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空色のサイエンスウィッチ  作者: コーヒー微糖派
怪鳥との決闘編
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それが真実だったのか。

隼の叔父、空鳥 鷹広。

どういうわけかピンチ中。

「ねえ! お巡りさん! あれってどうなってるの!?」

「そ、空色の魔女か!? この際だ。君の力を是非とも借りたい!」

「レスキューも要請したが、我々ではとてもあの車と車内の男性を助け出せそうにないんだ!」


 一度警察官のもとに降り立って事情を聴いてみるが、こっちもこっちで状況を飲み込めていない様子だ。

 何故か鉄塔に自身の車ごと乗せ上げられた鷹広のおっちゃん。色々と思うところはあるけど、だからって見過ごすことはできない。

 牙島の刺客の姿も見当たらないし、今はおっちゃんを救うのが最優先か。


「あの人のことはアタシに任せて! もしかすると、あんなことをした犯人がいるかもしれないから、お巡りさんはそっちに注意して!」

「分かった! 今は急を要する事態だ! 我々警察も君の援護に入る!」


 警察官にも了承を得て、ついでにどこかに潜んでいそうな刺客への警戒もしてもらう。

 救助もしなきゃいけないし、今は警察も空色の魔女どうこうなんて言ってる暇もないよね。快く引き受けてくれたことに感謝。


 そしてアタシは一人、デバイスロッドに腰かけながら高度を上げ、鷹広のおっちゃんの傍まで向かう。


「おっちゃ――じゃなかった。おじさん! どうしてそんなところにいるわけよ? 車がパンクした反動で、ここまで打ち上がっちゃったとか?」

「そんなわけなかろう! 急に馬鹿デカい鳥のバケモノに車ごと連れ去られ、ここに乗せられたのだ!」


 ひとまずおっちゃんと話をすると、怪我などはないようだ。

 一応はアタシの身内だし、これまでのいざこざ関係なく気になってしまう。


 ――それにしても、おっちゃんがこんなことになってる理由は見えてきた。

 どうやら、またデザイアガルダの畜生が現れて、今度はおっちゃんのことを狙ったようだ。

 ちょっと前にアタシにボコボコにやられたのに、本当に懲りない奴だ。

 もしかすると、牙島が用意した刺客というのも、デザイアガルダのことかもしれない。

 今は軽く周囲を警戒しても姿は見えないが、これは注意しながら動いた方が良さそうだ。


「さあ! アタシの手を取って! まずは安全なところまで避難するよ!」

「おお、助かった! さあ! 早くわしを助けてくれ!」


 アタシはいつデザイアガルダが出てきてもいいように、周囲を見渡しながら車内のおっちゃんに手を伸ばす。

 警戒はしつつも、まずは人命優先。おっちゃんもアタシが伸ばした手を掴んでくれる。


 まさか、あんなにいがみ合っていた鷹広のおっちゃんを、空色の魔女としてレスキューすることになるとは――






「馬鹿な小娘が! この車を貴様の棺桶にしてやるわぁあ!!」

「えっ……!?」




 ――そんな頭の中のちょっとした雑念と、周囲への警戒のせいで鷹広のおっちゃんの方をよく見れていなかった。

 おっちゃんはアタシの手を掴むと、いきなり車の中へ引きずり込んでくる。

 あまりに唐突なことだったので、腰かけていたデバイスロッドも地面へと落ち、アタシはそのまま車内に押し込められる。


 逆におっちゃんの方はアタシと入れ替わるように、空中へと飛び出してしまった。


「ひ、ひいぃ!? ちょ、ちょっと!? いきなり何をするんだい!? てか、危ない――」

「まだ気づかぬか!? このわしこそが、牙島の用意したゲームの対戦相手だということをなぁ……隼!!」

「えっ……!? ど、どうして……!?」


 アタシは鉄塔に乗っかった車の中から、鷹広のおっちゃんに驚愕の眼差しを向ける。

 いきなり車の中に押し込められた恐怖心もある。空中に飛び出したおっちゃんを助け出す必要もある。

