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タケゾー「新たな家族との交友を深めてみる」

タケゾー視点での新章。

ショーちゃんの生まれ変わりが家族に加わり、色々とややこしい一家のできあがり。

 俺達のもとに舞い込んできた謎の人造人間、居合君。

 それはかつての隼の同級生で、俺と同じく隼に好意を抱いていた男、佐々吹 正司の魂を宿した姿だった。

 肉体の方であったケースコーピオンはいなくなってしまったが、居合君は自らが新たな佐々吹であることを受け入れ、俺と隼の家族の一員となった。

 俺の方でも養子縁組をして正式に家族となれないか動いてはいるが、元が人造人間なだけにそう簡単な話でもない。

 今はとりあえず、俺も新しい佐々吹との交友を深めようと思うのだが――




「なあ、佐々吹。一緒にテレビでも――」

「武蔵さん。ボクのこと、佐々吹って呼ばないで。隼さんと同じように、ショーちゃんって呼んで」




 ――どうにも、呼称から難儀してしまう。

 今はこうして幼い姿になっているから、ショーちゃんという呼び方も特別な違和感はないように見える。

 だが、俺は元々の佐々吹のことを知っている。しかも恋敵だったり背中を押してもらったりで、なんとも言えない間柄だ。

 そうなってくると、俺には隼と同じようにこの子のことを呼べない。

 とはいえ、本人はそれでは納得しまいとジト目で軽く睨んでくる。


 ――佐々吹って、こういう感じの人間だったのか?


