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悪徳令嬢、ドバトになる  作者: カメメ
3章 楽しい副隊長との暮らし
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1話 彼との暮らし

 

 ピジン・コルンバ副隊長は、不思議な人だった。


 動物にはチョコを煮詰めたように甘く優しく、饒舌になる。


 わたくしが羽を自由に動かせるようになったときだって、ピジン副隊長は感極まって涙を流し、大きな拍手をしていた。


 けれど、あの部下兼友達であるバスさん以外のひとには、彼は前評判通り生真面目な人だった。


 前に、警備隊隊長が彼を叱りにきた。


 一応、警備隊のトップだが、警備隊隊長は名誉職なため、トッキャ大臣へ媚びへつらう能力はあるものの、警備隊をまとめる実力はない。


 メガネをあげて、色々と文句を言っていたが、どれもピジン副隊長に叱る内容ではなかった。


 しかし、ピジン副隊長は部下兼友達さんに怒ったように感情を高ぶらせなかった。


 淡々と、「申し訳ありません」「分かりました」を繰り返すばかり。


 ついには、隊長は舌打ちをして、「全く、つまらない男ですね」と甲高い声で責めたて、帰っていった。


 部屋に戻った彼は、わたくしと目が合うと、「煩くしてごめんね」と言って、おやつをくれる。


 ピジン副隊長は変な人だ。


 変な人で、優しくて、まるで魔法使いのような人だ。


 なんて、昔のわたくしが聞いたら鼻で笑うだろう。


 事実、彼は魔法使いではない。


 けれど、彼の一挙一動は、わたくしの心を容易く変化させる。


 優しく声をかけてもらえると、わたくしの心はふわりと浮かぶ。


 触れてもらった部分からは、力が沸いてくる。


 心地良さそうにしていると、ぎゅっと抱き締めてもらうと、心の中がざわざわする。


 彼が部屋にいないときは、


 わたくしの心のなかが空っぽになって、寒くて寒くて仕方ない。


 仕方ないのだ。


 彼は、警備隊の実質的なトップ。


 トハエイはトッハ国の首都であるが、いや、首都であればこそ、治安がいいとはいえない。


 彼は多忙で、よく家を空ける。


 ピジン副隊長はわたくしを信頼して、部屋の中を自由にさせてくれている。


 温度調節も完璧で、暖かい。


 なのに、苦しくて仕方ない。


 だから、わたくしはピジン副隊長が帰ってくると、ついついそっぽを向いてしまう。


 まるで子供のようだ。


 就寝のときになると、「なんであんな態度をとったのだろう」と羽をバタバタさせるが、心を偽ることはできず、毎回のように機嫌が悪くなってしまう。


 そんなわたくしに、ピジン副隊長は優しく接してくれる。


 それが嬉しくて、嬉しくて、堪らなかった。


 間違いなく、わたくしは幸せだった。


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