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空色のサイエンスウィッチ  作者: コーヒー微糖派
大凍亜連合編・承
162/464

新たな戦力を受け入れよう!

周囲の支えのもと、空色の魔女は立ち上がる。

「ん~……! 体の調子も戻ってきたや。あれだけ手酷くやられると、流石にきつかったけどね」


 フェリアさんの教会で介抱してもらい、我が家へと帰って来た翌日の朝。アタシは体を起こすと、リビングへと向かい始める。

 朝とは言っても、もう午前九時は過ぎている。アタシの優秀な回復細胞をもってしても、今回のダメージを修復するのにはかなりの時間を要してしまった。

 昨日の帰り道だって、結局はタケゾーにおんぶしてもらってたしね。あれは中々心地よかった。


 そんなタケゾーはすでに仕事へ向かい、リビングのテーブルにはアタシ用の朝食が置かれている。

 朝食と一緒にメモ書きで『俺はいつでも隼の味方だ』などとメッセージを残すあたり、なんとも心優しい旦那様のことだ。


「アタシ、タケゾーと結婚できてよかったよ。アタシ一人だったら、もうとっくに心が折れてたろうね。……愛してるよ、頼れる旦那様」


 そんなメモ書きに軽くキスをして、一人ひっそり愛を誓う。誰かが見てたら、恥ずかしくてできっこないけどね。

 今日からアタシは清掃業もお休みだし、保育園のオモチャ修理もそこまで頻度は多くない。むしろ、こっちに関してもタケゾーが調整してくれるそうだ。

 そうして一時休業状態になってゆとりができたからこそ、今度はその時間で休息や他のことを――




「隼さん、メモにキスしてた。どうして?」

「どぎいぃ!? ショ、ショーちゃん!? どこにいたのさ!?」

「お庭。刀の練習してた」




 ――などと一人メモを手に取りながら考えていると、急にベランダの窓からショーちゃんが顔を覗かせてきた。

 そうだった。この時間、ショーちゃんは刀の朝練をしてるのだった。迂闊であった。

 アタシも思わずアタフタしながらメモをしまってショーちゃんの方に顔を向ける。


 ――多分、アタシの顔は今真っ赤だよね。

 だってショーちゃん、すっごいジト目でアタシの顔を不思議そうに眺めてるもん。


「怪我、もう大丈夫なの? だったら、ボクの腕前見て欲しい。ボクも力になりたいから」

「ああ、そうだったね。昨日帰ってから、そんな話もしてたっけ」


 アタシの恥ずかしい一人遊びはさておき、ショーちゃんはアタシを庭先へと案内してくる。

 昨日はフェリアさんの教会から帰ってきた後、タケゾーやショーちゃんとも少しだけ続きを話し合った。

 今後も大凍亜連合と戦う必要が出る中で、アタシが一人というのは心許ない。

 そこでショーちゃんが名乗りを上げ、アタシと一緒に戦うことを提案してくれた。前々から言ってたけどね。

 アタシも一応の母親として、我が子を危険な目に遭わせるような真似はしたくない。だけど、そうやってアタシが一人で背負い込むことが、逆にタケゾーやショーちゃんへの負担になってしまっている。


 ――だからアタシも少し心を緩く持って、ショーちゃんの厚意を受け入れようと思った。

 そのためにも、まずはアタシがショーちゃんの実力のほどをハッキリ認識しておく必要がある。


「そいじゃ、アタシもちょいとテストしてみようかねぇ。ショーちゃん、そこでちょっと構えてて」

「うん、分かった。何するの?」

「今からアタシがこの鉄パイプを軽く投げるから、それをショーちゃんの居合で斬ってみて」


 まさかアタシが居合名人だった前身を持つショーちゃんに対し、こんなテストをすることになるとは思わなかった。

 やること自体は単純だが、並の人間にできるものではない。


 ――だけど、ショーちゃんならできそうなんだよね。

 これまでの動きを見た期待も込めて、アタシは積んであった鉄パイプを手に取り、まずは一本空中へと投げてみると――



 スパンッ!



