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空色のサイエンスウィッチ  作者: コーヒー微糖派
大凍亜連合編・起
130/464

反社組織の総帥が現れた!

大凍亜連合総帥、氷山地 猛。登場。

「総帥……!? てことは、あいつが大凍亜連合のトップか……!」


 牙島を連れて部屋へ入って来た大柄スキンヘッド男。役職を大凍亜連合総帥。名前を氷山地(ひょうざんじ) (たける)

 反社半グレのトップと言うよりは、袴を身に着けたヤクザの大親分といった様相をしている。

 どっちにしても、悪そうな人間にしか見えない。なんだか、テンプレな親分って感じだ。


「ケースコーピオンとインサイドブレードは大凍亜連合にとって、どんだけ重要なシノギになるかは分かっとるやろ? それやのに片割れを行方不明にするやなんて失態して、どう落とし前をつける気や? あぁ?」

「ヒ、ヒイィ……!? ど、どうかご容赦を……!」


 そんな氷山地は場に現れるや否や、ジャラジャラ男にも責められていた構成員の頭を掴み、脅すように叱りつけ始める。

 怒られている構成員は完全に及び腰。そりゃあ、あんなコワモテスキンヘッドに怒られて、頭まで掴まれたら誰でもそうなるよね。

 氷山地もかなりのデカブツだし、あのまま部下の頭を壁や床にバーンと叩きつけたりしそうな雰囲気だけど――




 ガチィィィイッ!!



「アガ――」

「儂の配下に役立たずなどいらん。そないな奴は、この儂自らが氷漬けにしたるわ」




 ――突如として画面上に映るのは、そんな予感から全く想定できなかった事態。

 氷山地が頭を鷲掴みにしていた部下なのだが、その肉体が突如として氷漬けにされてしまった。

 しかも一瞬でだ。氷漬けにされた構成員は、わずかなうめき声だけ漏らしたが、おそらくはもう死んでいる。

 氷山地が何かしたのは事実だが、急速冷凍技術とかそんなのじゃない。

 画面越しに確認できただけでも、もっと高度な別の技術であると伺える。


 ――それこそ『人の体温が一瞬でプラスからマイナスに変換された』とでも言ったところだ。


「ど、どうなってるんだ!? あんなに人が一瞬で氷漬けになるものなのか!?」

「普通、そんなことはありえないね。大凍亜連合総帥、氷山地……。あいつもデザイアガルダやケースコーピオンと同じく、何か特別な力を持ってるよ……!」


 VRゴーグルで同じ光景を見ているタケゾーも、思わず体も声も震わせてその恐ろしさを実感している。

 別に温度までは感知できるはずがないのに、その光景を見ただけでも体温を奪われるように脳が誤認してしまう。

 それほどまでに氷山地が行ったことは、アタシ達の常識の範疇を超えている。


「……牙島。こいつらが役に立たぬのなら、おどれの裁量で好きに扱って構わへんぞ。捨て駒にでも何でも、好きに使(つこ)うたらええわ」

「ほーう? 大凍亜連合直属の部下よりも、ワイみたいな流浪の用心棒を信頼するんでっか?」

「おどれがただ用心棒として大凍亜連合に身を置いていないことぐらい、儂かてお見通しや。こっちとしてもこのシノギは成功させたいから、おどれみたいにこのシノギに近い人間が権限持っとった方が、色々と都合もええやろ」

「キハハハ……! ある程度はワイの正体もお見通しでっか。まあ、ワイもお言葉に甘えさせてもらいますわ。こっちもこっちで、この件はややこしいこともありますさかいなぁ……!」


 そんな氷漬けにした構成員のことなど意にも介さず、氷山地は横にいた牙島に声をかけ始める。

 なんだか部下の失態を見かねて牙島に指揮権を譲ってるみたいだけど、牙島って大凍亜連合からしてみればただの用心棒だよね?

 そんな奴に指揮権を与えて大丈夫なわけとも思ったが、その後の言葉にも何か含みがあるのを感じる。

 牙島って、ケースコーピオンや居合君も関わってる何かしらの計画で、正規の構成員よりも何か特別な立場にあるってこと?

 この間はアタシに『ただの用心棒が詳しいことなんて知ーらない』みたいなことを言ってたのに、あれは嘘だったってこと?


