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空色のサイエンスウィッチ  作者: コーヒー微糖派
大凍亜連合編・承
163/464

新しいヒーローの誕生だ!

ショーちゃん、ヒーローになる!

「うーん……まあ、こんなところかねぇ」

「隼さん、何を作ったの? 腕時計?」


 ショーちゃんがアタシと一緒にヒーロー活動する時のために着る衣装なのだが、ひとまずは完成させることができた。

 ショーちゃんはニチアサ特撮ヒーロー、マスクセイバーを完全再現した格好をご所望だったけど、流石にそれはアタシも勘弁願いたい。

 正義のヒーローとしてヴィランと戦うことはできても、著作権と戦うようなことはしたくないのだ。


 ――後で面倒なことになるからね。


「その腕時計にボタンがついてるでしょ? それを押してみて」


 そしてショーちゃんに渡した腕時計型デバイスなのだが、これはアタシの変身ブローチとデジタル収納技術をハイブリッドさせたものだ。

 トラクタービームやパソコン機能は搭載していないが、ショーちゃんにはこれだけで十分でしょ。

 ショーちゃんは不思議そうにしながらも、まずは言われた通りにデバイスのボタンを押してみると――



 カッ!



「……凄い! 変身した!」


 ――予想通りに変身完了。顔はフルフェイスのヘルメットで覆われ、肩からはマントがかけられている。

 ショーちゃんの持ってた刀もデバイスに収納して、変身と同時に装着されるようにしておいた。

 色は全体的に黒を基調とし、アタシとお揃い。これぐらいなら、アタシの手にかかれば朝飯前ってもんだ。


 ――本当にまだ朝飯も食べてなかったけど。


「でも、マスクセイバーの格好と違う……。マスクセイバー、こんなマントもつけない……」

「いや……そこは勘弁してほしいかな? 特撮ヒーローと同じ格好だと、著作権とかもうるさくてさ。ムグムグ」

「よく分かんないけど、隼さんが言うならこれでいい。マントもマントでかっこいい」


 アタシはタケゾーが用意してくれた朝食のハムサンドを口にしながら、ショーちゃんにも理解を求める。

 著作権もそうだけど、テレビの特撮ヒーローが本当にヒーローとして街に現れたら、それはそれでまた一大事になってしまう。

 まあ、ショーちゃんもアタシの妥協点改変衣装には満足してくれたし、なるべく本物と遠ざけるようにマントのアレンジも加えてみたからね。

 多分、大丈夫だろう。多分。


「そいじゃ、一通りの準備もできたことだ。ちょいとばっかし、アタシとショーちゃんでお試し程度にパトロールに出かけてみよっか」

「パトロール、隼さんがいつもしてること。ボクもヒーローになれた実感する」

「ショーちゃんも乗り気だねぇ。なんだか、ウキウキしてるのが見て分かるや」


 ショーちゃんの実力も確認し、アタシと一緒に活動するための衣装も用意できた。

 自らがアタシと同じ土俵に立てたことで、ショーちゃんは目をキラキラさせながらどこか喜んでいるのが分かる。

 こうして新たなヒーローも生まれたことだし、まずは練習がてらのパトロールから始めてみよう。


 ――まさか、アタシが養子をとってその子を弟子のヒーローとして育てることになるとはね。

 色々と思うところはあるけど、これはショーちゃん自身の希望でもある。アタシも余計な雑念は捨てて、今は一人の先輩ヒーローとして精一杯振舞うとしよう。


「デバイスロッド、アウトプット。ほら、ショーちゃんもアタシの後ろに腰かけて、しっかりシートベルトを締めておいてね」

「隼さん、この宙に浮く杖、シートベルトがついてない」

「一度言ってみたかったのさ。こういうお決まりもまた、ヒーローの鉄則ってもんよ」

「よく分かんないけど、隼さんらしいと思う」


 空色の魔女をやってると、アタシもなんだかノリで軽口を述べたくなるんだよね。

 ただ、アタシはやっぱりこうやって軽口交じりの方が自分でもらしさを感じる。最近は大凍亜連合との戦いで、どうにも緊張しっぱなしだったしね。

 初心忘れるべからずじゃないけど、こうやってアタシが自分らしく動くための舞台をみんなが用意してくれたんだ。

 そう考えると、変に緊張して自分を見失う方がよろしくない。


 デバイスロッドにシートベルトはついてないけど、ショーちゃんはアタシの体に両腕を回し、落ちないようにくっついてくれている。

 ショーちゃんの身体能力があれば、これでも問題はないだろう。


 ――そうして準備が整ったところで、アタシはデバイスロッドの操作に意識を集中させる。



 フワッ



「ショーちゃん、怖くない?」

「大丈夫。この杖の移動、ボクも何度か体験した」

「それもそうだったね。そいじゃ、スピードを上げて街までひとっ飛びとしますかぁ!」