「うお!? やっぱ速いねぇ!」


 ――その第一投をショーちゃんは素早く飛び上がりながら、神速の居合術で一刀両断。

 アタシも目を凝らしはしたけど、やっぱりその抜刀の瞬間も納刀の瞬間も、とても肉眼で追えるものではない。


「こいつは……アタシももうちょっと本気を出したくなるね……!」


 そんなショーちゃんの技量をまじまじと目にすると、アタシもついつい熱が入ってしまう。

 こちらも空色の魔女へと変身し、コンタクトレンズの制御システムを作動。ショーちゃんの動きをより正確に追えるようにしながら、今度は両手に鉄パイプを握る。


「そーれ! こいつも全部、ショーちゃんに斬り倒せるかねぇ!」

「いっぱい来た!? でも、ボクならできる!」


 アタシは両手に持った鉄パイプを投げつつ、新たな鉄パイプも即座に補充してポイポイと投げ飛ばしていく。

 ショーちゃんも思わず驚きの声を漏らすが、その構えが乱れることはない。

 鋭い目つきでアタシが投げた鉄パイプ群を捉えると――



 スパパパパァアンッ!!



 ――正確かつ無駄のない瞬発的な動きで、瞬く間に全ての鉄パイプを両断してしまった。

 今回はアタシもショーちゃんの動きを意識して目で追っていたから分かったけど、本当に抜刀と納刀を瞬間的に何度も繰り返している。

 その神速としか言いようのないスピードの居合術に、人造人間としての驚異的な身体能力。これだけの実力があれば、下手にアタシが心配するほどでもない。


 ――てか、ショーちゃんの方がアタシよりも強くない?


「なんだか、アタシも過保護になり過ぎてたのかもねぇ。こいつはアタシの方こそ、ショーちゃんによろしくお願いしたいもんだ」

「つまり、ボクも隼さんと一緒に戦ってもいいの?」

「うん、そういうこと。これからもよろしくね」

「やった、嬉しい」


 ショーちゃんは戦力として十分すぎる。アタシも養子として迎え入れたことで、変に特別扱いしていたようだ。

 思えば、アタシを愛してくれた男の生まれ変わりを変に子供扱いしすぎるのも、失礼な話だったのかもね。

 今後はアタシも期待を胸に、ショーちゃんのことを頼らせてもらおう。


「隼さんと一緒に戦えるのなら、ボクも隼さんみたいな変身衣装が欲しい」

「変身衣装かー……。確かにそのままでいろんな人に見られるのもよろしくないか」


 そうなってくると必要になるのが、アタシと同じようなショーちゃん用の変身衣装だ。

 大凍亜連合にショーちゃんの存在がバレてるとはいえ、世間的にはまだまだ知られてはいない。

 アタシと一緒にいるとなると、ショーちゃんも何かしらの変装はしておくべきだろう。ショーちゃんにもまた、空色の魔女のようなヒーロースタイルは欠かせない。


「……よし! だったら、アタシの方でショーちゃん用の衣装を作ってあげるよ! どんなのがいいかな?」

「いいの? だったらボク、なりたい姿がある」


 そう思ってショーちゃんにも要望を尋ねてみると、何やらリビングに戻ってテレビのリモコンをいじり始める。

 見た感じ、テレビのキャラクターをモチーフにしたいのかな? その辺りは見た目相応に子供っぽいもんだ。


 そして、ショーちゃんはある番組をアタシにも見せてくるのだが――




「このマスクセイバー。これと同じ格好がいい」

「……全く同じじゃないとダメ?」

「同じがいい。マスクセイバー、かっこいい」




 ――そこに映されたのは、録画されていたニチアサ特撮ヒーローの姿。

 ショーちゃん、本当に趣味は男の子って感じだよね。まあ、分からなくはない。

 だけど、完全に一緒の姿ってのは勘弁してほしいかな?




 ――著作権とかうるさくなるのよ。

正義のヒーローも著作権には勝てない。

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