 だがそれ以上に気になるのは、おっちゃんが語る言葉の意味。おっちゃんはアタシの正体を知っている。

 それに、おっちゃんこそが牙島の刺客ってのはどういうこと? もう訳が分からない。


 ――だが、そんな疑問はすぐに晴れていく。


「ウグオォォ……!」

「お、おっちゃん……!? な、何これ? なんなんだよ、その姿は……!?」


 空中に飛び出したおっちゃんだが、そのまま地面へ落ちていくことはない。

 それどころか、急速にその身に変化が現れているのがアタシも目に見えて分かる。




 ――その変化した姿は、アタシもよく知る忌まわしき仇敵の姿だ。




「このワシこそが貴様らが言うところのデザイアガルダであり、空色の魔女である隼の相手をする牙島の刺客ダァァアア!!」

「お、おっちゃんが……デザイアガルダ……!?」




 アタシが身内としてよく知る鷹広のおっちゃんの姿は、瞬く間に敵としてよく知るデザイアガルダの姿へと変貌した。

 確かに大凍亜連合から手に入れた研究データから、GT細胞というもので人間の姿を変異させる技術の存在は知っていた。

 だが、実際にその変異を目の当たりにすると、その異質な恐怖が肌を冷たくさせる。

 まさか人間から怪物形態への変身切り替えまで可能だったとは、アタシも考えが甘かった。


 いや、それよりも気にするべきことが一つある――




 ――アタシの唯一の肉親である鷹広のおっちゃんこそが、タケゾー父をも殺して多くの不幸をまき散らした仇敵、デザイアガルダ本人だったという事実だ。




「工場での態度から、空色の魔女が隼であることには気付いておったワ! よくもことごとく、ワシの邪魔をしてくれたナァア!!」

「な、なんでさ!? なんで鷹広のおっちゃんがデザイアガルダなんて……!?」

「この力は大凍亜連合から授かっタ! 貴様も最初からワシの言う通りにしていれば、富も名誉も力も手に入っていたのにナァア!」


 もうアタシは自分の頭の中を整理できない。鷹広のおっちゃんが語る言葉についていけない。

 おっちゃんは人間の持つ当然な――アタシから見ればどこか安っぽい欲望を語っているが、こちらはそれを耳に入れるばかりで、反撃さえもできない。


 ――アタシにとってのトラウマである『車の中』という状況が、その身を恐怖で縛り付けてくる。


「さア! 貴様もあの時の両親と同じように、その車を棺桶として転落して死ぬがいイ!」

「ま、待ってよ! 助けて! ほ、本当になんでこんなことをするのさ!? おっちゃんの目的は何なのさ!?」

「ワシの目的など一つしかなイ! より多くの富を手に入れ、一族として社会的地位を手入れることダ! だが、貴様はそんなワシの崇高な目的を、ことごとく台無しにしてくれタ! もういくら謝ろうとも、許しはせぬゾォオ!!」


 アタシは恐怖で身動きできず、デバイスロッドも落としてしまったので、空を飛んで逃げ出すことも叶わない。

 そんな怯えるアタシに鷹広のおっちゃんが語るのは、自らがこうしてデザイアガルダという力まで手に入れた理由。

 おっちゃん自身は自らの行いを正義と語るが、それは結局『一族のため』などという大義名分を借りた『自分のため』にしか聞こえない。

 自分が力を得たいから、大凍亜連合なんて反社組織と手を組んだ。自分が富を得たいから、その力で大凍亜連合の命令に従っていた。


 ――どんな大層な名分を掲げても、結局は全部自分のため。

 しかもそのために、タケゾー父を死なせ、タケゾーは今も苦しんでいる。

 許すとかそれ以前の話だ。それでも、アタシの体は車に押し込められた恐怖から、言うことを聞いてくれない。


 そんなアタシのことを理解してか、おっちゃんはさらに言葉を紡いでくる――




「貴様の両親にしても、ワシの話に従わなかったばかりに死ぬ羽目になったのダ! 親子揃っての愚か者どもガァ!」

さあ、これが真実です。

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