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空色のサイエンスウィッチ  作者: コーヒー微糖派
怪鳥との決闘編
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この忌まわしいゲームに乗るしかない。

タケゾーを救うためには、牙島の悪意あるゲームに乗るしかない。

「じゅ、隼ちゃん! む、武蔵はどうなったの!?」

「タケゾーのお母さん……」


 アタシは毒を受けたタケゾーを連れて、近郊でも一番大きい病院へと駆けこんだ。

 その時には空色の魔女の姿も元に戻し、病室で横になるタケゾーの傍にいるしかなかった。

 知り合いにも連絡を入れ、今はタケゾー母が慌てながらアタシとタケゾーのもとにやって来たところだ。


「む、武蔵!? あぁ……! どうしてこんなことに……!?」

「…………」


 タケゾー母はベッドで眠る息子に寄り添い、涙を流しながらその手を優しく握る。

 その様子には普段の穏やかさなどどこにもなく、ただただ我が子の身を案じる母親の姿のみ。

 病院の先生にも診てもらったが、結局解毒まではできていない。現在は昏睡状態に陥っており、ベッドの上で眠り続けている。


 タケゾーの毒を治すためには、やはり牙島の持っていた解毒剤が必要だ。

 このままでは牙島も言っていた通り、タケゾーは本当に死んでしまう。


 そんなことになればアタシもそうだが、タケゾー母も辛いなんて話じゃない。

 旦那さんが亡くなって間もないのに、息子のタケゾーまで命を落とそうとしている。

 家族をこうも連続で失おうとして、落ち着いていられるはずがない。

 ただ、アタシはそんな姿を黙って見ていることしかできない。




 ――タケゾーがアタシに協力してくれたせいでこうなってしまったのだから、かける言葉が見つからない。




「赤原 武蔵さんの関係者の方ですか? 少々、お話をしたいのですが?」

「あっ……。ちょ、ちょっと待って。話はアタシだけで聞くよ」


 昏睡が続くタケゾーのいる病室に、主治医の女医さんが入って声をかけてきた。

 タケゾー母はそれにも気付かず、ベッドの横でタケゾーの手を握って必死に声をかけ続けている。


 ――おそらくはタケゾーの容態についてだろうが、こんな状態のおふくろさんに今はそれを聞かせるのも酷だ。

 アタシは静かに病室の外に出て、一人で女医さんの話を聞くことにする。


「赤原さんが受けた毒なのですが、蛇などの爬虫類が持っている毒と同じ成分と思われます。ただ、毒の成分が当病院でも完全には解析不能でして、現在は抗生物質でなんとか凌いでいる状況です」

「そう……ですか」

「かなりの強毒性も持っているので、彼女様やお母様には申し上げづらいのですが、今晩が峠と思ってください……」


 女医さんは申し訳なさそうにアタシに語ると、そのまま立ち去ってしまった。

 タケゾーの命の危険性と女医さんの神妙な様子。アタシだって、胸が張り裂けそうなほどに辛い。

 今だってこぼれる涙を抑えられない。


 ――それでも、アタシにはやることがある。

 牙島が用意したゲームに乗り、解毒剤を手に入れる。

 アタシだってタケゾー母と同じように、タケゾーの傍にいたい。でも、アタシでなければ解毒剤は手に入らない。




 ――アタシの背負った責任は、必ずアタシの手で果たしてみせる。




「隼ちゃん! 武蔵が運ばれたって聞いたが、何があったんだ!?」

「デザイアガルダという怪鳥の一件ですよね!? タケゾーさんがどうして……!?」


 アタシが泣きながらも決意を込めていると、連絡していた玉杉さんと洗居さんも病院に駆けつけてくれた。

 この二人だって、タケゾーとは縁の深い人物だ。血相を変えて、廊下に一人で立ちすくんでいたアタシの方へ駆け寄ってくる。


「実はさ。こういうことがあって――」

「な、なんてこった……!? それじゃ、武蔵は本当に死ぬかもしれねえのか……!?」

「タ、タケゾーさんのようないい人が、どうしてこんな目に……」


 アタシもタケゾーの病状を説明すると、二人は困惑しながらも現状を受け入れてくれた。

 それでも、顔色は青ざめていくばかりで、完全に絶望に染まり始めている。


 ――でも、タケゾーを救う希望がアタシにはある。

 ここまでタケゾーを慕ってくれる人がいるのに、アタシのせいでタケゾーが死ぬ結末なんて絶対に認めない。


「……ん? 隼ちゃん? どこに行くつもりだ?」

「今は空鳥さんもタケゾーさんの傍にいるべきですよ?」

「本当はアタシもそうしたいんだけどさ、タケゾーを救うためには空色の魔女として動くしかないのよね」


 アタシは病院の屋上へと向かいながら、玉杉さんと洗居さんにもその方法を伝える。


 牙島が空色の魔女(アタシ)に用意したゲーム(挑戦状)

 それに勝利することができれば、タケゾーの毒を治せる解毒剤が手に入ること。

 そのためにも、アタシは今すぐにでも指定された展望台に向かうため、屋上へと出る。


「な、成程。その解毒剤があれば、タケゾーさんが救えるのですね。空鳥さんも不安でしょうが、こちらのことは私達でなんとか――」

「いや、待ちな。その牙島が言うゲームだが、罠の匂いがプンプンしやがる。ましてや、あの大凍亜連合の用意したステージだ。いくら隼ちゃんが空色の魔女だと言っても、絶対に何かあると考えるのが普通だろ」


 アタシの説明を聞いた洗居さんは困惑しながらも納得してくれたが、玉杉さんはそうもいかない。

 この中では誰よりも大凍亜連合に詳しいからか、アタシに対して警鐘を鳴らしてくれる。


「確かに罠かもしれないね。……でも、今は罠でもなんでも向かうしかないよ。だって、それ以外に方法がないんだからさ」

「……分かった。隼ちゃんがそう決めたのなら、俺が口出しできる身分でもねえな。武蔵とおふくろさんのことはこっちに任せろ。隼ちゃんはなんとしても、その解毒剤を手に入れて来てくれ」


 それでも、アタシの決意は揺らがない。

 泣きたくなる気持ちも、タケゾーの傍にいたい気持ちも、必死にこらえて目的地となる山を遠目に眺める。

 そろそろ出発しないと、指定された時間になってしまう。


 今回は本当にどんな戦いが待っているか分からない。

 懐から酒瓶を取り出して、十分な燃料を先にチャージしておこう。


「ンク! ンク! ――プハァ! それじゃ、アタシはそろそろ行くよ。二人とも、ここのことはお願いね」

「ああ、任せとけ」

「空鳥さんもどうかお気をつけて……!」


 これで燃料は整った。酒瓶をしまうと、今度は変身用のブローチを手に取る。。

 玉杉さんと洗居さんというアタシのことをよく知る二人に見守られながら、アタシは空色の魔女になろうとする――




「じゅ、隼ちゃん~? こんな屋上で何してるのかしら~? 今は私からもお願いだから、武蔵の傍にいて頂戴……!」

隼の正体を知らない人が姿を見せてしまう。

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