりに頼み事はしたけれど、あれはアザレア嬢がカミレを陥れようとした対価だ。お節介分は含まれていない。

 あれくらいの頼み事じゃ足りないから、アザレア嬢にはこれからもカミレのために働いてもらわないとねぇ。

 あと、婚約者なんだから連帯責任でゼンダにも頑張ってもらわないとなぁ。アザレア嬢がマリアンに肩入れして、マリアンのためにとカミレに冤罪をかけるようになった原因にゼンダも含まれているわけだし。


 ゼンダも、ここで素直になれなかったら終わりだって分かっているはずだ。

 いい加減、素直になりなよぉ。

 

 

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