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タケゾー「母親がまた勘違いしてきた」

ショーちゃんから見ると義理のおばあちゃん!

タケゾー母こと、赤原 信濃!

「あらあらら~? この小学生ぐらいの子は誰かしら~?」

「ボク、隼さんと武蔵さんの子供。これ、その証拠」


 俺達が玄関でおふくろを出迎えていると、もう問題ないと思ったのか、ショーちゃんが姿を現してしまった。

 そしてもらったばかりの自らの戸籍(偽造)を手に取り、おふくろへと見せびらかせている。

 そんなショーちゃんの姿を見て、おふくろは唖然として固まってしまう。そうなるのも当然だろう。


 ――つうか、出迎えの準備よりも先にショーちゃんをどうするかを考えるべきだった。


「お、おふくろ! こ、これには訳があってだな……!」

「ア、アタシとタケゾーの本当の子供じゃないんだけど、養子縁組することになって……!」

「……どうやら養子とはいえ、本当にこの子は二人の子供みたいね~」


 俺と隼は慌てておふくろへ弁明するが、そもそも何をどう説明したらいいのかも分からない。

 ショーちゃんがどうして俺達夫婦の養子となったところから? 実はショーちゃんが人造人間のところから?

 ダメだ。完全に錯乱状態だ。俺と隼では、ショーちゃんのことをおふくろにうまく説明できない。




「……成程。私もこれがどういうことか、よく理解したわ」

「お、おふくろ……?」




 そうこう二人して慌てふためいていると、おふくろは何かを察したように真顔で語り始めた。

 とは言っても、今ので何を理解したのだろうか? こちらからは何一つとして説明できていないのだが?


 そう不思議に思っていると、おふくろは静かにかつゆっくりと俺の方へと歩み寄り――



 パシィンッ!



 ――こちらの頬をビンタで引っ叩いてきた。

 こんな光景、前にもなかったっけ? 俺が何をしたというのだ? また俺が極悪人扱いされてるのか?

 困惑と驚愕と奇妙な恐怖から、俺は叩かれた頬を押さえながら涙目でおふくろを見ることしかできない。


「隼ちゃんはまだ処女で、武蔵とも夜の営みをしていません。ならば、この子は武蔵が別の女性との間に作った子供としか考えられません」

「いや!? どんだけ飛躍した誤解だよ!? おふくろ、また盛大に勘違いしてるからな!?」

「勘違いなものですか! それ以外にどう説明ができると!? しかも、こんな小学生の子供ってことは、武蔵は大昔にこんな大罪を……! ううぅ……! わ、私も母親として、育て方を間違えたわ……!」


 そんなおふくろのありえないレベルの勘違い。おふくろはショーちゃんが俺と隼以外の女性との間にできた子供だと思い込んでいる。

 そう思い込み、盛大に涙を流しながら声を震わせて悲しんでいる。


 ――いや、そうはならないだろう? その発想はおかしいだろう?

 俺が幼い頃から隼一筋だったのはおふくろだって知ってるし、そもそもショーちゃんの見た目年齢は小学生だ。

 だったら、俺は一体何歳の時に子供を作ったというのだ? そもそも、子供を作れる年齢なのか?


