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建国祭に行こう③

 

 メイン会場に入ると、色とりどりの高級ドレスや宝石、絶対に高いと分かる調度品、写真映えしそうな軽食やスイーツ、シャンデリアの明かりを映す磨き上げられたシャンパングラス、それを手に取る人々の(まと)う貴族独特の雰囲気、そのすべてにHPを削られた。

 

 場違い。絶対に私、場違いだよ!

 レフィトのおかげで、私も考えるだけで恐ろしいお値段不明の高級ドレスにアクセサリーを身につけているけど、ここは私には刺激が強すぎるよ。

 この絨毯(じゅうたん)、踏んでも本当にいいんだよね? 弁償できないからね⁉

 

「カミレー、どうしたのぉ?」

「この空間がごりごりに私のHP削ってくる……」

「えいちぴい?」

「寿命が縮んでいくのを感じる。眩しすぎるよ……。やっぱり私にはまだ早かった……。ううん、縁を持ってはいけなかった空間なんだと思う」

「カミレは、ここにいると早く死んじゃう?」

 

 その言葉にレフィトを見れば、心配そうに私を見ていた。

 琥珀色の瞳が不安げに揺れている。あぁ、犬耳としっぽも元気がなくなってるや……。

 

「ううん、そんなことないから大丈夫だよ。疲れるけど、寿命には関係ないから。そういう気持ちになるってだけで」

「そうなのぉ? でも、もう帰ろっかぁ」

 

 え、帰る? 帰ってもいいの?

 でも、学園の生徒は強制参加なんでしょう?

 正当な理由なく不参加だと、進級もできなくなるって学園規則で読んだんだけど……。

 

「進級できなくならない?」

「そこは、色々と手段を用いればどうにでもなるかなぁ」

 

 へらりと笑ったレフィトに、正攻法じゃないな……と思う。

 レフィトは、私のためなら悪いことも平気でやりそうなんだよね……。

 

「ありがとう。でも、ちゃんと参加するから大丈夫だよ」

「でも、つらいんでしょぉ?」

「……私のためにって、正しくないことさせたくないから。正攻法じゃ駄目なことがあるのは知ってるよ。でも、なるべくレフィトにそんなことしてほしくないの」

 

 そう言った私を一瞬だけ驚いた表情で見たあと、レフィトは眉を下げてへにゃりと笑う。

 

「カミレには敵わないなぁ」

「……それ、私のセリフだよ。いつもレフィトには敵わないって思ってるよ」

「えー、そんなことないと思うけどなぁ」

 

 くすくすと笑うレフィトにつられて、私の口角も自然と上がっていく。

 レフィトと一緒なら、今日を乗り越えられるよね? そう思った時──。

 

「レフィト、ごきげんよう。それから、カミレさんも」

 

 たくさんの人を引きつれ、豪華な真っ赤なドレスを身に纏ったマリアンがにこやかに微笑んだ。

 

「…………」

「……ごきげんよう、マリアン様」

 

 何も言わないレフィトを肘でつつく。けれど、レフィトはマリアンへと挨拶をしない。

 その姿に、マリアンの取り巻きたちはレフィトを睨んだ。

 

「レフィト。マリアンが挨拶しているのに、その態度はどうかと思うよ」

 

 ごもっとも過ぎるレオンハルト(王子)の言葉にレフィトはへらりと笑うと、王子に視線を向けた。

 

「こんにちは、レオンハルト王子。ご機嫌いかがですか?」

「なっ……、俺にではなく、マリアンにだな──」

「騎士であるオレは、残念ながら国に仕えている身なんで、王子は無視できないんだよねぇ。でも、それ以外には仕えてないからさぁ」

 

 へらりへらりと笑いながら、鋭い眼差しを細める。

 その姿に、周囲の温度が下がった気がした。

 

「ちょっと、レフィト……」

 

 まずいって。公衆の面前で言うなんて、誰が聞いてるか分からないんだよ?

 慌てて制止の声をあげたけれど、レフィトは私に向かってあまやかに微笑んだ。

 

「ま、一応、王子にはきちんと挨拶するけど、オレ自身はカミレに剣を捧げてるんだよねぇ。カミレが最優先だし、守るべき人、守りたい人も、オレの中でしっかり線引きされてるってわけ。この意味、王子に分かるかなぁ?」

 

 ひ、ひぇぇぇぇぇえ。駄目だって、完璧にアウトだから!

 どうしよう……。誤魔化す? どうやって?

 そう思っていたら、マリアンが口を開いた。

 

「レフィト……、ありがとう。私が頼んだから、きっとここまでカミレさんのことを気にかけてくれるのね?」

「へ⁉」

 

 ど、どうしたの? マリアン、この間まで、私の元に戻ってきて。レフィトが脅されてるって言ってたよね?

 あれ? 記憶違い?

