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空色のサイエンスウィッチ  作者: コーヒー微糖派
これからも一緒編
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タケゾー「大人びた恋人とデートになった」

割とちょくちょくデートしてる二人。

 これまでとは違い、どこか大人の色気が増した隼とのデート。

 本人もそのコーデに相応の時間は要したようだが、その効果は絶大。俺も隣で一緒に歩くだけでも、妙に緊張してしまう。


「あっ。この店にしよっか。タケゾーも退院したばっかりだし、落ち着いて話せるところがいいよね」

「普段の隼には似合わないカフェだな。いや、今の隼には妙に似合ってるんだが」


 そして選ぶ店についてもどこか大人っぽい。店の裏にテラスが用意されたカフェで、なんとも落ち着いた大人の佇まいだ。

 今はお客さんも少ないが、その分二人静かに話をするには都合が良さそうだ。


「ちょいとアタシも、服装に合わせたデートプランを考えてみてね」

「やけに凝ってるな……。正直、隼らしくない」

「うん、まあ。本当はこうして、タケゾーと二人で静かに話をするのが目的なんだけどね」


 大人っぽいコーデに大人っぽいカフェ選び。どうにも隼らしくないとは思っていたが、隼にも何か理由があるらしい。

 そして小さなテラスの席で向かい合って座ると、隼は俺に頭を下げながら話を持ち出してきた。




「あ、あのさ。デザイアガルダの件については、アタシもしっかり謝っておこうと思って……」




 隼がここまでらしくない準備してまで切り出すのは、仇敵でもあったデザイアガルダの話。

 俺も後から聞いたが、デザイアガルダの正体は隼の叔父――空鳥 鷹広だった。

 つまり、俺の親父を殺したのは隼の身内。隼はそのことで謝罪するため、こうやって場を設けたようだ。


「いや、親父の件については隼は何も悪くないだろ? むしろ、隼だってあの叔父さんの被害者じゃないか?」

「それはそうなんだけどさ……。タケゾーにも無理矢理ジェットアーマーを装着させたりしたからね。一応はあんなのでもアタシの身内だから、謝っておかないとアタシの気も収まらなくて……」


 隼は俺に謝罪してくるが、隼自身も相当な被害者だ。

 過去に両親を殺したのも、隼が大切にしていた工場を売り飛ばしたのも、最初にパンドラの箱を奪われようとしたのも、全てはその叔父さんが原因だった。

 GT細胞という禁忌にまで手を出し、自らの欲望のためにデザイアガルダという怪物にまでなった叔父の存在。むしろ隼の方が身内という分だけ、心痛に違いない。


「ほら、顔を上げろっての。親父のことは今でも辛いが、それで隼が悩み続けたって、何も見えてこないだろ?」

「うん……。でもさ……」

「『でも』も何もないっての。そうやって思い悩みすぎるのは、隼の悪い癖だぞ? 天国の俺の親父も隼の両親も、安心して見てられないだろ?」


 俺は向かい合ったまま隼の肩に手を当て、できる限り優しく促す。

 こいつは元々の正義感や責任感の強さゆえか、どうしても一人で悪い方向に抱え込む癖がある。

 それもまた隼の魅力であり、空色の魔女というヒーローのイメージ像とも重なっている。


 だが、過去を取り戻すことはできない。それは以前に隼とのデートで、星皇カンパニーを訪問した時にも身に染みて感じた。

 星皇社長が亡くなった息子さんを取り戻そうとタイムマシンの研究をしても、それが机上の空論止まりになるのと同じこと。

 過去を悔やまないことは難しいが、それでも遺された者は前を見て生きる必要がある。


 ――空色の魔女のような特別な力なんてなくても、俺は隼が前を向いて生きられる支えになりたい。


「……ニシシ~。なんとなく予感はしてたけど、タケゾーってば本当に色男だねぇ」

「そ、そういう余計なことを口にするな。……でもまあ、そうやって茶々を入れてくれる方が隼らしいか。大人びててどこか物憂げな一面もいいけど、普段通りの隼の方がしっくりくる」