「あー……ちなみに、どうして俺にまでそう呼んで欲しいと?」

「ショーちゃんって呼び方、親しみがある。ボク、武蔵さんとも仲良くしたい。仲良しの始まり」

「なんだか、本当に子供っぽい感じなだけみたいだな」


 そうは言っても、この子が俺に歩み寄ろうとしてる事実は変わらない。

 思えば俺のことも以前は『赤原さん』と呼んでいたのに、今は『武蔵さん』と呼んでいる。

 これもまた、この子なりの歩み寄り方というわけか。


「分かった。それじゃあ、俺も君のことはショーちゃんと呼ばせてもらう」

「ありがとう。嬉しい。納得したから、一緒にテレビ見る」

「そうだな。隼が帰ってくるまで、今日はのんびり過ごすか」


 そんなちょっとしたやり取りはあったが、俺とショーちゃんは仲良くテレビへと目線を向ける。

 今日は俺が休みで隼が清掃の仕事。住まいである工場には俺とショーちゃんの二人きり。

 親睦を深めるという意味でも、今日は一日一緒にのんびりしよう。


 大凍亜連合との騒動もあって、最近はこうやってくつろぐ時間も少なかった。

 隼は今でも大凍亜連合のことを気にかけており、またショーちゃんを狙ってくるんじゃないかと心配もしている。

 そのためにこの工場に強固かつ高性能な防衛システムまで展開したようだ。


 侵入者を探知するレーダーだけでなく、以前の教訓から非常用の発電装置もセット。

 さらに緊急事態時には電気による防壁まで発動するようになり、この工場は本当に一つの要塞だ。


 ――こういう技術を売り出せばいいのだろうが、隼本人は『軍事利用されそうな技術の提供なんてナンセンス!』と言い、特に売り出すつもりはないらしい。

 まあ、そういうところは隼らしい。

 今後も俺と隼が共働きして、一緒に家計を支えていこう。ショーちゃんという家族も増えたから尚更だ。


「隼さん、いつ帰ってくる?」

「聞いた話だと、もう仕事自体は終わってるはずなんだがな。まあ、またどこかでヒーロー活動でもしてるんだろう」

「隼さん、大変。ボクもヒーローになって、お手伝いしたい」

「そういう話は隼が帰って来た時にしてやるといいさ。ただ、あいつは他者を危険に巻き込むのを嫌うからな……」


 俺と一緒にテレビを見ていたショーちゃんなのだが、どうにも隼の帰りが待ち遠しいようだ。ソワソワしながら俺に尋ねてくる。

 ショーちゃんからしてみれば、隼は母親のようなものだ。人造人間とはいえ、そこは見た目相応の年齢感覚ということか。


 ――つうか、俺もこの子の父親代わりになったわけか。

 かつての恋敵が、今はこうして幼く生まれ変わって俺の義理の子供になっている。

 こんな経験をしている人間など、世界中どこを探しても俺ぐらいだろう。




【本日はショッピングモールにて、人気沸騰中の商品の取材をしてみたいと思います!】


「あれ? このショッピングモールって、隼と初デートした時の場所か?」




 などと余計なことを考えていると、テレビに映った光景が思わず気になってしまった。

 何やら最近のブーム特集をしているらしく、女性リポーターがマイク片手に生放送である場所へと赴いている。

 その場所はなんと、俺と隼が初デートで立ち寄ったショッピングモールだった。


 思えば、あの時も色々あったものだ。

 隼が清楚系お嬢様に大変身し、周囲から羨望の眼差しで見られたり。

 何故か俺と一緒にチャラ男にナンパされたり。

 一緒に帽子やキーホルダーを買ったり。

 ソフトクリームを超えたハードクリームを一緒に食べたり。

 玉杉さんと洗居さんにとんでもない勘違いをされたり。


 ――まだまだ色々あったが、こうやって振り返ってみると、あのとんでも初デートもいい思い出か。

 ただ、そこから今に至るまでの間にもう結婚するとは思わなかった。しかも義理とはいえ、夫婦の間に子供までいるという。

 十何年という俺の片思い期間が何だったのかと思いたくもなるが、悪い話でもないか。


【どうやら、最近はこのファッション店でのある商品が大人気のようです!】

【ウチの店としても、まさかあんなレジ横になんとなく置いていた商品が、あそこまで大盛況になるとは思いませんでしたよ】


「……あれ? この店にも見覚えがあるぞ?」


 そうこう考えながらテレビを眺めていると、またしても見知った店が画面に映し出された。

 俺が初デートの際、隼に帽子とキーホルダーをプレゼントした店だ。

 あの店にそんなブームとなってる商品があるのか。これは俺も興味がある。


 俺もスマホに付けた空色のキーホルダーを見ながら、あの時のことに感慨深くなってしまう。

 このキーホルダーも大したことのない安物だが、隼にも気に入ってもらえて今でもお揃いで持ち合わせている。

 どうせなら、今からテレビで紹介される商品についても購入を検討してみよう。

 ショーちゃんも連れて、家族全員で買い物なんてのも面白いだろうし――




【この空色のキーホルダーなのですが、今は発注も追いつかないぐらいに売れてるんです】

【なるほど! これは巷で話題の空色の魔女のイメージにも繋がりますし、人気も出ますね!】


「……って、このキーホルダーのことじゃないかぁぁああ!?」




 ――などと考えていたのだが、どうやら購入を検討することはなさそうだ。

 その理由は実に単純。すでに俺が購入しているものだったからだ。

 俺が持っているものとテレビに映っているものを照らし合わせるが、完全に同一のものと見て間違いない。

 まさか、空色の魔女の人気がこんな形で空色キーホルダー人気に繋がっていたとは思わなんだ。


「あのキーホルダー、武蔵さんも隼さんも持ってるもの。ボクも欲しい」

「ああ、そうか。ショーちゃんは持ってなかったな。……よし。今度隼とも一緒に買いに行こうか」

「やった。みんなでお揃い、嬉しい」


 ただ、一緒にテレビを見ていたショーちゃんは俺とは違う反応を示す。

 俺が持っているキーホルダーとテレビに映るキーホルダーを見比べ、物欲しそうに俺の服の袖を引っ張ってくる。

 幼い子供にこうも懇願されると、俺も無下にはできない。これを買うぐらいなら、家計的にも問題はない。

 強いて問題があるとするならば、空色のキーホルダーの在庫があるかどうかだ。

 空色の魔女人気のせいで発注も追いついていないようだし、こうやってテレビで報道されれば余計に品薄となりかねない。


【ここで少し、商品を購入したお客さんにもインタビューを――って、あ、あれ? あなたはまさか……?】


 そんなこちらの気持ちなどテレビの向こう側が知るはずもなく、女性リポーターが列に並んだお客さんにインタビューを始めている。

 だが、そこに並んでいた一人の女性客を見て、何やら戸惑う反応を見せている。

 カメラもその女性客に焦点を合わせるが――




【す、すみません。あなた、空色の魔女さんですよね?】

【ど、どど、ドナタノコトデスカ? アタシ、タダノコスプレイヤーデスヨ?】


「なんでこのブームの張本人が列に並んでるんだよぉおお!? 隼んんん!?」

何やってんだよ!? 空色の魔女!? 空色の魔女ぉぉおお!?

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