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空色のサイエンスウィッチ  作者: コーヒー微糖派
大凍亜連合編・承
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反社組織もこれでおしまいだ!

総帥の氷山地も倒れ、大凍亜連合は氷山の一角を失うこととなる。

 アタシのレールガンパンチで殴り飛ばした氷山地は、そのままワームホールを発生させていた装置へと突っ込み、それを見事に粉砕した。

 メビウスの輪、無限の距離、時間の加速、ベクトルの反転。これらの要因が揃ってこそ保たれていたワームホールも、これでもう維持できない。


 ――その終わりを告げるように、この歪んだ空間も元へ戻っていく。


「……なんだか、アタシもとんでもない体験をしちゃったもんだ。まさか星皇社長の理論を、大凍亜連合が使ってるとも思わなかったしね。……そう思わない? 一緒にいた研究担当さん?」

「ヒイィ!? ぼ、僕は研究担当なので、他の大凍亜連合の構成員のように戦えないです! ど、どうかご勘弁を……!」


 気がつけば、ワームホールに飲み込まれていたステージは元々のドーム球場に戻り、辺りも見慣れた光景でようやく落ち着けるようになった。

 会場にいた人々も脱出できたみたいだし、黒幕だった氷山地も壊れた装置と共にノックアウト。

 これにて一件落着だけど、アタシにはまだ気になることがある。


「別にあんたまで殴り飛ばそうとは思ってないさ。見た感じ、氷山地の指示で動いてただけでしょ? それより、このメビウスの輪を使ったワームホール理論だけど、これって星皇カンパニーの技術だよね? どうやって手に入れたのさ?」

