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空色のサイエンスウィッチ  作者: コーヒー微糖派
星皇カンパニー編・転
197/464

魔王城と化した要塞を突破するぞ!

空色の魔女 VS 作戦総指揮担当


早くもまた衝突する。

「辿り着くことができるか……って、また何か準備して――」



 ビュゥン! ビュゥン!



「――って、うわわっ!?」



 アタシが地下室を出たタイミングを合図とするかのように、館内放送でラルカさんが不吉なことを口走ってくる。

 そしてその言葉の通り、突如廊下の陰から何かがアタシ目がけて飛んできた。


 どうにも、アタシも単純に社長室に向かえるわけではなさそうだ。

 潜入前に抱いた魔王城のような星皇カンパニーの印象も合わせて、本当にこのダンジョンと化した本社ビルを踏破しないと、社長室まで辿り着けそうにない。


「こ、これって、ドローン!? にしてはベーゴマみたいなデザインで、刃までついてるなんて、殺傷力剥き出しにし過ぎでしょ!? これもラルカさんの用意したトラップ!?」

【いえ、今回は自分や部下は関与しておりません。こういう室内戦においては、その道の専門家にお任せします。将軍艦隊(ジェネラルフリート)の五艦将が一人、艦首将がミス空鳥のお相手をさせていただきます】

「まーた、将軍艦隊(ジェネラルフリート)のお仲間さん!? アタシ一人相手に、最高幹部をさらに追加投入するかねぇ!?」

【それぐらいの実力だとは評価しています。艦首将の包囲を掻い潜り、見事自分のいる社長室まで辿り着いてください】


 やはりと言うべきか、流石と言うべきか。ラルカさんはアタシが星皇カンパニーに忍び込むことを予測した段階で、対策はすでに打っていた。

 アタシに襲い掛かるのは、刃を回転させながら飛んでくるベーゴマ。いや、ドローンと言うべきなのだろうか?

 ドローンの飛行性能とベーゴマの突進性能をハイブリッドさせたような、宙を舞う旋回斬撃兵器。空は飛ばないけど、同じような玩具を見たことがある。

 それも一つではない。躱しても躱しても、次から次へとアタシ目がけて襲い掛かってくる。


 ――そして、これらを操っているのはラルカさんではなく、以前の巨大サイボーグ(艦尾将)とは別の将軍艦隊(ジェネラルフリート)幹部。

 戦力を増強していたとは聞いていたけど、まさか最高幹部がもう一人、対空色の魔女(アタシ)用に投入されていたなんて。


「もしかしてとは思うけど、その五艦将ってのが全員この場に集ってるとか!?」

【それについてはご安心ください。今この国に集結させられた五艦将は、自分を含めて四人です】

「ああ、そうかい! 五人のところを、四人に留めてくれて感謝するよ! まあ、アタシ一人に四人も用意してる時点で、大概な話だけどねぇ!」


 なんとかベーゴマドローンを避けながら前へ進み、館内放送で声をかけるラルカさんにも文句を述べる。

 もっとも、こんな状況でアタシが文句を述べたところで、ラルカさんが何かをどうこうするはずがない。てか、この人も今は見物者か。

 アタシの迎撃は完全に艦首将と呼ばれる仲間に任せ、淡々とこちらの言葉に返事だけしてくる。


 ――それにアタシの方も、今はラルカさんに構っている暇はなさそうだ。



 ビュゥン! ビュゥン! ビュゥン!