 ちょっと、この展開が予想外過ぎて、どうしたらいいか……。あ、王子たちもちょっと困惑してるじゃん。

 

「奨学生として入学されたカミレさんのこと、レフィトにお願いして良かったわ。本当にありがとう。私の願いに答えてくれて」

 

 周りに聞こえるよう、はっきりとマリアンは言う。

 もしかしなくても、レフィトが自分のそばからいなくなったのではなく、マリアンの願いを叶えているように見せてる?

 え、何でわざわざ?

 

「オレがマリアン嬢のためにするわけな──」

「いいのよ。最後まで言わなくても! 今日もきっと初めての社交界にカミレさんは戸惑っているわ。レフィト、カミレさんをお願いね」

 

 レフィトの声をマリアンは遮ると、慈悲の笑みを浮かべ、心優しい自分を周囲へと印象づけていく。

 それを本心でどう受け取ったかは分からない。けれど「さすが、マリアン様だわ」「なんて、お優しい……」という声がする。

 賞賛する人たちをチラリとマリアンは見て口の端をほんの一瞬あげた。そして──。

 

「レフィト、そんなことを言っては駄目よ。今はただ物珍しいだけで、直に飽きるんだから。戻ってこれなくなるでしょう?」

 

 周りには聞こえないように声を潜めて言った。

 艶やかな笑みを浮かべるマリアンの姿は、自信に満ちていて、そんな未来を確信しているかのように見えた。


 

 

 


 今回は特別編でカガチのインタビューです。


「いやー、インタビュー押し付けられた時は作者マジふざけんなって思ったけどさー。俺もしてもらえるんなら、悪くないよねー。誰が来てくれるんだろ?」


 コンコンコン……。


「おっ、きたきた! はーい」


 ガチャ。


「…………」

「あ、カガチさん、こんにちは」

「…………え? カミレちゃん?」

「先日はありがとうございました。今日のインタビューの担当は私だと作者から聞いてきました」

「…………マジ?」

「はい!」

「(作者ーーーーっ! ほんっとに、何考えてんだよ。これ、レフィトの地雷だろ!? くっそー!!)」

「どうしましたか?」

「あ、ううん。何でもないかな。レフィトは?」

「レフィトですか? お留守してますよ?」

「そうなんだ……。インタビューのこと、何か言ってなかった?」

「え? あ、大丈夫ですよ。しっかり話してきましたから」

「そっかー(これ、大丈夫じゃないやつだわ)」

「はい。なので、今日は──」

「よし、今日は解散しよっか!!」

「へ?」

「ね、そうしよう。俺、自分で自分のインタビューできるし……。うん、それがいい。すんごい名案じゃん」

「えっ? えぇっ!?」

「さ、部屋を出よっか。ふたりきり、良くない。本当に良くないから!」

「(え? どういうこと!?)」


 カガチはぐいぐいとカミレを押して、部屋から出る。

 すると、そこには──。


「うげっ!!」

「ねぇ、何でカミレに触ってるのかなぁ?」

「え!? 誤解、誤解だレフィト! お前、何で剣なんか持ってるんだよ!!」

「それはねぇ? で、何でカミレに触ってるのぉ? その手、早く離しなよぉ」


 レフィト、剣に手をかける。


「ちょっ、レフィト!?」

「うん? 止めないでねぇ」

「駄目だからね!! というか、何でここにいるの?」

「おむかえに来たんだぁ」

「おむかえって、私もついさっき着いたばっかりなんだけど……」

「うん、知ってるぅ」

「(うわぁ、こっそりついてきてたんか。普通にアウトだかんな、それ……)レフィト、俺のインタビュー、自分ですることにしたから」

「……そうなのぉ?」

「だから、お嬢さんを連れてさっさと帰れよ」


 レフィト、こくりと頷く。


「お嬢さんも、今日はありがとね」

「えっ? でも、まだ何も……」

「ほら、帰った、帰った! (あー、仲良くてうらやましい。俺も婚約者ほしいなー。気の強いお姉様系の……)」


 ぽつんと残るカガチ。


「はぁ……。自分に自分でインタビューかぁ……」

「あら、カガチ様。早く着いていたのですね。お待たせしてしまって、申し訳ありません」

「え? ネイエ様?」

「はい。作者より、インタビューをするようにと言われてきました」

「(……どういうこと? まさか、作者の奴、こうなると分かってて最初からふたり?)」

「どうかなさいましたか?」

「あ、ううん。ありがとうございます。よろしくお願いします」


 カガチとネイエは部屋に入って行った。




 はい、スミマセン。次回こそ、カガチにインタビューします。ついね、遊び心がね……。

 インタビューは、来週までお待ちください。

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 web版を加筆し、SSを書き下ろしましたので、お手に取っていただけますと嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
 あはっ♪ マリアンさん、我田引水を強行しちゃうつもりですかぁ? でも引っ張るお水はレフィトさんな訳でしょう? いやぁ、実らないって笑。って言うか、その田んぼは絶対に枯れちゃいますから。毒抜きはカミレ…
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