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空色のサイエンスウィッチ  作者: コーヒー微糖派
怪鳥との決闘編
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くつろいでたのに邪魔が入った!

物語は不穏な方向へ。

「キハハハ! こないなベッピンさんが、空鳥はんの姪っ子なんでっか? こらぁ、えらい上玉やおまへんか?」

「変に色気づいた容姿をしてるが、普段はもっとガサツな娘だ。牙島(きばしま)さんも余計な口出しは遠慮してくれ」


 突如店に入って来た鷹広のおっちゃんだが、一緒に入って来た全身迷彩コート関西人と一緒に、ブツブツ喋りながらこちらに近づいてきた。

 関西人の方は牙島(きばしま)って名前らしいけど、こんな人がおっちゃんの知り合いにいたんだ。アタシも知らなかった。


「……おっちゃん。一体、ここに何の用? そんな怪しそうな人まで連れてさ?」

「人が用意した縁談を断る不出来な姪っ子は、おとなしく引き下がってろ。今回は玉杉さんの方に用があるんだ」

「あ~? 俺に用事だ~?」


 そんなおっちゃんと怪しい関西人だが、アタシのことは軽く相手しただけで、ズケズケとカウンターの向こうにいる玉杉さんの方に向かっていく。

 その様子はとてもではないが、好意的とは言いづらい。むしろ、どこか威圧的にも感じる。


「玉杉さんが借金のかたに抑えた工場なんだが――」

「そいつを買い戻したいって話か? それだったら、さっき隼ちゃんからも聞いたよ。生憎、今はその話をする気になれねえな」

「だったら、一つだけ尋ねさせてもらう。あの工場のどこかにUSBメモリが隠されていたかもしれんが、心当たりはないか?」


 店の空気も一気に凍り付いてしまい、鷹広のおっちゃんと店長の玉杉さんが睨み合いながら話を進めていく。

 その中で出てくるのは、アタシもついさっきまでしていた工場の話。ただ、どうにもおっちゃんの論点がおかしい気がする。

 『工場を取り戻したい』ということより『工場にあったUSBメモリを手に入れたい』とでも言いたげな語り口。

 もしかすると、おっちゃんは工場のことなんてどうでもいいのかもしれない。


 ――いや、それよりも気にするべきは、話題にも挙がったUSBメモリについてだ。

 そのUSBメモリとは、おそらくアタシが玉杉さんから預かったもの。工場内に隠すように保管されていたのを、玉杉さんが見つけてくれたものだ。

 あの中にあった革新的な技術データのおかげで、空色の魔女として使う腕時計型ガジェット、ロッドのデジタル収納、トラクタービームの射出といった発明が可能となったのだ。

 ただ、あの技術は娘のアタシだから解読できたものであり、普通の人が手にしてもただの宝の持ち腐れ。

 そんなものを、鷹広のおっちゃんが欲しがっているということなのか? そもそも、アタシでさえ存在を知らなかったものを、どうしておっちゃんが知っているのか?


「……残念だが、俺はそんなUSBメモリなんてものは知らねえよ」

「本当にそうか? 差押人のあんたなら、工場を隅々まで調べはしただろう?」

「確かに調べはしたが、ねえもんはねえよ。あんたもしつこい奴だな。あの借金の一件は片が付いてるんだし、もう余計な話を持ち出さないでもらえねえか?」


 玉杉さんもアタシと同じように不可解なものを感じたのか、USBメモリの件は知らないフリで通してくれた。

 だって、おっちゃんの様子は明らかにおかしいもん。表情を見ても分かるけど、どこか意地になってるように見える。

 そんな人にアタシの両親最大の遺産とも言える、あのUSBメモリは渡せない。玉杉さん、グッジョブ。




「……そこまで口を割らないなら仕方ない。牙島さん、お願いします」

「ええんでっか? ほんなら、どいつでやりまっか?」

「わしの姪っ子で構わん。最近生意気だし、少し痛い目を見せてやれ」




 そう思っていたら、今度はおっちゃんが隣にいた牙島という人に声をかけ始める。

 そして何かを命じたかと思えば、牙島という人がアタシの方へと近づいてくる。


「な、何さあんた? アタシに何の用事?」

「すまんなぁ、姉ちゃん。ワイもこれが仕事なもんでな。恨むんやったら、叔父さんのことを恨んでくれや」


 カウンター席に座っているアタシを見下すように顔を向けてくるが、その様子を見ると一層不気味さが際立つ。

 肌一つ見せない迷彩柄のコートに、顔に至るまで隠されたマスクとサングラス。

 その容姿自体も異様だが、こうして近くで接した時に感じる気配はもっと異様だ。




 ――この人、まるで人間の気配がしない。




 ガシィィイ!!