「ちょ、ちょっと!? まだ数が増えるってのかい!? これを全部艦首将とか言う奴が、一人で操作してるってこと!?」


 デバイスロッドに飛び乗り、宙を舞いながら廊下の中を飛んで先を目指すも、ベーゴマドローンの脅威は一向に収まらない。

 距離を放して逃れようとしても、新たなベーゴマドローンが追加で投入され、アタシの前方を塞ぐように立ちはだかってくる。

 これらを操る艦首将本人の姿は見えないが、これだけの飛来物を同時に並行して操作するなんて、並大抵の技術ではない。


 ――物陰からアタシの命を刈り取ろうとする、これまた暗殺に特化したような技。

 将軍艦隊(ジェネラルフリート)という軍隊の脅威を、改めてこの身に感じてしまう。


「ともかく、こっちも早く最上階を目指した方が良さそうだ! どれだけ数が多くても、屋内で振り切ればこっちのもんよ!」


 それでもアタシだって、敵襲は覚悟の上でここへ乗り込んだのだ。泣き言なんて言ってられない。

 ベーゴマドローンは数を増やして襲い来るが、一度振り切ってしまえばこっちのもんだ。

 わずかな隙間を縫い、非常階段のある突き抜けを上がって最上階を目指せば――




 カァアン! ズバンッ!!



「ぐうぅ!? ベーゴマドローンが……反射してきた!?」




 ――なんとかやり過ごせたと思った矢先、周囲を旋回していたベーゴマドローンが突如加速して、アタシの腕を切り裂いてきた。

 アタシも予想できなかった変則的な加速だが、どうやらベーゴマドローン同士が衝突することで、一つのベーゴマドローンに推進力を集中させてきたということか。

 これもどこかでアタシを狙う艦首将様の技らしいけど、本当にとんでもないことを仕掛けてくる。

 旋回するコマ同士の推進力を合わせ、アタシを狙ってくるだって? 単純に見えるけど、回転や場所とかを相当見極めないとできない芸当だよ?


 ――ラルカさんが屋内戦を一任した意味が分かる。


「全体が回転してるからか、トラクタービームもまともに反応しないじゃん! せめて、本体がどこにいるのかが――」



 カァアン! ズバンッ!!



「ぐぬうぅ!?」


 アタシは非常階段の突き抜けをロッドで上昇して逃げ続けるも、ベーゴマドローンの猛攻は止まらない。

 下から虫が湧き上がってくるかのように、いくつものベーゴマドローンが反射し合いながら、アタシの体を切り刻んでくる。

 非常階段に逃げ込んだのがマズかった。この狭いスペースでは、アタシの方が飛んで火にいる夏の虫という奴だ。

 回転のせいでトラクタービームで投げ飛ばすこともできず、操縦する本体の姿も確認できず、アタシはどんどんと服の上からボロボロに刻まれてしまう。


「ハァ、ハァ……! 乙女の柔肌を狙ってくるなんて、なんともいやらしいドローンなこった! こうなったら、まずはこれをどうにかしないと!」


 一発一発は耐えられても、この数の暴力はアタシでも凌ぎきれそうにない。

 下手に逃げの一手を打つよりかは、まずはこいつらを全部叩き落した方が戦略的か。

 そう思ったアタシは一度踊り場に飛び降り、デバイスロッドを両手で構えて――


「吹っ飛べぇえ!!」



 カッキィィンッ!!



 ――ベーゴマドローンを野球のボールよろしく、フルスイングでバッティングし始めた。

 数も多いし、一度打ち返しても反射して再度襲い掛かっては来る。だけど、このままアタシも切り刻まれ続けるのは嫌だ。

 こちらも負けじと、襲い来るベーゴマドローンをバッティングしまくり、とにかくその連撃を振り払う。



 カキィン! カキィン! ――ズバンッ!



「いってて……! 全部は無理だけど、これで十分な時間はできたかねぇ! そいじゃ……これでトドメだぁああ!!」


 全てのベーゴマドローンを打ち落とすことは流石に無理だ。アタシは別にプロ野球選手でも何でもない。

 それでも、非常階段の下から這い上がってくるベーゴマドローンは、そのほとんどがアタシのバッティングで下方へと集中していく。


 ――このタイミングなら、あの厄介な旋回する刃も一掃できる。

 たとえトラクタービームは効かずとも、瞬間的な衝撃には耐えられまい。


 アタシはデバイスロッドから手を放し、両手の平を合わせて力を込め、その間に出来上がったものを眼下へ叩きつけるように放つ――




「電撃魔術玉ぁぁああ!!」

ベーゴマドローンって何やろな……。

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