「なになに? アタシに惚れた? 惚れ直した?」

「ああ、惚れた。てか、元々ずっと惚れてる」

「タケゾー……。そのセリフはなんだかズルい」


 隼の叔父さんの話題でどこか暗い空気になっていたが、ようやくいつもの調子も戻ってくる。

 どうせこんなお洒落なカフェに来たのだから、一つ注文でもしながら話を続けてみよう。


「隼は何を頼む? 俺はとりあえず、ブレンドコーヒーでも頼もうかな」

「んー。とりあえずビールで」

「いや、なんでカフェに来てビールを頼むんだよ? そもそもメニューに――あった」

「この店特製のクラフトビールって奴さ。これも飲んでみたかったから、コーデも店に合わせてみたんだよねぇ」

「今日のその格好の最大の理由って、それだったのか……」


 そしてメニューを見ながらそれぞれ注文する中で、隼は完全にいつもの調子に戻った。

 隼といえばと言うべきか、空色の魔女ならではと言うべきか。隼にとっては酒こそが最大の燃料源だ。

 こんなところでも昼間から酒を飲むのもどうかと思うが、これぐらいの方が隼らしい。

 俺も慣れてきたのか、妙な安心感を覚えてしまう。


「そういえば、叔父さんは結局どうなったんだ?」

「今は警察に逮捕されて刑務所みたいだね。デザイアガルダやGT細胞の件では、黙秘を続けてるみたいだけど」

「それは大凍亜連合の報復を恐れてだろうな。とりあえず、今のところは隼で何か動くことはあるのか?」

「うーん……特別何かってのはないね。悲願だったデザイアガルダはいなくなったし、アタシも普段のヒーロー活動だけに留めて、少しの間ゆったりさせてもらうよ」

「ああ、そうしてくれ。いくら正義のヒーローと言っても、こうも立て続けに戦ってばかりじゃ身が持たないだろ」

「正直、そのお言葉に甘えたいもんだねぇ。好きでやってる慈善活動とはいえ、食い楊枝にできないのも辛いもんだ」


 俺はコーヒーを、隼はビールを口にしながら、最近のことや今後のことで軽く話をする。

 一応はデザイアガルダが警察に捕まったことで一段落はしたが、まだまだ空色の魔女としての使命は終わりそうにない。

 普段からのパトロールだけでなく、GT細胞やパンドラの箱の調査。それと裏で繋がる大凍亜連合の存在。

 正直、隼一人では体がいくつあっても足りない。隼にだって生活があるのに、実質ボランティアなヒーロー活動を並行して続けるのは苦しい。

 いくら隼にしかできないこととはいえ、何か俺でも力になれることはないものか――


「……なあ、隼。ちょっと提案があるんだが?」

「へ? 何?」


 ――そんな考えの中で、俺は一つの提案を思いつく。

 俺と隼は交際中であり、俺的にはそれなりにいい付き合いをさせてもらっている。


 ――だったら隼の負担が減るように、俺と同棲すればいいのではなかろうか?


 俺も決して裕福ではないが、そうすれば食事などの私生活面で隼を支えることができる。

 などと考えてはみたものの、俺も中々それを言い出す勇気がない。完全に思い付きで口を開いたのがマズかった。

 中途半端に隼に話しかけたまま、次の言葉が出ずに固まってしまう。


「どうしたのさ、タケゾー? アタシに話があるんでしょ? なんでもいいから言ってみなよ?」

「あ、ああ。そのだな……」


 隼にも少し頬をムスッとした顔をされてしまう。

 こうなったら乗り掛かった舟だ。多少はダメ元でも、隼に同棲を提案して――




「あれ? もしかして、空鳥さん?」




 ――そうやって意を決して言葉を紡ごうとすると、俺と隼のもとに誰かが近づいてきた。

 思わず振り返ってみると、そこにいたのは美少女にも見えるほどの小柄な美少年。なんだか、俺と同族の匂いがしてしまう。

 何やら隼のことを知ってるらしいが――




「あれ!? もしかして、ショーちゃん!? 久しぶりじゃーん!」

「やっぱり空鳥さんなんだね。雰囲気が変わってたから、思わず見違えちゃったよ」

タケゾーにライバル出現か?

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