タケゾー「恋人がとんでもない新技を開発した」
電撃魔術玉という、ド〇ゴンボールにでも出て来そうな技。
隼が空色の魔女の姿で放ったのは、それこそ漫画やアニメでよくありそうな電気ボールの一撃。
一度右の腰辺りで両手の平の中に電気ボールを作り、前方へ押し出すようにして放つという、これまでの肉弾戦スタイルから一転した新技。
――なんだか、有名なドラゴンの漫画やアニメを彷彿とさせてしまう。
それにより、ナンパ男は派手に感電したようにダウン。
死んではいないが、これはやり過ぎではなかろうか?
「やっべ……。威力の加減を間違えた……。一般人相手には使えないか……」
「なんて新技を覚えたんだよ……。バックドロップでも決めるのかと思ったのにさ……」
「いやー。パンドラの箱を漁ってたら、ジェットアーマーの推進機構の設計図を見つけちゃってさ。それを応用して色々やってたら、電撃魔術玉なんていう新技を思いついちゃって」
一応は一件落着したので隼に話しかけ、さっきの電気ボールの新技についても尋ねてみる。
話を聞く限り、隼は俺が入院している間にある程度、パンドラの箱の解析を進めていたようだ。
まだ全部はないらしいが、その中の一つがかつて俺もデザイアガルダに着せられたジェットアーマーの中枢たるジェット推進機構。
隼はその設計図を解読し、さらには自己流にアレンジしてしまったらしい。
――こういうのって、普通は同じものを作るところから入らないか?
「設計図通りに作ってみたんだけど、何故か本来のものより威力は抑え気味で小型化しちゃってね。今はこの手袋の手の平部分に収まってるこれがそうなのよ」
「本当にジェットアーマーに搭載してたのより小さいな。それで? どうしてそれがあんな電気ボールに発展したんだ?」
「威力を抑えたジェット推進機構により、アタシの両手の平の中で電気を流動的に蓄電し、それを放出する技をやってみたらできた」
「もう何でもありだよな。お前の能力って」
そんなアレンジ内容についても、隼は簡単に説明してくれた。よく見るとこれまでの魔女衣装と違い、両手に穴あき手袋が追加されている。
俺は理工学方面には疎いので、もう雰囲気でしか理解できない。もしかすると、有名な教授クラスの人間でも理解できないかもしれない。
本当に隼はこういう方面に強い。空色の魔女になって自在に電気を生み出せるようになってるから尚更だ。
「てかさ、タケゾー。今アタシと普通に話してるけど、色々と大丈夫なわけ?」
「あっ……。確かに空色の魔女と話してるところなんて、園児にどう説明すれば――」
俺も思わず声をかけてしまったが、よくよく考えれば俺も自分の保育園の園児と一緒にいる最中だった。
こんな姿を見て、変な噂を立てられると面倒だ。
どうにか弁明しようと、園児の方に目を向けるが――
「ねーねー? ソライロのマジョさんとタケゾーせんせー、なんのおはなししてるのー?」
「私達はお邪魔だからね~。あの二人だけにしておきましょうね~」
――何故かおふくろが園児を連れて、俺と隼の傍を離れていた。
いや、気遣ってくれたのは分かる。あの様子なら、おふくろがうまいこと煙に巻いてくれそうだ。
――他所の家の子供を勝手に連れまわしていいものかとも思うけど。
「しかもおふくろの奴、スマホにメッセージまで入れて来てるよ。『隼ちゃんとデートしてきなさいよね~』とか、本当に余計なお世話と言うかなんと言うか……」
「まあまあ、いいじゃんか。アタシも今日は予定もないし、タケゾーの調子が良ければ出かけたかったんだよね。行けそうかな?」
「まあ……隼も乗り気ならば、俺も構わないけど……」
「そいじゃ、決まりだね! 丁度人目もないし、ちょっとだけ待っててね」
またしてもと言うべきか、おふくろは俺の持っていた退院時の荷物まで持って行き、デートの流れまでセッティングするお節介ぶりだ。
ただその話を聞いた隼も喜んでいるので、俺としてもデート自体には賛成だ。退院したばかりだが、だからこそ恋人と一緒にどこかへ出掛けたくもなる。
俺の体調も問題なさそうだし、隼が変身を解除するのを待って出かけるとしよう。
キィィイン
「よし! おっまたせー!」
「あれ? いつもと格好が違うな?」
ブローチから放たれた光に包まれ、元の姿へと戻っていく隼。だが、その姿は普段の作業着ともデート用のお嬢様風ワンピースとも違う。
ロングスカートにジャケットのコーディネートで、茶色を基調とした色合いはどこか大人っぽさがある。
髪型もそれに合わせてか、軽くパーマを当てており、これもまた大人っぽい。
――これまでのお嬢様スタイルとは違って、新妻的なエロさ――魅力がある。
特に胸。ジャケットの前を開いている影響か、余計に強調されて見える。
「この格好? 実はだね、こっそりとコーディネートの研究や予算を貯めて準備してたんだよね」
「あのどこに行くにも土方スタイルだった隼が、まさかお洒落に目覚めるとはな」
「別にいいじゃんか。それとも、タケゾーはこういうの嫌? アタシには似合ってない?」
「普通に似合ってるから、俺もかえって直視しづらいんだよ……」
どこか色気を増した隼に対し、俺も思わず目を逸らしてしまう。
おふくろコーデのお嬢様スタイルとは違う。とにかく大人の色気が凄い。正直言うとエロい。
肌面積が多いわけではないのにこのエロさ。隼が美人なのは知ってたが、ここまでの可能性を秘めているとは思わなかった。
「それにしても、今日は隼も休みだったのか。それだったら、俺の退院に合わせて迎えに来そうな気もしたけど……」
そんな隼の新たな一面にドギマギしつつも、気になってしまうのは隼が今日俺が退院する時にいなかった理由。
わざわざ俺の入院先にまで清掃の仕事で押しかける隼なのだから、今日が休みなら退院の迎えに来ていてもおかしくはない。
自分の彼女に惚気た話ではあるが、どうにも気になってしまう。
「いやさー。アタシも最初はサプライズ的に、タケゾーが病院から出てくるところで現れて驚かそうとは思ったのよ」
「空色の魔女としておふくろのピンチに出現したのも、十分なサプライズだけどな」
「それはそうなんだけど、アタシもついさっき自宅から出発して、そこで丁度タケゾー達を見つけたからさ。アタシの方がサプライズ気分だったよ」
「まあ、おふくろを助けてくれたことには感謝するよ。やり過ぎだけど。……それで? その口ぶりだと退院時にいなかったのにも、何か理由があるのか?」
そんな隼なのだが、どうやら本当に俺の退院に合わせて驚かせようとはしていたようだ。
こっちはこっちでその予想とは違う形で驚いたが、それなら隼はどうして俺の退院のタイミングに合わせられなくて――
「このコーデ、初めてやってみたんだけど、思ったより時間がかかっちゃった……」
「それで遅れたってことか……」
お洒落だって大変なんだよ。
これまで全く関心を持ってなかった隼なら尚更さ。




