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【2巻発売】悪役令嬢にざまぁされたくないので、お城勤めの高給取りを目指すはずでした(Web版)コミカライズ企画も進行中です。  作者: うり北 うりこ@ざまされ2巻発売決定
第一章 悪役令嬢にざまぁされたくないので、お城勤めの高給取りを目指します

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悪役令嬢にざまぁされたくない令嬢の婚約者は、真実を伏せる〜レフィトside〜①


 サーカスが始まるまで難しい顔をしていたのに、今では目を輝かせているカミレを盗み見るどころか、凝視する。

 普段は、じっと見続けていると視線を泳がせて苦笑いを浮かべるカミレだけど、今はオレが見ていることに気付いていない。

 いつものカミレも可愛いけど、夢中になって無邪気な笑みを浮かべるカミレも可愛い。

 仮面で顔が隠れていなかったらもっと良かったんだけどな……。

 

 カミレが望んだから話したけど、どう思ったんだろう。

 嘘はついていない。だけど、聞かれなかったから、聞かせたくない言葉は言わなかった。

 本当は隠し事なんかしたくなかったけど、わざわざ嫌な思いをさせる必要はないし、危険な目にもあわせたくない。

 だから、情報の一部をわざと言わなかった。

 カミレは、親が子どもを利用することに強い嫌悪感を抱いている。オレたちにとって当たり前のようなことでと、カミレは心を痛めるんだ。

 そんな優しい彼女が聞けば、悲しむのは分かっていた。あいつ等の婚約者に感情移入することも。

 カミレが憎しみを持つことを避けられたのには、ホッとした。真実を隠さずに話せば、感情移入した結果、この国の貴族を、あいつ等の親を憎むかもしれない。

 自分のことじゃないのにねぇ。

 憎しみは駄目だよ。強い感情だから。そんな感情を誰かに持つなんて、許せない。強い感情が向かうのは、オレだけでいいんだから。



 どっちの真実が、よりカミレの感情を揺さぶったのかな。

 やっぱり、こっちかな? ラムファ嬢の病をわざと治さないことかな……。

 ラムファ嬢が病弱で他国から薬を入手していることも、公爵家に薬代の一部を支援してもらっていることも本当だけど、国外に治療へ行かせることを拒否している。

 アグリオが病弱なラムファを捨てられないことを知っているから、治ると都合が悪いんだよねぇ。

 公爵家と絶対に縁を結びたいから、娘の病を薬で抑え込むことにして、完治させないんだもんなぁ。専門的な治療をすれば治る病なのにね。

 アグリオの両親もそれに気付いてるけど、放置している。息子の婚約者の治療を援助し続けるという、心優しく、慈悲深い女性のポジションが夫人のお気に入りだもんなぁ。 

 国外に治療に行かせて治っちゃったら、その時は話題にもなるし、理想の自分を演出できるけど、長い目で見れば、今の方が都合がいいもんねぇ。

 理想の自分像を演出するために、義理の娘になる予定の令嬢を消費しているなんて、カミレには聞かせられない。



「わっ! ライオンが真っ白だぁ。ねぇ、レフィト! すごいよ!! 雪みたいだね。気高くて、孤高の存在って感じだね」

「うん。キレイだねぇ」

「だよね! ひゃー!! あの高さを飛び越えちゃうの? うわぁ……、大丈夫なのかな? 人を乗せたままだよ? 危なくない!?」


 ライオンが火の輪をくぐろうとしているのを、カミレはおろおろと見ている。

 きっと、あの火はそんなに熱くない。

 このサーカスの出身国は、アルストロメリア王国(この国)に比べて、驚くほど科学が発展している。熱くない火も存在してるんだよね。

 つまり、ただの輪くぐりってわけだ。

 

「本当だねぇ。怖いから、くっついていようねぇ」


 カミレの肩を抱き寄せ、ピッタリとくっつく。

 カミレの視線はサーカスに釘付けで、きっとさっきまでの話を今は忘れている。

 それでいいと思うし、そこがいいと思う。

 貴族なんて、しがらみだらけで自由は少ない。オレはその狭い世界に、これからカミレを連れて行く。


 カミレは変わってしまうだろうか。


 全力で拍手をするカミレをじっと見れば、今度は視線が交わった。


「すごかったね!」


 興奮ぎみだけれど、少し声のトーンを落としてカミレは言う。楽しそうに細まった瞳は、どこまでも広い青空のようだ。


 そんな汚いところなんか一つもない彼女に、貴族の汚い部分をどこまで伝えてもいいんだろう。

 知らなくても、知りすぎても危険なんだよね。塩梅(あんばい)が難しいなぁ。


 少なくとも、言わなかったもう一つの真実は危険だよなぁ。

 ラルトルス辺境伯とアーモルド伯爵家の真実は、知れば命を狙われるかもしれない。あの結婚騒動は国王が仕掛けたのがきっかけだなんてさぁ……。


 ラルトルス辺境伯は猪突猛進で、恋愛に関しては考えなしなところがあるけれど、国境を守る手腕は天才的だ。

 国王は辺境伯に恩を売るために、ベルベット夫人と結婚させたかったけど、王命で既に婚約関係にあるふたりを別れさせて婚姻を結ばせれば、自身の評判が悪くなる。

 だから、ハニートラップを仕掛けたんだもんなぁ。アーモルド伯爵があんなに見事にはまるとは、さすがに思ってなかったみたいだけど。

 それが成功して、結婚騒動にまで繋がったっていうね……。


 その副産物として、生まれる前からラルトルス辺境伯家とアーモルド伯爵家の子どもの婚姻が決まってたんだよね。

 帳尻合わせってやつだねぇ。

 周囲に仲が円満だって見せつけるためのパフォーマンスに子どもを利用してる。本人たちは、カナ嬢のためだって思ってるみたいだけど、本当は自分たちのためなんじゃないの? って聞きたくなる。

 そんなに心配なら、他国に留学させればいいんだよ。ラン夫人の故郷とかにさぁ。

 

 この事実を知った時、国王に脅された。墓場までこの秘密を持っていくか、ここで殺されるかって。

 きっとこの話はまだ掘れば色々と出てくる。だけど、オレもそこまで馬鹿じゃないから、探るのはやめた。

 情報は大事だけど、命をかけるものじゃない。


 カミレがこの真実を知ったとしても絶対に守るけど、命を狙われたら大変だから、言うつもりはない。


 ……ん? もしかして、国王を殺せばそんな心配はいらなくなる? いや、駄目かぁ。今のところ、王位継承権の第一位はレオンハルト(王子)だもんなぁ。

 あいつが王位を継いだら、今以上に面倒だ。

 第二王子を推すことにしようかなぁ……。でもなぁ、あいつはなぁ……。



 

 

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― 新着の感想 ―
わー、一気にドロドロしてきた! レフィトの有能?さが怖いっ!! この設定考えられるのすごいです。 この5組がどう関わってくるのか続きも楽しみです!
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