「ぼ、僕も知りません……。氷山地総帥がどこからか資料を持ってきて、僕を含めた研究開発チームを組むことで、どうやってでも再現しろと……」


 アタシは近くで腰を抜かしていた研究担当の構成員を捕まえ、今回の騒動に至った経緯を問い詰めてみる。

 だけど、返ってくる言葉は『言われてやっただけで、詳細は何も知らない』の一点張り。かなり気の弱い構成員だし、とても誤魔化して逃げようという雰囲気には見えない。


 ――それでも、今回の騒動がただの偶然とは思えない。

 大凍亜連合は星皇カンパニーの技術を盗み、こうしてワームホールを作り出したと考えるのが妥当だ。

 まさかアタシも尊敬する星皇社長にまで、大凍亜連合の魔の手が及んでいたとはね。

 もしもこの実験が止まらずに拡大を続けていたら、星皇社長も一人の技術者として浮かばれなかっただろう。


 ――ただ、もうその心配も無用といったところか。


「警察だ! この場にいる全員、おとなしくしろ!」

「大凍亜連合がこの場で多数の人間に危害を加えようとしていたことは、もうすでに何人もの証言がある! 観念するんだな!」


 ドーム球場内が静かになったのを見計らったかのように、大勢の警官が中へとなだれ込んで来た。

 これだけ大規模な騒動を引き起こしたのだ。警察も動いて当然だ。

 ベストメイディストショーに参加していた人達が全員証人になるのだから、もう言い逃れも何もない。大凍亜連合からしてみれば、完全に『詰み』といった状況だ。


「総帥の氷山地も含めて、これで大凍亜連合もおしまいだねぇ」

「そ、そんな……。僕はどうすれば……」

「刑期を全うして罪を償い、今度は真面目な研究をするこったね」


 気絶した氷山地や付き合わされていた研究者も含め、大凍亜連合の人間はどんどんと警察によって逮捕されていく。

 これにて、この事件も終焉。あまりに大規模な戦いになったが、アタシも一つの決着を着けられた。


 ――因縁深いヴィランを生み出し続けていた大凍亜連合。

 その歴史もここで幕引きだ。





「みんなー! たっだいまー!」

「隼! よかった! 無事だったんだな!」

「隼さん! 帰って来てくれた!」

「当ったり前でしょうが! アタシは『帰る』と約束したんだから、当然帰ってくるっしょ!」


 大凍亜連合の連中が警察に逮捕される中、アタシはこっそり抜け出して元の姿でタケゾーやショーちゃんの元へと戻る。

 元の姿と言っても、直前までベストメイディストショーでメイド服を着たまんまだったけどね。タケゾーやショーちゃんもメイド服のまんまだ。


 ――ちょっとシュールな光景だけど、それでもアタシは嬉しさいっぱいで二人と抱き合う。

 アタシは本当にあの超常的な戦いから帰ってこれたことを実感するよ。


「空鳥さん! よくぞご無事で!」

「なんだか私がいない間に~、大変なことが起こってたみたいですね~」

「洗居さんにフェリアさん! 二人も無事だったんだね!」


 さらにアタシ達家族の元へ、洗居さんとフェリアさんも駆け寄ってくる。

 どうやら、フェイクフォックスも洗居さんを守るために、その役目を成し遂げてくれたようだ。


 ――てか、フェリアさんは本当に先に逃げてたんだね。

 フェイクフォックスが言ってた通りだ。


「てかさ、フェイクフォックスはどこに行ったの?」

「フェイクフォックス様は皆さんの脱出を見届けると、いつの間にやらいなくなっていました。私もしっかりとお礼を言いたかったのですが、残念です……」


 そんなフェイクフォックスなのだが、もうお察しのごとくこの場にはいなかった。

 どうせ洗居さんと一緒にいるのが恥ずかしいとか、そんな感じの理由でしょ。


 ――実力も伴ってるダークヒーロー(自称)なのに、中身はどんだけシャイなのやら。


「栗阿さんを助けてくれるなんて~、いい人なのですね~。どんな人なのですか~?」

「見た目や名前はともかく、その行いはおとぎ話の王子様のようでした。ただ、私もその顔を拝見できていません。もしもう一度会えるならば、是非とも素顔を拝見したいのですが……」

「あれ~? 栗阿さんってもしかして~、そのフェイクフォックスさんに惚れちゃいましたか~?」

「惚れて……はいないと思います。身元不明なままでは、惚れる以前の話です」

「そ、そうですか~……」


 そんな謎のダークヒーローの存在は、その場にいなかったフェリアさんも気になるようだ。

 何やら女の子らしい色恋の話に持って行こうとするが、そこは相手が超絶真面目人間洗居さん。そうそう惚気た話にもならない。


 そんな洗居さんの話を聞いたフェリアさんだが、どこか残念そうな表情を少し浮かべていたのが見えた。

 洗居さんとフェイクフォックスの恋物語は進展しないけど、アタシもなんだか妙な感じがしちゃう。

 フェリアさんって同性とはいえ、洗居さんに百合的にベタ惚れだよね? それなのに、フェイクフォックスの恋物語が進んで欲しいのかな?


 ――女心はよく分からん。アタシも女だけど。


「なんにせよ、これで一件落着か。本当にお疲れ様だったな、隼」

「いやいや。タケゾーやみんなの活躍もあってこそだよ。それにしても、大凍亜連合はこれからどうなるんだろうね? 総帥の氷山地も捕まったし、流石に解体かな?」

「さっき親父の部下だった警察官にも話を聞いたんだが、完全に大凍亜連合がなくなるわけでもないようだ。総帥がいなくなったとはいえ、下部組織は枝のようにまだ存在してる。……それに、牙島は逮捕されてないそうだ」

「牙島か……。やっぱ、あいつはそう簡単に捕まらないよねぇ……」


 知り合い全員の無事を確認できて、アタシもホッと一息つくことができた。

 そんなアタシを労うようにタケゾーも声をかけてくれるが、これで全部が大団円ってわけじゃないみたいだね。


 大凍亜連合も今回の一件で壊滅的なダメージを受けたけど、今後もどこかで残党が動く気配がある。

 雇われ用心棒だった牙島は仲間のラルカによって、逮捕されずにまだどこかに潜んでいる。

 星皇社長の技術が悪用された経緯も気になるし、まだまだアタシの戦いは続くのだろう。


 ――フェイクフォックス? あの人は別にいいや。

 今のところは害もないし、洗居さんを守ってくれるならこっちも無闇に関わる必要はない。


「何はともあれ、一つの区切りはついたかねぇ。まだまだやることはあるけど、アタシも少しは落ち着けるかな?」

「今回のベストメイディストショーも、このような事態で中断になってしまいましたからね。もしよろしければ、またコスプレイベントにもご案内しましょうか?」

「お? いいねぇ。どうせだったら、またタケゾーにも――」

「もうこれ以上、俺を羞恥の目に遭わせないでくれ……」


 これからのこともあるけれど、今はアタシもこうして区切りがついた余韻に浸りたい。

 みんなの協力の元、苦労して手に入れた日常だ。それを身に染みるのも悪くないだろう。


 また日常の中で何かに巻き込まれても、アタシがまた戦えばいい話さ。

 こうしてみんなの輪にいて、みんなに支えてもらって、みんなと楽しく日常を過ごせる。




 ――それこそが、空色の魔女にとって最大の役目にして力の源だ。

隼「アタシ達の戦いはこれからだ!」

タケゾー「それは物語が終わるセリフだ。まだ続くからな?」

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