「あがっ!? げ、げほっ!?」

「じゅ、隼!? おい! あんた一体、何をしてるんだ!?」


 そんな身の毛もよだつような感覚に襲われていると、アタシの首が突如締め上げられる。

 この牙島という男の手袋を着けた左手が、アタシの首根っこを掴み上げてきた。

 締め付ける力も強く、さらにはカウンター席に座っていたアタシの体を軽々と持ち上げてくる。

 足が宙でバタついてしまうし、息も詰まっていく。こちらも密かに生体コイルを稼働させ、なんとか食らいつくしかない。

 その様子を見たタケゾーが掴みかかり、必死に振りほどこうとしてくれるが、牙島という男は微動だにしない。


 ――こんなの人間が出せるパワーじゃない。

 それに気になるのは、アタシの首を絞めつけてくるこの人の手の感触だ。

 手袋越しだが異様にゴツゴツとして硬く、何よりも恐ろしいことが一つ――




 ――この人の手、まるで体温を感じない。




「あぁ? なんやぁ? 姉ちゃん、えらい頑丈やなぁ?」

「そ、そいつはどうも……! 頑丈さを人に褒められるのは、アタシも初めてかもね……!」

「……どうにも、姉ちゃんもただモンではなさそうやな。こりゃぁ、脅しには使えへんか」


 しばらくはアタシも首根っこを持ち上げられて宙づりのままだったが、アタシが言葉を話せるぐらいの余裕を見せると、軽く放り投げるような形で解放された。

 こっちも生体コイルと細胞強化のおかげで耐えきれたが、これでアタシが普通の人間だったとしたら、下手をすればあのまま絞め殺されていた。


 ――アタシのことを『ただ者じゃない』と言うが、それはこっちだって同じ心境だ。

 街中で犯罪者の相手をすると言うより、デザイアガルダやジェットアーマーを相手にした感覚に近い。


「あ、あの野郎……! よくも隼にこんなことを……!」

「げほっ! けほっ! お、落ち着いて、タケゾー。あいつには逆らわないほうがいいよ……!」

「だ、だけどよ……!」


 解放されたものの、息苦しさで床に座り込むアタシに対し、タケゾーがアタシを守るようにしゃがみながら声をかけてくれた。

 タケゾーも身を震わせ、アタシのためにかつてないほどの怒りを抱いているのが分かる。

 こうやって彼氏に守ってもらうというのも悪い気分ではないが、今回ばかりは相手が悪すぎる。

 なんとか荒ぶるタケゾーを制しながら、アタシは立ち上がって前へと出る。


「牙島さん! 何をやってるんだ!? まだわしが交渉もできていないのに、どうして隼を解放した!?」

「脅しの意味があらへんからや。この姉ちゃんをちぃといたぶっても、効果なんざあらへんやろ」

「だったら、もっときつくやればいいだけだろ!? あんただってあのUSBメモリを手に入れないと、上の連中に色々言われるんじゃないか!?」


 そんな傷ついたアタシを鷹広のおっちゃんは心配するどころか、牙島という男に『もっとやれ』とでも言いたげに愚痴を述べている。

 これが本当に親族の言うことだろうか? アタシよりもUSBメモリの方がそこまで大事ということだろうか?

 これは頭にくる。こうなったら、意地でもあのUSBメモリのことを口にさえしない。


 そう思って、二人のことを睨みつけていたのだが――


「別にワイはあんさんの部下やあらへんで? そもそも、あの組織にワイのことをどうこうできる人間なんざおらへん。なんやったら、ここであんさんの首根っこに噛みついてもええんやでぇ……?」

「ぐっ……!? こ、今回のところは引き上げるぞ!」


 ――何やら二人の間で口論が始まり、そのまま店の外へと出て行ってしまった。

 鷹広のおっちゃんもあの牙島って男にビビってたみたいだけど、あの二人ってそもそもどういう関係なんだろ?

 分からないことばかりだけど、ひとまずは助かった。今はその事実だけ受け入れよう。


「隼ちゃん! 大丈夫だったか!?」

「あの方が空鳥さんの叔父さんですか……。なんとも乱暴で、私でも受け付けられない人ですね……」


 おっちゃん達がいなくなると、玉杉さんと洗居さんがアタシを心配して駆け寄ってくれた。

 店にいた他のお客さんにも動揺が走っており、とても営業どころではない。

 ここはアタシにとっても大切な店だ。いくらなんでも、今回の狼藉は酷すぎる。


「まあ、アタシは大丈夫だよ。それにしても、おっちゃんはどんな連中とつるんでるんだか。あの牙島って人、普通の人間じゃなかったよ?」

「あ~……牙島か。あいつについては、俺も少し耳にしたことがある」

「へ? 玉杉さんが?」


 おっちゃんに対しても怒り心頭だが、同時に気になるのは一緒にいた男のことだ。

 アタシが空色の魔女でなければ、今頃救急車で搬送コースにだってなっていた。存在そのものが不気味としか表現できない。


 ただ、玉杉さんはそんなあの男のことを知ってはいるらしい。




「あの牙島ってのはおそらく、大凍亜連合の人間だ」

空色の魔女の敵、街の治安を乱す元凶、大凍亜連合。

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