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思い切って打ち明けてみよう!

隼ちゃん、頑張って正体を明かそうとする。

「どうも~。こんばんは~」

「お~? 隼ちゃん一人だけか?」

「今日の洗居さんとの仕事は終わったのか?」

「まあね~。洗居さんは他にもあるみたいだけど」


 本日分の清掃業務を終えて、アタシは玉杉さんの経営しているバーへとやって来た。

 都合がいいことに、タケゾーも一緒だ。カウンター席に座り、二人してアタシに声をかけてくれる。

 他のお客さんもテーブル席にいるが、アタシ達のことを特に気にする様子もない。

 これなら、こちらの話も盗み聞かれることはないだろう。


「洗居さんはなんか『緊急の清掃案件が入りました』とか言って、別の仕事に向かった」

「緊急での清掃案件って……洗居さんは何をする気だ?」

「せっかく今日はこっちの仕事も休みだってのに、どうしてあいつはいつも働いてばっかなんだかな~?」


 洗居さんの件については、アタシがついた嘘だ。

 本当は洗居さんも『一緒に行きましょうか?』と申し出てくれたのだが、これはそもそもアタシの問題だ。

 いくら洗居さんが親切でも、甘えてばかりもいられない。




 ――この二人には、アタシこそが空色の魔女であることを明かしてみる。

 そうすれば、相談に乗ってくれるかもしれない。




「と、ところでさ。空色の魔女の噂って、最近はどうなってるんだろうね」

「ん? 空鳥からそんな話題を振ってくるなんて珍しいな? でもまあ……最近はあんまりいい話は聞かないかな」


 とは言ったもの、話の切り口が見えない。

 これまでずっと秘密にしていたことを話すのだ。相手がアタシも信頼できる人物であっても、どうにも口ごもってしまう。

 そんなわけで、とりあえず話してみたのが空色の魔女の噂について。とりあえず、ここから少しずつ話を切り出してみようと思う。


「俺もネットとかで知ったけどよ~、なんか急に活動が地味になったんだって? これまでみたいに杖に乗って空飛んで参上とかじゃなくて、どこからかコソコソ何かをぶつけたり、一発殴ってダッシュで退散とかよ~」

「へ、へぇ……。ちなみに、玉杉さんはそういった空色の魔女の変化について、どう考えてる?」

「まあ、口は悪いがチキンだとは思うよな~。何が目的かは知らねえが、最初の頃からのスタイルを貫かねえと、そいつは筋が通らねえんじゃねえかと俺は思うよ?」


 そうして話を聞いてはみたものの、やはり最近の空色の魔女の印象はよろしくない。

 玉杉さんは眉をひそめ、厳しい意見を述べてくる。それでも、そう思うのは当然だろう。


 アタシだって、自分でも中途半端だとは思ってる。

 今のアタシは最初に世間へ期待だけさせておいて、急に引っ込み思案になることでその期待を裏切っているとも言える。

 これがアイドルだったらファンから非難轟々。いくらそれが目的ではないとはいえ、申し訳なさがこみ上げてくる。


 やっぱり、正体を明かすのはやめようかな?




「そうですかね? 空色の魔女の詳細は俺も知りませんが、別に非難する程でもないでしょ?」




 そう思っていたら、今度はタケゾーが意見を述べてきた。

 しかもその様子は玉杉さんと違い、空色の魔女を弁護するようなもの。


「空色の魔女にだって、何か事情があるんでしょう。こっちが勝手に期待して、その期待通りにならないからって非難する方が筋違いじゃないかと、俺は思いますね」

「あ~、言われてみれば武蔵の言う通りか。俺も知らねえうちに、世間の評判に流されちまったな~」

「ネット上でも空色の魔女を悪く言う奴もいますが、俺はなんだか違う気がするんですよね。むしろ、勝手に期待されてる空色の魔女のことが、不憫にだって思えますよ」


 何と言うか、タケゾーらしい見解だ。こいつって、心底お人好しだよね。

 空色の魔女なんて正体不明な相手でも、たとえ世間でどう評価されていようとも、相手のことを考えてくれる。

 こういうタケゾーの人間性は嫌いじゃない。こんな奴だから、アタシとの腐れ縁も続いているのだろう。

 その話を聞いて、玉杉さんも見解を変えてくれる。


「ね、ねえ。二人とも。ちょっとアタシから、話したいことがあるんだけど……?」

「空鳥から話? そんなしおらしい態度で聞いてくるのも珍しいな?」

「なんだ? 言ってみな。多少の悩みならば、俺らも聞くぐらいはしてやるよ」


 この調子なら話せそうな気がする。

 なんだか、知らず知らずのうちにタケゾーに救われちゃったね。


 ――よし。覚悟を決めよう。

 ここは思い切って、アタシが空色の魔女だってことを――




 ガシャァァアアン!!



「な、何だ!? 店の外で事故か!?」

「空鳥! 伏せろ!」




 ――話そうとした矢先、店の外からけたたましい轟音が鳴り響いてきた。

 玉杉さんも驚くし、タケゾーはアタシの上に覆いかぶさってくる。

 タケゾーがアタシを守ってくれるのはありがたいんだけど、アタシも外の様子が気になる。

 どこの誰だ? せっかく人が覚悟を決めた時に、横やりを入れるように騒動を起こすのは?

 ちょっと頭に来たし、元凶の顔でも拝んで――




「グゲギャァァア! その車を渡さぬカァア!!」

「く、くそ!? なんだこの馬鹿デカい鳥は!? 現金輸送車を狙ってきたのか!?」




 ――ヤバい。アタシも知ってる顔だ。むしろ、アタシが一番知ってる顔だ。

 例の巨大怪鳥がその巨大な両足の爪を一台の車にめり込ませ、奪い去ろうとしている。

 てか、あれって現金輸送車じゃん。あの鳥、また強盗してんの?


 ――今思ったんだけど、鳥が強盗をしてもどこでお金を使うつもりなんだろ?


「……なーんて、考えてる場合でもないよね」

「空鳥! 玉杉さん! とりあえず、ここから離れましょう!」

「お前らは先に行ってろ! 俺は他の客を避難させる!」


 この店の結構近くであの巨大怪鳥が暴れるもんだから、タケゾーも玉杉さんも大慌てだ。

 下手をすれば、こっちに何が飛んでくるか分かったもんじゃない。

 タケゾーもアタシの手を引き、裏口から逃げ出そうとするが――




「ごめん! タケゾー! 先に逃げてて!」

「そ、空鳥!? お前、またどこに行く気だ!? 危ないだろ!?」




 ――生憎と、アタシがここから離れるわけにはいかない。

 アタシはタケゾーの手を振り払い、店の窓から外へと飛び出る。


 よくよく考えれば、アタシがこうやって悩むそもそもの原因はあの巨大怪鳥だ。

 あいつさえとっ捕まえれば、警察に事情聴取の名目で逮捕されることもなくなる。

 こうなったら、ここで決めてやる。




 ――あのクソッタレ憎たらしい強盗癖持ちの巨大怪鳥を、今この場で撃退してやる。




「変身! 空色の魔女! 出撃する!!」

タイミングの悪い怪鳥なことだ。

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