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空色のサイエンスウィッチ  作者: コーヒー微糖派
日常と非日常編
185/464

タケゾー「家族の身に危険が迫ってしまった」

次なるヴィランは暗躍と工作の達人。

ルナアサシン、ラルカ・ゼノアーク。

「あ、あの青い宝石の原石が……爆弾だって!?」

「この場で誰かに危害は加えませんが、この場以外で危害を加えないとは約束しておりませんので」


 まるで屁理屈のようにラルカは説明を付け加えると、右手に持っていたスイッチを親指で押し込む。

 結婚祝いとしてもらったあの青い宝石の原石が、ラルカの仕掛けた爆弾だって?

 それならば、今こうしている間にも、工場に置かれたその爆弾が起爆したってことか?

 あそこには先に帰っていた隼やショーちゃんだっているのに?


 ――急に突き付けられた事実を前にして、俺も頭の中が硬直してしまう。


「自分に構っている暇などあるのでしょうか? ご家族のことが心配ではないのですか? あの爆弾は次元式などではありません。スイッチが押された今、もうとっくに爆発していますよ?」

「くっ……クッソォォォオ!!」


 それでもラルカの挑発するような言葉を聞き、次の瞬間には俺もなりふり構わず走り出す。

 もう余計なことを考えている暇などない。ラルカにも構わず、俺はとにかく走って我が家である工場を目指す。




 ――隼とショーちゃん。俺の大事な家族が命の危機にある。




「ハァ、ハァ! あの爆弾の規模はどれぐらいだ!? もう爆発してるみたいだが、せめて隼とショーちゃんだけでも無事でいてくれ……!」


 どれだけ息が切れようとも、俺は足を止めはしない。

 とにかく今は二人の無事を確認したい。その焦燥感に駆られ、ひたすらに走り続ける。


「ハァ、ハァ! こ、工場の外観は無事か!? でも、中の被害はどうなって……!?」


 工場が見えてくると、外からは変わった様子など見えない。だが、それで安心ともいかない。

 俺は急いで扉を開け、中の様子を確認するが――




「あれ? タケゾー? どしたのさ? まだ終業時間には早いし、そんなに慌てちゃって?」

「じゅ、隼! ハァ、ハァ……! ショーちゃんも無事か!?」

「……へ? 無事って……何が?」




 ――そこには特にいつもと変わらない様子の隼が立っていた。

 何か異常に出くわした様子もなく、むしろ慌てて帰って来た俺のことを不思議そうに見ている。


 ――これは一体、何がどうなってるのだ?


「武蔵さん、どうしたの? すごく焦ってる。心配事?」

「もしかして、タケゾーもパンドラの箱が気になっちゃった? それなら大丈夫さ。工場の要塞システムでも確認したけど、誰かが狙ってた様子もないよ」

「い、いや……俺が気になったのは……。そ、そうだ! リビングに置いてあった青い宝石の原石だ!」

「へ? 星皇社長から結婚祝いにもらった置物のこと? あれがどうかしたの?」


 思わず面食らってしまったが、これで安心できるわけではない。

 俺はリビングに向かい、急いでラルカが爆弾だと言った置物の確認をする。


 ――だが、それも別に爆発した様子はなく、普段と同じように鎮座していた。


「この置物がどうしたって言うのさ? まあ、星皇社長とあんなことがあった後だと、ちょっと嫌な予感もしちゃうけど……」

「これは爆弾なんだ! 今すぐにでも、どこかに破棄しないと――」

「爆弾? そんな馬鹿な話が――でも、ちょっとアタシにも確認させて」


 爆発してないとはいえ、俺の不安はまだ拭えない。

 そう思って置物を捨てる場所を考えていると、隼がそれを手に取って観察し始める。

 俺の突飛な発言に最初は呆れた顔を見せていたが、置物を調べるその表情は真剣だ。

 何やら検知器のようなものも取り出し、入念に調べてくれるが――




「ニトログリセリンにプラスチック爆薬……その他、爆発物反応は爆発物検知器にもなし……。安心して、これは爆弾なんかじゃないよ」

「……え? ば、爆弾じゃない……?」




 ――その結果を聞いて、俺も思わず肩から力が抜ける。

 自分でもかなりマヌケ面を晒していると思うが、隼はさらに置物について説明を加えてくれる。


「電子機器的な送受信機能もなし。これは本当にただの鉱石だね」

「……ってことは、誰かがスイッチを押したらこの置物がドカンなんてことは……?」

「ないない。そもそもこの工場の要塞システムには、認証外の電波信号を遮断するシステムだって組み込んである。仮にこれが本当に遠隔式の爆弾だったとしても、爆発させることなんてできないさ」

「な、なんだ……。そうだったのか……」


 そんな隼の説明を聞き終えて、俺も安全を確信することができた。

 思わず腰が抜けてしまい、リビングの床に座り込む。


 ――結局のところ、俺はラルカに一杯食わされたということか。

 あのスイッチもただのダミーで、この置物が爆弾だというのもただのハッタリ。

 ラルカの目的はああやってハッタリを利かせることで、俺から難なく逃れることにあったというわけだ。

 俺の行動を物の見事に読まれ、完全に手玉に取られてしまった。


「急に帰って来たと思ったらこの置物が爆弾だとか言い始めるし、本当に何があったのさ? まあ、星皇社長とは険悪になっちゃったけど、これは流石に素直な結婚祝いでしょ?」

「ああ、そうだろうな……。ただ、俺の方で新たに分かったことがあってな」

「新たに分かったこと? 何が分かったのさ?」


 大事に至らずに済んだとはいえ、俺には隼へ伝えるべきことがある。

 これまで陰から隼を狙い、裏で様々な工作を仕掛けていたラルカの正体。




 ――この事実は隼をより困惑させるだろうが、言わないわけにもいかない。




「ラルカって女の正体が分かった。フルネームを『ラルカ・ゼノアーク』……。星皇カンパニー社長秘書のゼノアークさんこそが、牙島とも組んで動いていた張本人だ」

「え……? ゼ、ゼノアークさんが……?」

これにて「日常と非日常編」はおしまいです。

次話からは隼視点による新章「星皇カンパニー編・転」となります。

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