 ロッドを浮遊させても、ショーちゃんの方も問題はなし。まあ、この子も何度か体験はしてるし、元々三角飛びでビルより高く飛び上がる身体能力の持ち主だからね。

 問題ないと分かれば、アタシもさらに出力を上げる。スピードを出して、普段パトロールをしている街を目指して飛んでいく。


「さーて。何か事件があれば、そこに駆けつけなきゃねぇ。ショーちゃんもよーく下を確認してなよ?」

「事件って、どんなこと? パン泥棒とか?」

「……それって、ショーちゃんがアタシと最初に会った時にしてたことだね。まあそういうのもだけど、とりあえず困っている人がいたら助けに入って――って、早速か」


 そうして少しだけ飛んでみると、早速地上で何やらトラブルが発生しているのを発見する。

 といっても、倒木で車が立ち往生しているだけか。いや『だけ』って表現もよろしくないか。

 立往生を強いられたドライバーからすれば、たまったものじゃない。ここは一つ、アタシ達の出番と行きましょうか。


「ショーちゃん。あの倒木をパパッと切り刻んじゃって!」

「分かった。ボク、頑張る」


 アタシがショーちゃんに声をかけると、素早く高度を落としたロッドから飛び降り、倒木目がけて腰の刀を構え始める。

 ショーちゃんならできると思ったけど、そのまま倒木に飛び掛かっていくと――



 シュパパパァンッ!!



 ――瞬く間に倒木の輪切りの完成。さっきまで道を防いでいたのが嘘のようだ。

 高周波ブレードの切れ味にショーちゃんの実力が合わされば、これぐらいは造作もないか。


「おっと、アタシも感心してばかりはいられないねぇ。細かく刻んだ倒木も、お掃除しないと邪魔なままだ」


 そんなショーちゃんが綺麗に輪切りにしてくれた倒木を、今度はアタシの方で撤去作業に取り掛かる。

 両手の手袋に装着したジェット推進機構。それを応用した衝撃波。

 両親のオリジナルほどの出力はないが、ショーちゃんが細かくしてくれた輪切り倒木程度なら、十分に吹き飛ばせる。


「ほいほいっと! 別に電撃魔術玉で攻撃するだけが、この能力の使い道じゃないってもんよ!」


 アタシは輪切り倒木を吹き飛ばしながら、綺麗に道の脇へと重ねていく。

 清掃業はお休みしてても、そこは洗居さん仕込みの清掃魂(セイソウル)の出番ってもんよ。

 きちんと道路を安全なようにお掃除して、これにて清掃業務完了ミッションコンクリーニングってね。


 ――なんだか、洗居さんみたいなことを考えちゃった。


「おお! 空色の魔女か! こんな倒木の始末までしてくれて、本当にありがとう!」

「それにしても、今日は見たことのない仮面の子供までいるのか? その子は一体……?」

「そこはまあ、あんまり気にしないでってことで。そいじゃ、アディオス!」


 そうして倒木撤去作業が終われば、ショーちゃんを連れて華麗に颯爽とドライバーの皆様の前からアディオスる。

 この流れ自体はアタシが普段やっていることだ。それでもショーちゃんがいてくれると、色々と手間も省ける。

 アタシ一人だったら、倒木を持ち上げてどかすことはできても、あそこまで綺麗に片付けられなかったからね。


「隼さん、あの人達お礼も言ってたけど、もっと話をしなくてよかったの?」

「別にあれぐらいで構わないさ。下手に目立つことよりも、ああやって悩み事が解決する方が大事ってもんよ」

「ボク、もっと悪い奴を倒したりするものかと思ってた」

「まあ、確かにそういう機会もあるさ。でもさ、ヒーローってのは『困っている人を助ける』ってのが本懐ってもんよ」

「確かにそうかも。マスクセイバーも悪い奴と戦うけど、襲われた人を助けてる」

「ニチアサ特撮とはイメージが違うかもだけど、これがアタシのヒーローとしての流儀ってもんさ」


 再び宙を舞いながら、後ろにいるショーちゃんにアタシなりの考えを口にしてみる。

 特撮好きなショーちゃんからしてみれば、今回のような活動はどこか拍子抜けだったのかもしれない。

 だけど、空色の魔女というヒーローの在り方とはこういうものだ。大凍亜連合のヴィランと戦うだけが役目じゃない。

 そこはアタシとしても一線を引き、ショーちゃんにも理解してもらわないとね。


「とは言っても、大凍亜連合の手掛かりがあれば、何か掴んでおきたいもんだけどねぇ……」


 そうやって普段通りに人助けをしつつも、やはり気になるのは宿敵たる大凍亜連合。

 あの反社組織については放置するわけにもいかない。これまではあいつらが起こした騒動を後手でこちらが対応していたが、何か先手を打てる材料が欲しい。


 そうはいっても、そんな簡単に都合よく大凍亜連合の尻尾を掴めるなんて――




「隼さん、今下を走ってるトラック。大凍亜連合のもの」

「……え? マジで?」

ご都合主義だって? 多分、隼本人も思ってるよ。

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