表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空色のサイエンスウィッチ  作者: コーヒー微糖派
日常と非日常編
183/464

タケゾー「その正体をようやく突き止められた」

玉杉さんが入手した、ラルカとウォリアールに関する情報とは。

「ウォ、ウォリアール……? ええ、まあ。知り合いにウォリアール出身だって人がいますから……」

「ウォリアールに知り合いがいるのか? あの国は情報をほとんど外に出してねえのにな~……」


 玉杉さんがラルカについて調べてくれた話だが、何故か最初にウォリアールの話をされてしまった。

 俺もゼノアークさんやフェリアさんの出身国というぐらいの認識しかないが、それがラルカの件とどう繋がるのだろうか?


「順を追うから、遠回しな説明になるのは承知してくれ。お前達が大凍亜連合に関わってた件から、俺もまずは牙島の身元を洗い直したんだ」

「牙島の身元を洗って、どうしてウォリアールの話が?」

「……牙島はウォリアールの出身だ。日本人じゃねえみてえだ」

「えっ……!? あいつ、ウォリアールの人間だったんですか!?」


 最初は話の筋道が読めなかったが、玉杉さんも少ない手掛かりから情報を手繰り寄せてくれたようだ。

 その中で新たに分かったのは、大凍亜連合の用心棒だった牙島もウォリアール人だったという事実。

 そういえば、ゼノアークさんも少し口にしていたことがあったな。『ウォリアールは多国籍国家で、日系の国民もいる』みたいな話だったか。


「そんな牙島と一緒になって動いている女がいてな。こいつもまた、ウォリアールの出身らしい」

「おそらく、そいつがラルカだと思います。それにしても、ウォリアールって一体どんな国で……?」

「これは噂話になるが、なんでも『軍事傭兵国家』だって話だ」

「な、なんですかそれは?」

「国家プロジェクトとして軍事力を高め、他国の軍事関係に関与して報酬を得ることを生業とする……。言うなれば『戦争代行屋』ってところか」

「戦争代行屋……」


 そんなウォリアールという国なのだが、これもまたきな臭い噂がある。

 これまでは海外の一国程度に思っていたが、国ぐるみで戦争を商売として成り立たせているということか?

 そんな恐ろしい国が、本当に実在するということか?


「表向きには公にできない内紛、極秘裏で早急に終わらせたい軍事作戦。海外で起こる戦争を生業としてるから、こんな情報社会のご時世であっても、まともに情報を掴めねえんだろうよ。一説によれば、大規模な艦隊まで保有しているとか。まあ、全部あくまで噂話だがな」

「本当だとしたら、恐ろしい話ですね……。それで、肝心のラルカについて他に情報は?」


 ウォリアールの噂も気になるが、今俺が知りたいのはラルカという人物の正体だ。

 牙島と行動を共にするウォリアール人の女。この時点でも、俺の中で絞り込める人物はいる。


 ただ、あと一歩確定できそうな情報が欲しい。

 そう思って、玉杉さんに尋ねてみると――




「後分かるのは、その女が『ルナアサシン』って呼ばれる凄腕の殺し屋なこと。それともう一つ、星皇カンパニーに出入りしていること。……って、どっちも本当に噂話だけどな」

「……いえ、助かりました。ありがとうございます」




 ――俺の中で絞り込んでいた人物が、お目当てのラルカだという結論に至った。

 玉杉さんの話は噂を繋いだだけらしいが、それでも俺が知る情報と被る部分がある。

 全く違うルートで仕入れた情報が、こうも偶然として重なるものだろうか?


 ――正直、俺の中では『あの人』こそがラルカとしか思えない。

 そしてラルカは大凍亜連合とは別に、まだ俺の知る人物の命令で動いている。


「……なあ、武蔵。俺も教えておいてなんだが、こいつはかなりやべえ橋を渡ってる匂いがするぞ? 大丈夫か?」

「俺も想像以上の話を聞いてしまった感はあります。ただ、知ってしまったものは仕方ありません。……玉杉さんもお気をつけて」

「おうよ。隼ちゃん達にもよろしくな」


 玉杉さんから話を聞き終えると、別れを告げ合いながら二人で応接室を出て、それぞれ廊下を別方向に歩いていく。

 どうにも、俺は恐ろしい片鱗に触れてしまったようだ。ただ、それは調べてくれた玉杉さんにも同じことか。

 こんなことなら玉杉さんを頼らず、自分で時間をかけてでも調べた方が――




「どなたかと話をしていたようですが、目的の情報は得られたのですか?」

「あ、あんたは……ゼノアークさん……!?」




 ――そうこう考えながら廊下を歩いていたのだが、その先にいる人物に思わず声をかけられた。

 しかも声をかけてきたのは、星皇社長と共に帰ったはずのゼノアークさん。何やら、俺と玉杉さんの話に勘付いたかのように語り掛けてくる。


 ――俺にとっては、今一番会いたくない人だ。


「少々思い詰めているようですが、自分がこう言えば安心するでしょうか? 『先程、ミスター赤原と一緒にいた人物には、危害を加えるつもりはありません』……と」

「……その様子だと、俺達が何を話していたのかはお見通しってことか。その言葉は信じていいのか?」

「それについてはお約束しましょう。自分も任務以上の危害は加えません」


 もうほぼ確定というレベルで、ゼノアークさんは俺達の話に気が付いている。本当に最悪の状況だ。

 いつもの淡々とした語り口も、まるで暗殺者のように嫌に不気味に聞こえる。

 その言葉がどこまで本当かは信用できないが、それでも俺がこうして相対してしまった以上、ここは勝負に出るべきか。




 ――空色の魔女をつけ狙い、牙島とも繋がる謎の女、ラルカ。

 俺はこの場でその正体を暴いてみせる。




「……ところで、ゼノアークさん。星皇社長の傍にいなくてもよろしいのですか?」

「星皇社長からは、傍で秘書としての役目以上の任務を与えられています。自分に聞きたいことがあるのならば、遠慮なく申してください。この場で自分があなたに危害を加えないこともお約束しましょう」


 もうゼノアークさん自身も、俺が何を考えているのかは理解している。

 ここまで来ると、下手な駆け引きも意味をなさない。


 俺と隼の初デートの時、空色の魔女として戦う隼を探っていたこと。

 牙島と同じウォリアール人であること。

 星皇カンパニーに出入りしていること。


 ――これらのことから、まず尋ねるべきことが一つある。




「ゼノアークさん……。あなたは『ルナアサシン』という二つ名を持つ、ラルカという女性に覚えがありますね」

「……予想はしていましたが、自分もいささか動きを見せ過ぎましたか。いずれにせよ、自分も動く出番だったので、頃合いかもしれませんね」




 俺がそのことを尋ねると、ゼノアークさんはどこか観念した様子で姿勢を崩し始める。

 もうこれは確定だろう。俺が追っていたラルカという女。


 ――その正体は、今俺の目の前にいる。




「ミスター赤原の疑問に答えられるよう、改めて自己紹介をさせていただきます。自分のフルネームは……ラルカ・ゼノアークです。本国ウォリアールでは『ルナアサシン』などとも呼ばれてますね」

ついにその真名を晒したルナアサシン。

フルネームをラルカ・ゼノアーク。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