許すとか許さないとか その後②
更新、遅くなりました。
申し訳ありません。
教室に入れば、一斉にクラスメイトが私たちを見る。
「ハオトレさん、大丈夫だった?」
「とてもたくさん血が出ていたから、心配していたよ」
「…………え?」
クラスメイトたちに囲まれ、戸惑った。
たしかに最近は挨拶程度の会話をすることも増えていた。
けど、何だろう。すごくモヤモヤする。
「あ、大丈夫です。ありがとうございます」
どうにか笑顔を作るけれど、頬が引きつった。
どうしよう。うまく笑えてるかな……。
そう思っていれば、レフィトが私を背に隠すように前に立つ。
「はいはーい。心配ありがとぉ。でも、仲良くもないのに集まってくるのは、どうなんだろうねぇ」
「──っ。俺たちはただ心配なだけで」
「うん。その心配ってさぁ、誰のため?」
まずい!
レフィトの後ろから足を踏み出す。見上げれば、琥珀色の瞳が男子生徒を冷たく刺している。
止めないといけない。
分かっているのに、私の心を代弁するかのような言葉に、声が出ない。
「レフィト様、心配とは相手のためであり、自身のためでもありますわよ。大丈夫だと聞いて、安心したいですもの」
「レア、話に割り込むのは──」
「いいえ、ゼンダ様。言わせてくださいまし。レフィト様の言いたいことは分かりますわ。普段は遠巻きにしているくせに、こういう時だけ近づくなということですわよね?」
「そうだよぉ。だから、止めないでほしいんだけど」
冷たさは残るものの、アザレア相手だからかな。
いくらかレフィトの雰囲気が和らいでいる。
けれど、クラスメイトたちの顔色は悪い。
「レフィト、ちょっと殺気を抑えて……」
「んー? すごく我慢してるから、これ以上は無理かなぁ」
へらりと笑いつつ、レフィトに頭をポンとなでられる。
優しい手だ。
いつだって、私には優しい手なのに……。
「レフィトが皆に勘違いされちゃう。私のために敵を増やさないで」
「大丈夫だよぉ。誰もオレには勝てないからぁ」
そうじゃない。そうじゃないんだよ。
勝ち負けとかじゃなくて……。
「レフィトが悪く思われるのが嫌なの」
「うん。オレもだよぉ。カミレが軽く扱われるのが許せないんだぁ」
レフィトは再び、男子生徒へと視線を向ける。
けれど、その間にアザレアが入り込む。
「私、まだ話が終わっていませんわ」
「アザレア嬢は終わってなくても、オレの方はもう話すことないんだぁ」
「なら、私の話だけ聞いてくださいまし! レフィト様のしていることは、カミレちゃんのためになりませんわ!!」
アザレアは叫んだ。
猫のような眼がレフィトをまっすぐに見上げる。
「カミレちゃんを閉じ込めないでくださいませ! 心配なら、皆様には私を通していただきますわ」
「…………はぁ?」
「私がまず用事をお聞きして、カミレちゃんに話しかけても良い内容か判断いたしますわ」
……ん? 何で?
マネージャーとアイドルか何かなの?
自信満々に言い切ったアザレアに、教室内は何とも言えない空気に包まれる。
「レア、意味分かんねーよ。とりあえず、そこをどこうな」
「え? 何故ですの?」
「悪かったな。続けてくれ。レアには言い聞かせておくから」
ゼンダ様はアザレアの手を引っ張り、クラスメイトの輪の外へと連れて行った。
教室の外から、アザレアとゼンダ様の言い争う声がする。
続けてと言われても、この状況、どうすればいいの?
「えっと、ご心配していただいたことは感謝いたします。また、お騒がせして申し訳ありませんでした」
「──っ。カミレが謝ることじゃないって」
「うん。でも、血がたくさん出たのを見て、怖い思いをさせたのは事実だから」
好奇心だけで話しかけてきてくれたのでは、ないのだろう。
純粋な心配だけでもないだろうけど。
「頭は三針縫いましたが、直に包帯も取れます。日常生活に支障はありません。なので、もうご心配には及びません」
ニコリと笑い、境界線を引き直す。
レフィトが普段から笑っている理由が身に染みる。笑顔は防御だ。
仲良くなるのにも有効だけれど、距離を詰めさせないことにも役に立つ。
「そ、そうか。なら、良かった……」
ぱらぱらとクラスメイトたちが離れていく。
クラスメイトたちと仲を深めるチャンスだったと思う。だけど、クラス全員と仲良くしたいのかと聞かれたら、そうでもないのだ。
今のままで、十分なんだよね……。
「カミレちゃん、ゼンダ様が話になりませんわ!」
バタバタとアザレアが戻ってくる。
「それは俺のセリフだ。もう二度と、無理やり話に突っ込んでいくなよ」
「だから、何度も嫌だと言ってますわ! カミレちゃんは私が守るんですの。もう絶対に痛い思いなんかさせませんわ!」
アザレアがゼンダ様を睨みつける。
気持ちは嬉しいけど、ゼンダ様の気持ちを考えると、複雑だ。
「アザレアちゃん。ゼンダ様はアザレアちゃんのこと心配してるんだよ」
「……それは、分かっていますわ」
「うん。それなら、ゼンダ様の話をもっと聞いてあげて」
この怪我は、アザレアの心に大きな傷を与えたのだろう。
それからしばらく、三学期が終わるまでアザレアは学園で私にべったりだった。
悪役令嬢にざまぁされたくないので、お城勤めの高給取りを目指すはずでした@comic
の第5話がコミックシーモア様にて、昨日5/1に先行配信しました。
今回もとても面白いので、よろしければ是非!