「……タケゾー。ここはアタシに任せて。アタシからお義母さんに全部説明するから」

「せ、説明するって言ったって、かなり手間だしおふくろも理解できるかどうか……」

「そうは言っても、このままってわけにもいかないでしょ? こうなっちゃったら、全部説明しないと話が丸く収まらないよ……」


 隼も最初は呆気に取られていたが、流石に口を挟まざるを得ないと思い、俺とおふくろの間に割って入って来た。

 確かに隼も言う通り、おふくろがこうなったらしっかり納得のいく説明をするしかない。そして、その説明とは全ての真実を伝えることしかない。


 ――ショーちゃんの件については、本当にもっと早くおふくろにこちらから説明に赴くべきだった。





「――え、え~……? こ、この子が人造人間なの~……?」

「うん。ボク、人造人間。だけど、きちんと戸籍もある。ボク、ちゃんと二人の子供」

「ぎ、偽造した戸籍まで用意してるだなんて、本格的な話ね~……。隼ちゃんの説明する様子を見ても、本当の話みたいね~……」


 隼の必死な説明と俺が用意した戸籍書類もあってか、時間はかかれどおふくろはショーちゃんの話を信じてくれた。

 ショーちゃんが隼の同級生だった男の生まれ変わりであることも、その身が人の手で作られたことも、全部おふくろには説明した。

 いくら空色の魔女の義母とはいえ、おふくろは完全な一般人だ。技術的な話も理解の範疇を完全に超えてしまい、口をあんぐりと開けながら唖然としている。


「でもまあ、空色の魔女の隼ちゃんが絡む話なら、こんな不思議なこともあるのかもね~。私も驚いちゃったけど、三人とも納得してるならそれで構わないわよね~」

「うわっ。お義母さん、アタシのことを信用しすぎ」

「隼ちゃんの言うことはどんなことでも、信用できるわよね~」


 とはいえ、おふくろも最終的には『隼だから』という理由で一応の納得はしてくれた。

 おふくろは息子の嫁である隼に対し、全面的な信頼を置いている。空色の魔女という未曽有の存在にも、恐ろしいほどあっさり認めてしまうぐらいだ。


 ――息子の俺には妙に手厳しいのに、この差は何だろうか?

 今でもビンタされた頬が痛い。


「でもまあ、人造人間で養子とはいえ、この子は二人の子供ってことは変わらないのよね~。だったら、私の孫にもなるのね~」

「ボク、このお姉さんの孫になるの?」

「私のことをお姉さんだなんて、純粋ないい子ね~。でも、私のことはこれから『おばあちゃん』って呼んで欲しいわね~」

「うん、分かった。よろしく、おばあちゃん」


 そうこう思うことは多々あれど、おふくろはショーちゃんを自らの膝の上に乗せながら、笑顔でその頭を撫でながら語り掛けている。

 隼と一緒に結婚挨拶をした時もそうだったが、おふくろは孫を欲しがっていたんだった。それが曲がりなりにもこういう形で実現して、嬉しくて仕方がないのだろう。

 ショーちゃんもおふくろを受け入れてくれてるし、今後はおふくろも交えて何か催しでもしたいものだ。


 ――それにしても、おふくろの見た目年齢が若いせいか、とても『祖母と孫』には見えない。

 おふくろ、もう四十歳は過ぎてたよな? 一体、どうやったらこんなに若さを維持できるんだ?


 ――俺からしてみれば、ショーちゃんという人造人間よりも不思議に見えてしまう。


「おばあちゃん、一緒にテレビ見る」

「あらあらら~。構わないわよ~。おばあちゃんと一緒に、テレビを見てみましょうね~」


 何はともあれ、話は落ち着くべきところに落ち着いてくれた。

 ショーちゃんはおふくろの膝の上に乗ったまま、テレビのリモコンを手に取って、仲良くテレビ鑑賞を始める。


「一時はどうなることかと思ったけど、これなら大丈夫っぽいね」

「隼がしっかりおふくろに説明してくれたおかげだな。……むしろ、俺がもっと早くに手を打っていれば良かったんだが」

「それは気にしないさ。工場の片付けも一通り終えれたし、結果オーライってもんでしょ。タケゾーもまたお義母さんにビンタを食らってお疲れさん」

「労ってくれるのは嬉しいが、なんだか妙な気分だ……」


 そんなショーちゃんとおふくろを横目に、俺と隼は今回のことについて少しだけ振り返る。

 本当に結果オーライではあるが、以前に結婚挨拶をした時といい、どうして俺はこうも毎回、実の母親にビンタされないといけないのか?


 ――今後は家族絡みで何かあったら、まず俺からおふくろに説明しておこう。

 流石にそう何度もビンタは食らいたくない。




【番組の途中ですが、ここで臨時ニュースです。先程市街地内にて、奇妙な目撃情報が入りました】


「ん? テレビで臨時ニュース?」

「何か大変なことでもあったのかねぇ? ちょいと、アタシも興味があるよ」




 問題自体は終わってゆっくりとした時間を過ごしていたのだが、突如テレビの歌番組が臨時ニュースへと切り替わる。

 どうやら、俺達が住む場所からも近い市街地で、何か事件でも起こったらしい。

 こういう事件と聞くと、隼もヒーローとして興味を持たずにはいられないようだ。俺も夫として、事態そのものを知っておく必要はある。

 肝心のテレビの映像が切り替わり、その現場の様子が映し出されるのだが――




「え!? こ、これってどうなってるんだ!?」

「み、民家が植物で覆われてる……!?」

それにしても、タケゾーはビンタされてばっかやな。

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