お盆の帰省、思い出と。
今日はお盆。実家に帰る日だ。
実家は山奥の田舎でかなり遠いが、この時期はいつも帰るようにしている。
母さん、元気かな?父さんが死んじゃってから、ふさぎ込みがちだからなあ。
お盆だし、父さんも帰ってくるのかなあ。
帰省道中、女の子に会った。
一人で帰省するようだ。偉いなあ。
ちゃんと乗れるか心配だったらしいし、帰省手段の大きな乗り物に一人で乗るのは少し怖かったというが、一度座ると慣れたという。
初対面の私に躊躇なく話しかけるあたり、少し心配でもある。
お土産持っていこうかな。この饅頭とか母さん喜びそうだ。
花の種とかも洒落てるなあ。
お、彼岸花だ。綺麗だな。
久しぶりの風景。ここの川でよくザリガニ釣ったなあ。
お、ポチ!迎えに来てくれたの!?まだ家まで少しあるのに元気だなあ。
あ!母さん!久しぶり!
ちょっとやつれてるけど元気そうだな。よかった。
母さんがポチを持ち上げて家に帰る。私も同行。
母さん、この前幼馴染の優っているじゃん?あいつが宝くじで30万当てたんだって。地味にすごいよね。
母さん、ちゃんとご飯食べてる?家族が死んじゃって落ち込むのは分かるけど、ちゃんと食べなよ?私はちゃんとここにいるから、心配しないでね。
あ、家の前にちゃんと迎え火焚いてる。律儀だなぁ母さんは。
久しぶりの母さんのごはん。
お盆だから当たり前だけど、少し線香くさい。けど、懐かしくて美味しい味。
母さん。ありがとう。
その後、家族がみんな帰ってきた。兄と叔父も。
私の姪っ子に当たる女の子と目が合ったけどすぐ逸らされた。人見知りだなあ。
私のピアノ。もう弾けなくなったけど、昔は好きだったなあ。
スーパーファミコンだ。懐かしい。
この部屋には誰も来ないし、ちょっと遊ぼ。
え?マリオってこんなに難しかったっけ?
うわ死んだ。もう一回!
…………
あ、夜が明けた。結局徹夜でやっちゃった。父さんがいたら怒られるな。
散歩してこよ。
ふう田舎は空気が美味いなあ。
一本杉。ええっと………あ、あった。
あさい はな ━━━
木の傷と、拙い名前。
当時の私の身長かな。
学校行ってみよ。
廃校。
寂しいけど仕方ない。
懐かしいなあ。
帰ろ。
あ、優じゃん。帰ってたんだ。
30万何に使った?
冗談だよ。
墓参り行くの?私も付いて行こ。
浅井家之墓。
なんで優が私の家の墓に祈るんだろう。お世話になったから?律儀だなあ。
優も実家に帰る。
分かれ道。小学校の帰り、いっつもここで二人で喋ってたよね。
右は優の家、左は私の家。
別れる。
「好きだよ。優」
別れ際、小さい声で呟いてみた。声は届かなかったようだが、一瞬振り向いたのでドキッとした。
翌日、母は送り火を焚いた。
もう帰る時間か。寂しいな。
茄子でできた牛に跨る。
あ、父さん。帰ってたんだ。久しぶり。
幽霊同士でも波長が合わないと見えないんだよね。
じゃあ、また来年。母さん、元気でね。