 疑問は残ってしまったが、それ以上の動きは特に見えなかった。

 氷漬けにされた構成員を連れながら、総帥の氷山地や幹部のジャラジャラ男も部屋から出ていく。

 ただ、牙島だけは今後の方針を考えるように、顎に手を当てて考えこみながら部屋に残っていた。


「一応はワイにも指揮権が渡ったのなら、こっちの都合よく動ける場面も増えたかもしれへんな。ラルカの奴にも報告しとくか?」


 まさか外にいる黒猫がアタシ達の偵察ロボットだとも知らず、牙島は何かを口にしながらスマホを手に取り始める。

 一人で部屋に残っていることといい、さっきの総帥との会話といい、アタシには牙島の背後に大凍亜連合以外の影が見え隠れしてしまう。


「ねえ、タケゾー。さっきまでの様子を見て、牙島のことをどう思う?」

「俺も予測の範疇でしかないが、そもそも牙島は『大凍亜連合とは別の組織の命令で動いてる』のかもな。そしてそれは、以前からこちらを狙ってるラルカと呼ばれるスナイパーとも同じ組織の可能性が高い」

「じゃあ、牙島はそのラルカって人と一緒に大凍亜連合の乗っ取りでも企ててるとか?」

「いや、その可能性はないと見ていい。大凍亜連合総帥の氷山地も、ある程度は牙島のバックを読み取ってる。牙島の目的が組織の乗っ取りなら、権限なんて与えたりしないさ」

「そっか。それもそうだよね。となると、牙島は何を目的にしてるんだか……?」


 タケゾーとも話し合って仮説を立てていくが、結局は分からないことの方が多い。

 これまではその実力の根源が正体不明なだけの牙島だったが、どうにもさらに謎が深まってしまった。

 裏で控えているお仲間のラルカというスナイパーといい、本当に何を企んでいるのやら。




「……お? 着信か? ラルカの奴が丁度都合よく、こっちに話を振ってきおったか? もしもーし」




 しばらくは工場の中で考え事をしていたが、どうやら監視していた牙島の方に新たな動きがあったようだ。

 誰かから電話が来たらしく、牙島もスマホを耳に当てて通話を始める。

 これで相手が話題に上がってるラルカならば、そいつの正体を追うことも――




【コラァァア! 牙島ぁぁああ!! テメェ、そっちで何を企んでやがんだぁぁああ!?】

「どぎいぃ!? あ、あんさんでしたか!? そないに急に大声で叫ばんといてくださいや……」




 ――などと期待を抱いていたのだが、どうやら電話の相手はラルカではなさそうだ。

 牙島も突然耳に入って来た怒鳴り声を聞いて、頭を抱えながら顔をしかめている。


【テメェが探してた人物についてだが、そのせいで俺が絶賛片思い中の女の友人が困ってるぞ!? 俺はそっちに干渉するつもりはねえが、余計な真似をするなら俺も見過ごせねえぞ!?】

「『片思い中の女の友人』って、それはあんさんからしたらほとんど赤の他人やおまへんか!? なんにしても、ワイかてそないに都合よく状況を操作できまへんのや! 堪忍しておくんなはれ!」

【ともかく、これ以上こっちに余計な迷惑をかけんじゃねえぞ!? もし今度何かあったら親父に頼んで、テメェの左舷将の地位を剥奪させるぞ!?】

「権力の横暴でんがな!? ま、まあ、ラルカの方にも伝えときますさかい、これで失礼しまんで!」


 そんな突然の電話越しの怒号に困る牙島だったが、その電話の内容から相手は牙島より立場が上の人間と見える。

 だからといって大凍亜連合の人間ではない。こちらにまで聞こえてくる怒号を聞く限り、若い男性の声ではあるようだ。

 『左舷将』とかいう分からない単語も出てくるけど、電話越しの相手が本気で牙島に怒っているのだけは分かる。

 それでも牙島は相手方の怒号に耐えかねたのか、早々に話を終わらせて電話を切ってしまった。


 ――よく分からない状況だけど、あの狂人牙島にもヘコヘコする場面があるなんて思わなかった。

 意外な一面ではあれど、結局のところ重要な情報は聞けなかったか。


「牙島が話してたのは、俺が予想してた別組織の仲間かもな。その割には、よく分からないことで怒りあってたけど」

「まあ、どっちかって言うと、プライベートな話なのかもね。……てか、牙島も部屋を出ちゃったや」


 どうでもいい場面が間に挟まってしまったが、情報源である牙島もいつの間にかいなくなってしまった。

 今のところ新たに手に入った情報なんて『ケースコーピオンが何も喋っていない』ことと『大凍亜連合の総帥がヤバい』ことぐらいか。

 もう少し技術的な話を聞き出したいし、このまま捜査を続けてみても――




 ビー! ビー!



「警報!? これってまさか、誰かが工場に近づいてる!?」




 ――そうやって次の行動を考えていると、突如パソコンから鳴り響く警報と画面上のアラート。

 アタシが起動させていた防衛用のレーダーが、何かを感知したようだ。

 慌ててシステムを操作して画面を確認すると、確かに人物の反応がある。




 ――この工場に何者かが二人近づいている。

油断も隙もありゃしない。危機はまだまだ続く。

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