ラリアス聖教国
セロー250をもう一台召喚した。
「私が乗っていいの?」
「勿論だよ」
「やったー。ありがとうセイイチロウ」
「ユナのペースでいいからゆっくり安全運転で行こう」
「わかったわ」
ゆっくりと流れる景色、昨日はそんな余裕すらなかった。
1時間程進んだところで休憩。
軽食を取って水分を補給する。
すると、途中で抜いた馬車が休憩していた俺達の前で停まる。
「私は商人のタジルと申します。失礼ですか、その乗り物を売っては頂けませんでしょうか?」
「すみません。これはお売り出来ません」
「ど、どんな構造なのか見せて頂くことは可能ですか?」
「構いませんよ」
「ありがとうございます」
商人のタジルはバイクを隈なく観察する。
「これは魔道具でしょうか?」
「魔道具?」
「魔石を燃料にしたカラクリのことよ」
「そうですね。似たような物です」
「ありがとうございます。因みにこの仕組みは?」
俺は自転車を召喚した。
「これを参考にしてみましょう。これは自分の足を動力にしてこのスプロケットを回します。これはチェーンといってこの尖ったところに噛み合い後輪のスプロケットに動力を伝え、後輪を回すのです。これも基本は同じですが動力が人か魔道具の違いです」
「成程、貴方方の乗っているのは動力が魔道具と言う事ですね?」
「そうです。これは差し上げましょう」
「こんな貴重なもの頂いていいのですか?」
「ええ、構いませんよ」
「ありがとうございます。では、完成した暁には特許料をお支払いしたします。ギルドカードはお持ちですか?」
「これですか?」
俺はギルドカードをタジルに渡すと、カードを機械に翳した。
「ありがとうございます。完成して売れたらその20%を特許料として貴方のギルドカードにお振込み致します」
どうやらギルドカードは銀行のキャッシュカードの様な働きもするらしい。
「わかりました」
「では失礼致します」
そう言って自転車を馬車に乗せて走り出した。
それを追う様に、俺達もエンジンに火を入れる。
それから数日、ユナのペースも上がりいよいよ国境へと辿り着く。
「身分証明書を出してくれ」
「はい」
「よし2人とも通行可能だ」
いよいよこの国ともお別れだ。
次の国はラリアス聖教国、大陸中央にあり大陸の80%以上が信仰する宗教的な絶対中立国である。
面積は極小さく、聖都ディムリスだけが国土となるが、街道の全てが聖都から全ての国へ最短距離で続いている。
しかし現在、あの国の勇者召喚で聖教国は揺れに揺れていた。
過去にも勇者召喚はあった。
だが、それは聖教国が行ってきたものであり、聖教国が認めた者こそ勇者足りえるのだ。
それを一国家が召喚した事実を未だに受け止めきれない聖教国上層部は、勇者と認める派と認めない派で割れていた。
しかし、セイイチロウが入国したその日に国家元首である教皇が彼の国の勇者を真の勇者と認め、護衛と称して聖従軍2千人をあの国へと送った。
建国より続く絶対中立国を捨ててでも勇者の力は強力なのだ。
しかも、歴代でも類を見ない5人の勇者だ。
「陛下、中立国を辞してはなりません。他の国から攻められたら防衛の手立てはありません」
「その時の為の勇者だろ。勇者が5人もいれば世界を征服することすら可能だ。あの国の王は人族至上主義者だからな、今のうちに、聖都にいる亜人を追い出した方がいいかもな」
「なにを…亜人によってこの国は回っていると言っても過言ではありません。魔法のエルフ、力の獣人、鍛治や細工、建築のドワーフ、それ以外の種族も聖都になくてはならない者達です」
「兎に角、兎に角だ。我は、彼の国の勇者に全てを賭けるぞ」
そんな事になっているとは知らずに宿で夕食を取っている2人。
「聖教国では観光する?」
「俺は信仰してないからユナに任せるよ」
「私はラリアス教を信仰してるから…ユメミル大聖堂に行きたいかな?」
「いいよ、行こう」
ラリアス教の初代聖女である大聖女ユメミルは数多くの人を助け、勇者と共に魔王を倒した。
それを讃え、没後に建築が始まる。
白を基調にした清潔感のある外装、内装は煌びやかで祭壇には女神ラリアスと、この大聖堂だけの祈りを捧げる大聖女ユメミルの像が配置されている。
出入りは自由、朝から晩まで参拝者で混雑している。
「ねぇ見て、大聖女ユメミル様よ」
「これが大聖女…」
やっと俺達の番だ。
手を合わせて祈るユナ、それに合わせて俺も祈った。
『巻き込まれた者よ。この度は申し訳御座いません』
「…?」
『聖堂は、神界へと繋がる場所。ようやくパスが繋がりました。召喚には我々神の許可が必要なのですが、担当した神が確認もせず貴方を送ってしまったのです。申し訳ありません』
『聞こえてますか?』
『ええ、聞こえています』
『俺…私は、この世界にこれてよかった…。毎日楽しいです。ありがとうございます』
『そう言って頂けるなんて。ありがとうございます。今回は、謝罪もありますが、一つ、神託を致します。現在、この大聖堂地下にダンジョンが形成されています。教会の上層部はそれを隠匿し教会聖騎士による極小規模な探索しか行われておりません。このままでは10日程で大規模狂行が始まります。大聖堂は一般に解放された聖堂です。そのままですと、多大な被害が予想されます。どうか、力をお貸しください』
『マジかよ…。それで、どうやって地下へ行けばいいんですか?』
『教会内部へ信託を降しました。直ぐに接触があると思います。噂をすれば』
「貴方がセイイチロウ?信託を拝命しました。ラリアス聖教聖女ロマンティー・シュナイザーと申します」
「はい。冒険者のセイイチロウです」
突然の聖女来訪に周囲は騒めく。
「こちらへどうぞ」
「はい。ユナもおいで」
「貴方がユナね。貴方達にはダンジョンボスの討伐、出来ればダンジョンの停止もお願いします」
関係者入口から入ると直ぐに階段で下る。
その先にダンジョンが口を開けて待っていた。
「なんで大聖堂にダンジョンが?」
ユナは目を丸くして驚いていた。
「さあ、行こうか」
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