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【コミカライズ開始】悪役令嬢にざまぁされたくないので、お城勤めの高給取りを目指すはずでした(Web版)  作者: うり北 うりこ@ざまされコミカライズ開始
第三章

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もう二度と傷つけさせたりしない④〜レフィトside〜


 カミレは少し困ったように眉を下げ、王子をまっすぐに見る。


「私、怒ってはいませんよ」

「それなら──」

「けれど、許すとも言ってません」


 静かに告げた声が謁見の間に響く。


「ログロス様は、怒りに任せて私のことを押しました。それは、ご自身の感情のコントロールができていないということです」

「それはそうだが、カミレ嬢が怒らせるような事を言うから……」


 王子の言葉に、カミレはにこりと笑みを浮かべる。

 けれど、青空のような瞳には、冷たさが見える。


「レオンハルト王子。つまり、今回のことは私に非があったと認識されていると思って、間違いございませんか?」

「何を言って──」

「そうよ。レオンハルト様に失礼だわ」


 マリアン嬢が()かさずカミレを責める。

 この期に及んで、本当にこいつ等は変わらない。


「謝罪をしたその口で、カミレに原因があるって言うとはねぇ。怪我をした瞬間を、血が流れているのを見てもなお、自己保身ばかり……。他責思考が過ぎるんじゃない?」

「今の言葉は聞き捨てなりませんよ」


 オレが口を挟めば、机を叩き、立ち上がりながらデフュームが言う。


「カミレ・ハオトレ嬢が、マリアンを悪しざまに言ったことが原因なのは、間違いありません。ですよね、レオンハルト」

「え? あ、あぁ。そういう側面はあるかな」


 自分に話を振るなという気持ちが透けて見える。

 まさか、呼び出されることが数日前から分かっていたのに、誰一人として何も考えてなかったの?

 謝れば済むと思っていたにしても、本当に甘いなぁ。


「むしろ、こちらが被害を訴えるべきです」

「いけないわ、デフューム。カミレさんだって、悪気があったわけではないのよ……」

「あぁ、マリアンは何て心優しく気高いのでしょうか」


 王子は顔色を悪くして口を閉ざし、デフュームはマリアンを崇拝して非はカミレにあると言う。マリアンは、目に涙を溜めて自己保身に走る。

 王の御前だというのに……。

 ここまでくると哀れだな。


 この状況を止めないのかと、王を見れば、静観していた。

 彼らの保護者たちも顔色を無くしたり、赤く染めているものの、何も言わない。

 そんな中、この状況を止めたのは、意外にもログロスだった。


「…………カミレ!」


 大きな声なのに、語尾が震えている。


「悪かった……。怪我をさせるつもりなんか、なかったんだ」


 カミレに向けられていた視線は逸らされ、うなだれている。

 もしかしたら、カミレは許してしまうかもしれない。

 そうなったら、これ以上あいつ等を責めることは難しくなる。

 ……駄目だ。オレが許せない。


「カミレ、受け入れないで……」


 囁やけば、カミレと視線が交わる。

 オレに向けるその瞳は、春のように暖かいのに、冬の晴れ空のように澄んでいて、思わず息をのんだ。


「心配しないで」


 小さく笑みを浮かべ、カミレはログロスへと視線を戻す。


「ログロス様」


 いつもと変わらない声のトーン。

 けれども、誰も口を出せない雰囲気がそこにはあった。


「本来であれば、私はこの謝罪を受け入れるべきでしょう。私は子爵家の娘で、あなたは辺境伯のご子息。何一つ意見を言える立ち場に私はいません」


 カミレが言葉を区切れば、息遣いが聞こえてきそうなほど場は静寂に包まれる。


「それは私だけではなく、下級貴族……いえ、辺境伯家より家格の低い者、すべてに当てはまります。ログロス様のしてしまったことは、あなたの意思に反する言動をすれば暴力という手段を取られるということ。恐怖の植え付けです」

「──っ! いくらなんでも、その言い方はあんまりよ。ログロスが可哀想だわ」


 マリアンが言えば、視界の端で国王が真面目な表情をしながらも、瞳の奥は愉しそうに笑っているのが見えた。

 どうせ、お手並み拝見とでも思っているのだろう。


 加害者なのに被害者面する面々も、面白がる国王も、自己保身を考える王子も、この期に及んで何も言わない保護者たちも……、この世は汚いものが多すぎる。


「マリアン嬢は可哀想だと言うけど、実際に被害が出てるの分かってるよね? 特に女子生徒は恐怖を感じたはずだよ。体格の良い男子生徒相手に、どうやったって力で敵わないんだからさ」

「私が話せば、皆、ログロスが本当はそのようなことをする人じゃないって、分かってくれるわ」


 目に涙を溜めて訴えるけれど、心を動かされるのは、この中ではいつもの面々くらい。

 その手は使えないよ。


「分かってくれるって言うけど……」


 あり得ない。そう続くはずだった言葉は、カミレに腕を引かれて止められる。


「私に話させて。ログロス様は、自分のしたことの重さを知るべきだもの」

「……それはログロスのため?」


 どうして怪我をさせた相手を心配するの?


「違うよ。泣き寝入りをする人を減らすためだよ」


 ざわりと心が揺れる。

 強さが眩しくて、それでもオレ以外の誰かのために動くことが小さく心に爪を立てる。

 でも、オレはそういうカミレだから好きになったんだ……。


「私のことはレフィトがいつだって守ってくれるけど、他の人はそうじゃないから。だから、私も少しだけ手を伸ばすの。レフィトがいてくれるから、できるんだよ」

「……うん。カミレのことは何が何でもオレが守るよ」


 今度こそ、絶対に。

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