2巻発売記念ss レフィト、デフュームの眼鏡を壊すの巻~レフィトside~
ssアンケート1位のお話です。
楽しんでいただけますように!!
カミレは、眼鏡をかけた人が好きだ。
今でこそ、デフュームを見ていることはなくなったけれど、一時でもカミレに好意的な視線を向けられていたデフュームに、思うことがないわけじゃない。
というか、思うところしかない。
「デフュームさ、眼鏡かけるのやめてくれないかなぁ?」
男女別授業の時、デフュームを捕まえてそう言えば、意味が分からないという視線を向けられる。
「何、訳の分からないことを言っているんですか?」
「だーかーらー、眼鏡をやめろって言ってるんだよぉ」
オレだって、急にこんなことを言われたら、はぁ? ってなるだろう。
だけど、デフュームが眼鏡をかけているというだけで、イライラするのだ。
「久々に話しかけてきたと思ったら……。馬鹿なことを言うのは止めてもらえます? それと、あの貧乏人と一緒にいるのもいい加減終わりにしたら、どうですか?」
「……貧乏人って、誰のことかなぁ?」
誰を指しているか分からないほど、鈍くはない。
今すぐにでも殴って、ついでに眼鏡を壊してしまいたい。
それでも、誰かきちんとさせないと、言い逃れされてしまうだろう。
殴りたい衝動を抑え、へらりと笑えば、小馬鹿にするような笑みをデフュームは浮かべた。
「そんなことも分からないんですか? 貴方の婚約者のカミレ・ハオトレ嬢ですよ。学園にふさわしくない貧乏人のくせに、よく平気な顔で通えるものです。神経が図太いとしか思えませんね」
「へぇ?」
よくオレの目の前で、カミレのことをそんなに悪く言えたねぇ?
殴るだけじゃ足りない。すぐにでも殺したい。
けど、我慢だ……。
カミレはオレが誰かを殴ることも殺すことも、望んでない。
報復はしても、精神的苦痛にしないと。それも、正攻法がいい。
「デフュームさぁ、オレがどれだけカミレを愛していて、大切に想っているか、まさか気付いてないってことはないよねぇ?」
「そのこと自体がおかしいんですよ。いったい、どんな策を講じたんだか……」
「そのうるさい口、閉じてくれる?」
やっとオレの変化に気付いたデフュームは、一歩後ずさる。
だけど、逃がしてなんかやらない。
あぁ、良かった。軍事学の授業で。
戦術思考を養うために、たしかチェスをするんだったもんねぇ。
「ねぇ、デフューム。オレと一戦やろうかぁ? 今日はチェスでしょぉ?」
「べ、別にいいですけど」
「何賭けるぅ?」
「賭けって……。授業中にそのようなこと──」
「あぁ、負けるから賭けたくないのかぁ。ごめんねぇ、気付かなくって」
そう言ったオレの言葉に、分かりやすくデフュームは眉間にシワを寄せる。
中指で眼鏡のブリッジ部分を押し上げると、オレを睨んだ。
「良いでしょう。私が勝ったら、ハオトレ嬢と縁を切ってください」
「じゃあ、オレが勝ったら、その眼鏡ちょうだい」
「……もっと他にあるでしょう?」
「ないよぉ。だって、デフュームのプライドはズタズタにできるからさぁ」
何より、あまり派手な要求をすると、カミレにバレた時に困った顔をさせちゃうかもしれない。
そんな顔のカミレももちろん可愛いけど、やっぱり笑っててほしいから……。
「じゃ、始めようかぁ」
こうして始まった、オレとデフュームのチェス勝負。
たぶん、デフュームはかなり油断しているだろう。オレ、デフュームに勝ったことないしねぇ。
コト、コト……っと、互いに駒を動かしていく。
デフュームは、自分の勝利を確信しているようで、余裕たっぷりだ。
だけどさ、誰が自分の実力を普段から簡単に教えるのかなぁ?
油断させるのって、時に絶大な効果を発揮するよねぇ。
ま、オレは誰が相手でも油断なんてしないけど。剣を握っている以上、少しの油断が命取りになるって嫌というほどに知っているから。
「まったく、この程度でよく賭けなんて持ち出したもんですよ。ハオトレ嬢との婚約を破棄したところで、私たちのところに戻ってこれるなんて思わないでくださいね。もう貴方の居場所はありませんから」
「別に戻りたくないから、安心してぇ」
「強がっていられるのも、今のうちで…………。え?」
「やっと、気付いたぁ?」
もう、どうあがいても盤面をひっくり返すのは無理だろう。
さぁ、カミレを悪く言ったクズのプライドをぐちゃぐちゃにしてやろうか。
体を動かすことは苦手でも、頭脳戦なら負けないと思っていたんだろ?
馬鹿だなぁ。
「──チェックメイト」
ヒュッとデフュームの喉が鳴る。
「はい、眼鏡ちょうだい」
「嘘だ……。今まで一度も、レフィトに負けたことなんてないのに……」
「当たり前でしょぉ? 勝たせてあげてたんだからさぁ」
「はい?」
「勝てるものでも、より確実性を高めるべきなんだよぉ。何で、いつもオレが全力だなんて思ったわけぇ?」
油断してくれれば、より勝つのが簡単になるからね。
「じゃ、眼鏡もらうからぁ」
そう言いながら、デフュームの顔から銀縁フレームの眼鏡を外す。
それを両手で持つと、少しの力を加える。
──バキッ。
眼鏡を曲げれば、簡単にフレームは折れた。
「あれ? うっかり壊しちゃったぁ。もういらないから、返すねぇ」
折れた眼鏡をさっさとデフュームに返す。
「あ、そうそう。オレがデフュームの眼鏡を壊したこと、誰にも言わないでねぇ? もし、誰かに知られたら、その時はデフュームを眼鏡のようにしてやるからぁ」
自分が折られているのを想像したのか、デフュームは青い顔で何度も頷いた。
授業終了のベルが鳴り、教室へと戻れば、既にカミレがいる。
「カミレ、ただいまぁ」
「おかえり」
笑顔で出迎えてくれたカミレだけれど、急にびしりと動きを止める。その視線の先にはデフュームが……。
「え? 眼鏡がない!?」
戸惑った様子でカミレはデフュームを見ていて、すごく面白くない。
何で、デフュームを見るんだよ……。
「眼鏡がないなら、もっと興味ないでしょぉ?」
「……もしかしてレフィト、何かした?」
「えー、何もぉ?」
オレはただ賭けに勝って、眼鏡をもらっただけだ。
それをうっかり壊してしまっただけ。
次の日、デフュームがいつもの銀縁メガネをかけてきた時、カミレはどこかホッとしたようにデフュームを見た。
ふーん。予備の眼鏡かぁ……。何本眼鏡を壊せば、いいんだろうねぇ?
またあの眼鏡、壊さないとだ……。
カミレに一時でも好意的な視線を向けられていた。
そのことがやっぱりオレは、許せないのだ。
いかがだったでしょうか?
初期のレフィトなら、確実に奪い取りバキッとやってたよな……と、レフィトの成長を感じながら書いていました。
楽しんでいただけたら、嬉しいです。
さて、本日2巻発売しました。
書籍にはレフィトside、ゼンダsideの書き下ろしssがついております。
電子書籍限定のssもありますよ。、
また、書泉ブックタワー 秋葉原店様に、『悪役令嬢にざまぁされたくないので、お城勤めの高給取りを目指すはずでした2』のサイン本が発売となっております。
全国で、うり北のサイン本発売はこちらのみ!!
お近くの方は是非(*´︶`*)
引き続き、ざまされをよろしくお願いします。




